交響曲 第9番 変ホ長調 作品70

戦争での勝利という「愚かな喜び」を見事に描ききった現代の「第9」。
第4楽章から第5楽章への変化がどこまでおちゃらけられるか・・・

ジャケット 演奏者 ツボ押さえ度 主観的なコメント
コンドラシン指揮
モスクワpo.(65)

VICTOR
VICC-40101

85% 交響曲全集より。あいかわらず速いテンポで一気に流す演奏。終楽章コーダでの聴衆を置き去りにするかのようなすさまじい「オチ」が面白い。ただ個人的にこの曲にはもう少し遊びやゆとりがほしいと思う。
ロジェストヴェンスキー指揮
ソビエト国立文化省so.(83)

VICTOR
VDC-1013

95% こういう曲をやらせたらロジェヴェンは最高。第1楽章の邪悪さ、第3楽章のいそがしさ、第4楽章から第5楽章への「あっかんべ〜」・・・お見事。問題になるオケの技量不足もこの曲にはみられない。彼のショスタコの録音では一、二を争う出来だろう。
バーンスタイン指揮ニューヨークpo.
(65)

CBS

90% 録音の硬さが気になるが、悪くない演奏。だんだん加速していく第5楽章のおちゃらけはこれが一番面白いかも。ただ第1楽章〜第3楽章は切れ味という点で前述のロジェヴェンの方が上。

 ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル響も悪くない。そしてなんといってもカップリングが絶妙(祝典序曲、タヒチ・トロットなど)明るいショスタコを味わうには最適。

 しかし最高のオススメはビデオ「バーンスタインの青少年のための音楽入門」。この曲を取り上げた回は必見。冷戦時代まっただなかの、資料のとぼしかった時代においてあそこまで深い読みと解釈をしているのは驚き!(とても子供むけとは思えない、見所満載の番組に仕上がっている)


交響曲 第10番 ホ短調 作品93

「雪解け」後のソ連において、公的に注目され議論された交響曲。
しかし、彼が描いたのは「DSCH=自分自身」だった。交響曲の存在意義を問う傑作。

ジャケット 演奏者 ツボ押さえ度 主観的なコメント
コンドラシン指揮
モスクワpo.(73)

VICTOR
VICC-40095

90% 第1楽章の沈痛な雰囲気、第3、4楽章の自暴自棄と皮肉・・・ムラヴィンスキーに負けない名演。惜しいのは第2楽章。後半オケがバテなければ最高だったのだが。
ヤルヴィ指揮
スコティッシュ・ナショナルo.(91)

CHANDOS
CHAN8630

95% ヤルヴィのショスタコの中ではこれが一番!第2楽章の凶暴さ、第4楽章のDSCH連呼等デジタル録音の演奏の中では最も豪快。これぐらいやってくれなくては・・・デジタル録音CDでは最も好きな演奏。余白のバレエ組曲第4番も好演。
ショスタコーヴィチ(Pf)
ワインベルグ(Pf)
(54)

REVELATION
RV70002

95%
(番外)
作曲家参加によるピアノ連弾版。第10論争が始まるひと月ほど前に録音されている。一発録りだったのだろうミスタッチも多いが彼がこの曲で伝えたかったことが良くわかる演奏。特に第2楽章のなりふり構わず突き進む様子はまるで「嵐」。最後の「DSCH」もすごい「存在感」。ファンは必聴。
フェドセーエフ指揮
モスクワ放送so.(99)

RELIEF
CR 991047

93% その筋では話題のRELIEFから出ている一連のフェドセーエフ新録音からの一枚。音楽外のさまざまなエピソードに彩られたこの曲から「純粋な音楽的魅力」を最大限に引き出した演奏といえよう。第1、3楽章が秀逸の出来。そういった方向性故、初演当初言われた第4楽章の「力なさ」が浮き彫りにされているのは非常に興味深い。

ムラヴィンスキー指揮
レニングラードpo.(76)

ERATO
2292-45753-2

96% 「やっと見つけた!」岐阜の中古CD屋で見つけた瞬間はホントうれしかった。
ムラヴィンスキーの有名な76年のライブ録音。しかもビクター盤と違いリマスタが良いERATO盤。
演奏はもう素晴らしいの一言。ヤルヴィの引き締まった演奏にさらに「鋭利さ」を加えたといった感触。こんな演奏が生で聴けた時代って・・・・う〜む。

 その他で面白かったのはロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省so.彼の全集中深刻なものでは最も成功していると思う。もちろんムラヴィンスキーも良い(最初にこの曲を知った演奏)。評判が高いカラヤン盤、私は嫌い(音色が違いすぎ・・・あんなに甘い音楽ではない)

 今後出たら面白そうなのは、ゲルギエフあたりか。聴いてみたいのはスクロヴァチェフスキー(第5番よりは良いらしい)。第1楽章をどう処理しているのか興味あり。しかしなぜバーンスタインはこの曲を録音しなかったのだろう。不思議だ。

 その最初にこの曲を聴いたムラヴィンスキーのCDをようやく見つけることができた。あの頃はまだタコに慣れていなかったこともあってそれほどの感銘を受けなかったのだが、今回改めて聴くとやはり「スゴイ」。今年最高の「偶然の出会い」CD。<01/12/29>


交響曲 第11番 ト短調 「1905年」 作品103

権力者による暴力の恐怖を描ききった交響詩的作品。
最近人気急上昇中。この曲を聴いてショスタコにはまる人多し(私もそう)

ジャケット 演奏者 ツボ押さえ度 主観的なコメント
コンドラシン指揮
モスクワpo.(73)

VICTOR
VICC-400102

80% テンポが早めなことを除けばスコアに忠実な演奏。決して悪い演奏ではない・・・が弱い。これといって訴えかけるものがあまり感じられない。こういう演奏ならば後述するハイティンク盤の方が録音の良さもあって数段上か。
ロジェストヴェンスキー指揮
ソビエト国立文化省so.(83)

VICTOR
VDC-540

85% 「異色」の演奏。オケは上手とはいえず、雑な部分もあり、最初の一枚としては絶対おせない。しかし第2楽章の虐殺シーンはすごい。容赦ないスネアと金管(これがまた下品)、そして非常に遅いテンポ!無表情で民衆を蹂躙していくような背筋が凍る恐怖を感じる。この演奏(の怖さ)に対抗できるのはムラヴィンのみ。
ムラヴィンスキー指揮
レニングラードpo.(57)

RUSSIAN DISC
RD CD 11 157

90% レニングラード初演時のときの記録。録音状態はひどい。がそれを超えて聴こえる音楽はすごい。第1楽章ではうるさい聴衆が曲がすすむにつれだんだんと静まりかえっていくのが良くわかる。生で聴いていたらきっと呆然としていたことだろう。一時間まったく飽きさせない名演。
ベルグルンド指揮
ボーンマスso.(78)

EMI
7243 5 73839 2 9

75% 一般的には「純音楽的な演奏」といわれ結構評判が高いようなのだが、私には「ダメ」。というのもこの曲で最も重要なパートの小太鼓がはっきりいって下手くそ!全体にリズムが転んでおり、アンサンブルにはまっていない。ティンパニも第3楽章などイマイチだし、最後の鐘も間違えているし・・・ライブならともかくスタジオ録音では・・・
ムラヴィンスキー指揮
レニングラードpo.(59)

BMG
BVCX-4025

93% ムラヴィンスキーの正規録音盤。解釈は前述のレニングラード初演盤と基本的には同じ。スタジオ録音ということで鬼気迫るような勢いは減じているが、その分演奏の精度および録音は向上している。内容は申し分なし。第4楽章「ワルシャワンカ」での弦の響きなど、現代のオーケストラでは聴くことのできない凄みがある。ファンは必聴。

 最初の一枚としてステレオ録音でのおすすめはハイティンク指揮/コンセルトヘボウo.タコの交響曲中最もオーケストレーションが見事なこの作品を「音楽」として聴かせてくれる演奏。もちろん迫力も十分。ビシュコフ指揮/ベルリンpo.もなかなかの演奏。惜しむらくはオケそのものの雰囲気か。

 ムラヴィンスキーの正規録音盤を中古CD屋において1100円で購入。期待を裏切らない素晴らしい演奏。ただし当然モノラル録音、そして音質は第12番より若干落ちるのが惜しい。

 あとはヤンソンスのものか。ラトルあたりが入れてくれると面白いなぁ。


交響曲 第12番 ニ短調 「1917年」 作品112

果たしてこの曲はショスタコ最大の「妥協」なのか、それとも「告発」か・・・
最近評価がいちじるしく割れつつある曲。個人的に第1楽章は好き。

ジャケット 演奏者 ツボ押さえ度 主観的なコメント
コンドラシン指揮
モスクワpo.(72)

VICTOR
VICC-40096

85% 交響曲全集より。颯爽とした第1楽章はなかなかカッコイイがオケのミスもあり練度としてはもうひとつ。ただ11番よりは聴かせる演奏。終楽章の「夜明け」はまだ旧ソ連のパワーがのこっていて面白い。
ドゥラン指揮
ライプチヒ・ゲヴァントハウスo.

PHILIPS
434 172-2

80% 実は余白の「ステパンラージンの処刑」(名演)が欲しくて買ったCD。ドイツのオケからこれだけ重い音色を出しているのは評価できるのだが、(打楽器の立場から)この曲の主役でもある小太鼓が失格。「機銃」というよりは「銀玉鉄砲」・・・・う〜ん
ムラヴィンスキー指揮
レニングラードpo.(61)

BMG
BVCX-4026

98% この曲の最大の理解者ともいえるムラヴィンスキー。最後のスタジオ録音がこの演奏。モノラルながら録音状態は良好(多少残響が気になるが)。どの演奏よりも速く、しかも緊迫感にあふれた一糸乱れぬ合奏を貫く第1楽章が最大のきき物。これぞまさしく「革命」。もちろん他の楽章もすばらしい。個人的には、第5番をのぞけば彼のショスタコ録音の中では最高の出来だと思う。
ロジェストヴェンスキー指揮
ソビエト国立文化省so.(83)

MELODIYA
MCD200

85%
(趣味的には90%)
ロジェベンの演奏は昔聴いたことがあったので再購入は考えていなかった。しかし前から探していた(写真では判別しにくいが)メロディアが1987年に発売した「10月革命70周年記念シリーズ」での一枚を発見!タコのアップがなかなかいい味を出している。
演奏もなかなかの力演。終楽章の盛り上がり、そして「Es−B−C」の重々しさも申し分なし。最初の一枚としても推薦できる。

 この曲の最大の理解者ムラヴィンスキー。彼の録音はどれも推薦できる。現在私が捜索中なのは廃盤になった61年録音のビクター盤(99%)。演奏は上記BMG盤と同じだが、マスタリングが異なり個人的にはビクター盤の音の方を好む(だからBMG盤は1点減点なのだ)

 というわけで、この曲だけはムラヴィン以外のものは聴く気がない。もしあれを超える演奏が出てきたら・・・教えてください!!!(・・・言いきってしまった。いいのか?)

 

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