最近のニュースで「著作権」という文字が現れたものの中で、おそらく最
も話題になったキーワードの一つではないでしょうか、この「おふくろさん」。
歌手の森進一さんの楽曲の中でもひときわ有名な代表作の一つでしょうし、
私も子供の頃からそうであるように、皆さんの中でも「森進一」といえば、
「♪おふくろさんよぉ〜、おふくろさん〜♪」と口について出てくる方も多
いことでしょう。
そんな名曲が、当の森進一さんの歌唱として聴けなくなってしまったので
すから驚きました。皆さんもよくご存知かと思いますが、同曲を作詞された
川内康範氏が「無断で意に反する改変に当たる行為を行った」と森さん側を
非難し、今後「おふくろさん」を含め同氏の作品を全て「歌わせない」と宣
言されました。
また、これを受けてJASRAC((社)日本音楽著作権協会)も「川内氏
が有する同一性保持権(著作権法第20条1項)侵害他の疑いがある」として、
いわゆる改変されたバージョンによる同曲の利用はできない旨の見解を発表
しました。
◆「おふくろさん」のご利用について(JASRAC)
ここで「同一性保持権」とは、著作権法第20条1項に、
「著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その
意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。」
と規定されています。
要するに、他人が作った歌を勝手に変えて歌ってはいけませんよ!という
ことですね。
今回問題になったのは、原曲のアタマに別の作詞家さんの作った「語り」
風の歌詞とメロディーが付け加わり、それに引き続き原曲が歌い出されると
というもので、確かに私も何度か聴き覚えがあります。
原曲の前に付け加わっているだけとはいえ、川内氏からすれば原曲に込め
られた氏の思いは原曲でのみ表されるとするのであり、何を足しても削って
も、それは原曲とは異なるものとなる。それが著作物の創作性だと理解しな
ければならないでしょう。
なぜなら、「著作物」とは「思想又は感情を創作的に表現したもの・・」
(法第2条)であり、創作者の思想や感情、言い換えれば「作者の思い」を
無視しては成り立たないものだからですね。
少し話しは逸れますが、今年に入って似たような裁判に似たような判決が
下ったのをご存知の方もいらっしゃると思います。1月と3月です。
飲食店とライブハウスで海外アーティストの楽曲を、著作権者に無断でピ
アノやバンドの生演奏で客に提供していたというもの。お客さんからのリク
エストに応えるサービスだったようです。
これが著作権法違反に当たるとして、JASRACから著作権料を支払う
よう再三求められていたところ、応じなかったとして有罪判決(懲役刑や罰
金刑)、さらには数年分の著作権料約1400万円の支払いを命じられる、とい
う厳しいものでした。
世間では様々な意見が飛び交いました。一般に、飲食店側に同情的で、J
ASRAC側には批判的なものが多かったようです。また、使用料の徴収の
システム自体が曖昧で問題があるという指摘もあります。
お客さんに喜んでもらえるから、という素敵なサービスだったのでしょう
が、ここでは楽曲を創作した「アーティストも喜ぶ」ような方法を採ること
ができればよかったのかもしれません。
あなたの素晴らしい楽曲を使用するに当たり、これだけ支払いますから、
これを次の創作に活かして、更なる素敵な楽曲をお願いします、と。これが
我々音楽ファンとしてのアーティストへの「思いやり」と解釈しています。
話を戻しますが、今回、JASRACまでも巻き込んだ事態に発展してし
まった背景に、単なる著作物の改変だけに止まらない、ちょっとしたボタン
の掛け違えなども指摘されています。
双方の間で何があったかは知る由もありませんが、著作権法的に表現する
と、『著作者』の楽曲はもちろん、『実演家』の歌唱も素晴らしい作品が、
このようなカタチで封印されるのは、『文化の発展』にとっても大きな損失
です。
母の子に対する大きな愛と、その母に対する子の想いを切々と歌った「お
ふくろさん」。この楽曲に相応しい「思いやり」のある真の解決を望みたい
と思います。
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