E.Grieg:PEER GYNT Suites No.1、2

グリーグ:「ペールギュント」第1・2組曲

 イプセンがノルウェーの民話からの伝説的人物を題材とした詩劇『ペールギュント』。1874年、この作品の舞台化に伴い付随音楽の作曲がグリーグに依頼される。元来小品に向いていた作曲家は、この途方もない「ほら話」が自分向きではなく作曲がむずかしい、と一旦は断ろうとした。しかし民族的な題材を取り上げたいとも思っていた彼は結局承諾。独唱と合唱を含む全26曲のスコアを書き上げた。1876年の上演は成功を収め、とりわけその音楽が好評をはくした。しかし初演後オーケストレーションの出来に満足していなかったグリーグは1885年の再演時に改訂、その後も数回にわたりスコアに手を加え続けた。
なお(今回演奏される)組曲は1888年に第1組曲、1892年に第2組曲が作られている。

<あらすじ>
 
物語の主人公ペールギュントは道楽者の父親が財産を使い果たしこの世を去ってからは、一人息子を溺愛する母親オーゼと二人貧乏暮らし。ところがペールは仕事嫌いの上にとんでもない夢想家の大法螺吹きで村人からも相手にされていなかった。
 そんなある日、昔は良い仲だった
幼馴染のイングリッドの結婚式に呼ばれなかったペール。このときにはソルヴェイグという純情な恋人がいるにもかかわらずその場でイングリッドを奪って逃げてしまう。しかしその後結局彼女に飽きたペールは(ひどい奴!!)放浪の旅に出てしまう。しばらく放浪を続けた後魔物の住む山に向かったペールだが、そこで魔物たちに散々な目にあわされる。そこでいったん故郷に帰ると、母オーゼの死が待っていた。臨終を看取るペール。
 時は流れペールは
アフリカに渡り、国際的な山師になっていた。モロッコで偶然皇帝の衣装と馬をせしめたペールは預言者としてベドウィン族に取り入り歓迎される。そして巨万の富を獲得した彼に対し、酋長の娘アニトラが魅力的な踊りで誘惑する。ペールはすっかり心惹かれ、アニトラも獲得したかにみえた・・・が結局財産目当てだった彼女は財産を全部奪い、ペールを砂漠に置き去りにしてしまう(女はオトロシ)。
 しかしその後数々の冒険の末、再びカリフォルニアで巨万の富を得たペールは年取ったわが身を休めようと故郷に向かう。しかし
その途上ノルウェー間近で嵐に遭い船は難破、またまた無一文になる。命からがらなんとか故郷にたどり着いたペールはそこで盲目になりながらも彼の帰りを待つソルヴェイグを見つける。最初はためらっていたペールだが意を決し彼女の前に姿を表す。そんな彼をソルヴェイグは許し、彼のために子守唄を歌う。ペールはやっと得た安らぎのなか永遠の眠りにつくのだった。

○ 第1組曲
1. 前奏曲『朝の気分』 (第4幕)

 第4幕の前奏曲にあたる。
モロッコでのサハラ砂漠の日の出の情景をあらわすとともに、アフリカに渡り心機一転したペールのすがすがしい気分も表現している。ただきこえてくる雰囲気はペールそしてグリーグの故郷スカンディナビア半島であるのが面白い。貴方はどういった「朝」を心に描きますか?(因みに私は某市青少年自然の家の「朝」……冗談)

2. 『オーゼの死』 (第3幕)<今回は演奏せず>
 オーゼの臨終の場で流れる弦合奏の曲。舞台では音楽の上に二人のセリフが重なる。
溺愛する息子を最後に見ることができ、幸せのうちに死んでいくオーゼの広く暖かい心がしみいる曲。

3. 『アニトラの踊り』 (第4幕)
 ベドウィン族で預言者として歓迎されたペールは巨万の富を得る。
そんなペールを誘う酋長の娘アニトラが踊る舞曲。怪しく魅惑的な彼女(と踊り)に見事ペールは騙され、その後砂漠の真ん中に一人置き去りにされる。

4. 『山の魔王の宮殿にて』 (第2幕)
 魔王の娘を追って宮殿に入ったペールに、子分の小鬼たち(『おじゃる丸』ではない)が粗野にはやし立てる場面での曲。原曲では魔物達の声として途中(練習番号B)から合唱が加わり、さらに終結の空白部でいくつかの攻撃的なセリフが叫ばれる。

○ 第2組曲
1. 前奏曲『花嫁の略奪とイングリッドの嘆き』 (第2幕)

 第2幕の前奏曲。冒頭は
第1幕で婚礼の音楽だったものが短調化したもの。その後中間部でイングリッドの悲嘆が延々と歌われる。昔はペールのことが好きだったというイングリッド。可愛さあまって憎さ百倍といったところか?女(と食べ物)の恨みは恐ろしい〜

2.『アラビアの踊り』 (第4幕)<今回は演奏せず>
 
ベドウィン族の乙女たちが踊る場面の音楽。第1組曲『アニトラの踊り』の前に演奏され、雰囲気はかなりエキゾチック。原曲は声楽がつき、主部は乙女たちの合唱。中間部の美しい独唱はアニトラを表す。

3. 前奏曲『ペールギュントの帰郷』 (第5幕)
 第5幕の前奏曲。
帰路の途上での嵐の音楽。途中の半音階的モチーフが嵐の激しさを表し不気味。劇ではこの後船の難破が描かれるが、組曲ではそのままソルヴェイグの歌になだれ込む。

4.『ソルヴェイグの歌』 (第4幕)
 物語的には第5幕の歌なのだが、音楽は第4幕でのもの
(ペールが故郷を回想する場面)が編曲されている。
「冬も春も、そして次の夏も過ぎ、一年がまた流れ去る。でもわたしにはわかっている、あなたはいつか戻ると。だからわたしは待っていよう、あなたに約束したとおり。」
彼女のこのセリフで十分だろう。

参考文献:作曲家別名曲解説ライブラリー18「北欧の巨匠」 音楽之友社

(99/10/10 脱稿、99/11/15 若干の補筆)

 これはさる10月、今回の演奏会にむけて岐響団員向けに「ペールギュントのあらすじを書いてほしい」との依頼があり、「番外編」として書き上げた曲目解説です。演奏するにあたり奏者それぞれのイメージを高めようという目的で書いたため、今回『曲解』はまったくありません。ごく『普通』の曲目解説となっております。

 団内に配ったものは当然字数制限があったため、実際はあらすじのみしかありませんでした。今回「正規版」ということで若干文章を増やし、またあいかわらずのくだらない「コメント」も付け加えました。多少は読みやすくなったのではないでしょうか(そうか?)

 時間があれば、いわゆる『曲解』もしてみたいと思います。乞後ご期待!!

(99/11/15)

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