昨年の日本の野球界は、とにかく阪神タイガースで明け暮れたと言っても
いいくらいの盛り上がりを見せましたね(ダイエーファンの方、ごめんなさ
い)。早くも優勝マジックが点灯して、阪神球団側はさあ優勝グッズをっ!
と思ったら、ええぇ?!「阪神優勝」というロゴが使えない?!というわけ
ですね。これが表ざたになったのが昨年の7月のことでした。
何故こんなことになったのかといいますと、もう既にご存知かと思います
が、この「阪神優勝」というロゴを先に商標登録していた人が居たからです
ね。千葉県在住の男性だそうで、阪神球団とは全く関係の無い一個人の方と
いうことです。
その後、阪神球団はこの千葉の男性との交渉で、球団がこの男性からロゴ
の使用権を買い取ることでいったんは合意したものの、後になって男性もこ
のロゴを使いたいと求めてきたため、話し合いがつかず、昨年8月末に球団
側がこの男性の登録を無効にして欲しいと特許庁に訴えました。そして、同
年暮れに球団のその訴えが認められた、というのがこの事件の経緯です。
ことの流れを簡単に時系列で表すと以下の通りです。
【千葉県の男性】 |【阪神球団】
--------------------------------+----------------------------------
*1 2001.3.15 「阪神優勝」を出願 |
(商品:被服等) |
*2 2002.2.8 同 商標登録 |
*3 2002.5.14 「阪神優勝」を出願 |
(商品:タオル等) |
|*4 2002.6.21 「阪神優勝」を出願
| (商品:被服等)
|*5 2003.8.11 同 拒絶査定(最終)
| (商標登録できず)
|*6 2003.8.28 *2の登録無効審判請求
|*7 2003.12.28 *6が認められたと発表
※特許庁 特許電子図書館 他より
それにしても、阪神球団にとってはそれこそ寝耳に水だったわけですね。
この男性の登録されたロゴは、TV等でご覧になった方も多いと思います。
ひし形の旗のような図形の真ん中に「阪神優勝」と書かれたアレですね。
一方、上記*4で阪神球団が出願した商標は、阪神タイガースのロゴとして
お馴染みの、タイヤのようなマルの上下に「HANSHIN」「Tiger
s」、その中に吠える虎の顔が描かれたあのマークの横に「阪神優勝」の文
字が並べられている、というものでした。
これの何がダメだったのでしょうか?そこには色々な要素が含まれていま
す。今回のケースでは、次のようなことが問題にされたと思われます。少し
商標の勉強も兼ねてみてみましょう。
(1)登録した者勝ち
本メルマガ第2号で少し触れましたが、商標権は特許権などと同じよう
に特許庁にロゴなどの商標登録の出願を行い、審査されたのち登録されて
初めて出願者の権利となります。これを「登録主義」といいます。そして、
その権利は登録を受けたその人のみに与えられた権利ですから、他人がそ
れを使いたい場合は、権利者の許諾を受ける(使用する権利をもらう)必
要があります。通常は、使用権を有償で譲り受ける、などです。
(2)先に出願した者勝ち
商標権は、出願から審査を経て登録されるまではそれなりの時間がかか
ります(おおよそ1年前後)。ですから、その審査期間中はまだ出願者の
権利にはなっていないということになります。では、その審査期間中に別
の人が同じロゴの登録出願をしたらどうなるか?というと、先に出願した
人がいるからダメ!とすぐに拒絶されます。これを「先願主義」といいま
す。
(3)似ていたらダメ
ここが商標の簡単なようで難しいところなんですね。商標の登録出願な
どをされる弁理士さんも、商標法4条1項11号に規定された「先に出願
された他人の登録商標等と同じ又は似ている商標は登録を受けることがで
きない」という条項が、拒絶される理由の大半だとおっしゃっておられま
す。つまり、どこからが「似ている(「類似」といいます)」で、どこま
でが「似ていない」なのかの判断が難しく、また審査基準も厳しいのです。
なぜ「類似」の審査基準が厳しいのかというと、商標は自分の商品その
ものを表すといってもいい、いわば商売上の「信用」なわけです。そのロ
ゴの付いた商品は安心できる、と消費者に認識してもらうための重要なも
のです。ですから、似ていたらダメなんです。
(4)商品ごとに登録しなければならない
また、商標はそのロゴ等を付ける商品別に登録される仕組みになってい
ます。ですから、千葉県の男性は商標登録された商品:被服、おもちゃ等
の他にも、上記*3のようにタオル等や、そのほかには食品類や日本酒、ビ
ール等、たばこ喫煙用具などでも出願されています。
そこで今回のケースに戻って考えてみると、上記がどう当てはまっていく
のか、少しみなさんでも考えてみて下さい。この件については、上記4項目
以外にも根本的な問題としてどうだったのか?という話も含めて次回にもう
少し「阪神優勝」問題を引き続き考えてみたいと思います。
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