『これならわかる!知的な財産のお話』 〜 著作権とその周辺 〜

求人情報の著作物性

「著作物」かどうかの判定もまた難しい・・
2004年 7月 2日発刊 <<第20号>>

  前回の「スタディ著作権法(2)」で第2条「定義条文」の中の「著作物」
 を説明しましたが、これにまつわる昨年の事件をご紹介しましょう。


  先ず事件の概要です。

  インターネット上で求人情報提供サイトを運営するA社(原告)とB社(
 被告)の間で、「著作権侵害」による差止等の請求事件として争われました。

  A社は、とあるソフトウェア開発会社からの依頼で、転職情報をA社ウェ
 ブサイト上に掲載しました。

  一方のB社も、1日遅れで同じソフトウェア開発会社からの依頼で、B社
 ウェブサイト上に転職情報を掲載しました。

  両社が掲載した転職情報内容は、会社概要、募集要項など一般的なもので
 構成されているのですが、B社が掲載した内容がA社の掲載内容に酷似して
 いたため、これはA社に無断でコピー(複製)したものであると判断し、A
 社はB社を相手取り、著作権(複製権・翻案権・送信可能化権)侵害で掲載
 の差止めと謝罪広告の掲載、損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起しました。

  訴えられたB社は、実は以前(1ヶ月ほど前)にもA社に対し3回も著作
 権侵害を行ったことがあり、その時は文書で今後は著作権侵害を行わない旨
 約していたといいますから、これが侵害行為であればかなり悪質です。


  これを受けてB社は、A社が掲載した転職情報について、「依頼主の説明
 を受けて、特に表現上工夫もせず、単なる事実の説明や紹介をしているに過
 ぎず、そこに創作性はない」などとして「著作物には該当しない」と反論し
 ました。

  どこかで見覚えのある文言が出てきましたね。。

  さらに、この転職情報は依頼主のソフトウェア開発会社の説明に基づいて
 作成され、また掲載前に依頼主のチェックも受けていることから、創作者は
 依頼主であり、A社は著作者ではない、と主張しました。

  つまりB社の言い分は、A社は、掲載した転職情報の「著作者」ではなく、
 かつその情報そのものが「著作物」ではないのであるから、A社から著作権
 侵害で訴えられる筋合いではない、というわけですね。


  これに対して、東京地裁はB社の著作権侵害を認め、損害賠償として65
 万円の支払いを命ずる判決を下しました。掲載の差止めと謝罪広告の掲載は
 棄却されました。

  判決によると、「読者の興味を惹くような疑問文を用いたり、文章末尾に
 余韻を残して文章を終了するなど表現方法にも創意工夫が凝らされていると
 いえるので、著者の個性が発揮されたものとして、著作物性を肯定すべきで
 ある」として、A社が掲載した転職情報は「著作物」であるとの判断が下さ
 れました。

  ◆前回の「スタディ著作権法(2)」を是非思い出してみて下さい。

   同じ電話帳でも、単なる情報の羅列である「50音順」ではなく、そ
   の配列の仕方や選択の方法などに創意工夫を凝らした「職業別」は著
   作物に該当する、とされます。


  また、著作者の問題についても、「作成に当たり単にアイデアや素材を提
 供した者など、自己の思想又は感情を創作的に表現したと評価できない者は
 著作者に当たらない。実際に文書の作成に携わり、文書としての表現を創作
 した者がその著作者であるというべきである」と認定し、A社が著作者であ
 るとの結論に達しました。

  ◆「著作者」の定義については、次回あたりにご説明できるかと思いま
   すが、「著作物を創作する者をいう。」と定義されています。


  実際にA社、B社の掲載内容を比べて見てみましたが、やはりどう見ても
 B社に弁解の余地はなさそうでした。。

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 (参考)平成15年(ワ)第3188号 著作権侵害差止等請求事件

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