第1章 名古屋鉄道旧八百津線
LEレールバス発祥の地終焉へ
取材・撮影 2000年10月29日 作成 2001年1月8日 修正 2001年10月4日・2002年2月28日


写真1 明智駅に停車中のLEカー30系31番


お断り
名鉄八百津線は2001年9月30日をもって運転を廃止いたしました。なお、このコメントは2000年10月29日に取材して、2001年1月8日に取材当時のコメントを作成したものをそのままお伝えしていますが、当線廃止後に一部修正・追加を行っているところがありますので予めご了承下さい。

なぜ大手名鉄は『電気』としないのか…
かねてから廃線の対象となった名鉄4線(八百津(やおつ)線全線・竹鼻(たけはな)線江吉良(えきら)〜大須間・揖斐線黒野〜本揖斐間・谷汲(たにぐみ)線全線)。その中で名鉄線にある気動車3線(八百津線全線・三河線猿投〜西中金間(通称三河山線)・同線碧南〜吉良吉田間(通称三河海線))の一つである八百津線も今回の廃線対象となった。私はその情報を聞き、大阪から東海道本線を経由して名古屋で乗り換え、名鉄犬山線で新名古屋から犬山まで。それから広見線で明智まで乗り継いだ。そして明智駅で待ち受けたのが、1番線に停車している名鉄気動車線車両のLEディーゼルカー(キハ)30系31番。(写真1) 車内はほとんどのJRローカル線や地方私鉄・第3セクター鉄道などで採用されている後乗り前降り式。私はこの列車を見たとき「これが大手私鉄なのか」と言わんばかり驚いた。なぜ名鉄は正式社名(名古屋鉄道)をわざわざ「名古屋“電気”鉄道」にしなかったのかというのもこの車両を見れば分かる気がする。私は、その車両を体験するために八百津線を往復で乗車した。

前身は東美鉄道の小さな私鉄
ではここで、八百津線の路線を紹介しよう。八百津線は名鉄広見線明智駅と八百津町の八百津を結び、中間駅は3駅ですべて無人。この線は昭和5年に東濃鉄道から社名変更した東美鉄道として開業したが、当時の愛知電気鉄道、後の名鉄が地方小規模の私鉄を次々と大同合併を行い、昭和18年この路線も名鉄に併合され現在に至っている。
利用されている車両は上記に記載したLEカー30系2台が使われている。この路線は当時は電化運転していたが、沿線の利用減に伴い昭和59年9月に経営合理化策として中間駅の無人化・列車のワンマン化・コストダウンによる路線の非電化を実施した。名鉄としてはこの八百津線が戦後初の非電化路線。その対策として、2軸台車を用いたLEディーゼルカー(キハ)10系を導入。気動車導入当初は日本で初めての2軸LEレールバス形式(※)が採用され、その1ヵ月後に樽見鉄道も同じ形式で導入。以後全国の2軸レールバス設置路線で八百津線のシステムをそのまま活用した名鉄式を導入している。LEカー10系は、ボギー車に変わった30系の置き換えとともに引退。そのほとんどが廃車となったが、一部は宮城県のくりはら田園鉄道に売却しており現役中。現在名鉄で使われている30系も10系当時から採用されているレールバス形式を堅持しており、同じくボギー車両を保持している他会社ローカル線の大半も名鉄式の方法を使われている。まさに、名鉄はLEレールバスを形成した元祖とも言えよう。(その後、八百津線のキハ30系2両は、三河海線のキハ20系の置き換えとして2001年10月から転用されている)
路線概要は、明智駅のある可児市から御嵩町を通過し、可児川を渡ると、兼山町に入った直後に兼山口がある。さらに列車は中間地点にある兼山に到着。当時は交換所が設けられていた。さらに路線を進むと八百津町に入り、左手に蘇水湖が、天気がよければ右手には虎渓山が見渡せる。中野駅を過ぎると、終点八百津にあっという間に到着。開業当時の駅舎が今でも残っている。多くの学生さんもこの路線を利用しており、沿線の住民の足として利用されている。

非電化路線に見えるローカル線の現実
この日の岐阜地方はあいにくの雨模様。その雰囲気をかもし出されるかのような涙雨。その雨の中をLEカーは数人の客を乗せて明智駅を出発した。ディーゼル音が八百津の坂を軽快に走るそのパワーは、町の生活路線に似合うのかもしれない。そして、走行するたびに数多くの本数が並ぶ電柱跡。この路線がかつて電化で走ったことを考えれば、今で言ったら時代錯誤なのかもしれない。しかし、これがローカル線の現状。この路線もかつてCTCや待機所(行き違い)があったが、待機所が廃止され全線単線化になってからそのCTCもなくなり、タブレットを使うスタフ閉塞式の路線へとなってしまった。LEカーが一駅過ぎるたびに客足が減ってきて、終点八百津駅(写真2)に到着の頃は僅か3・4人しか乗車していなかったという。

明智〜八百津間僅か12分。30系は八百津駅で3分間停車の後、すぐさま明智駅まで折り返す。八百津から乗車される旅客もほんの僅か。そのほとんどが明智以降の降客車であり、八百津線内での降客はほぼ皆無である。私はその中間駅である兼山駅で下車した。次の明智方面行き列車まで30分。閑散とした兼山駅はかつては行き違い線路があった対面式のホームだったが、現在は単線片側1面のホームと化してしまった。駅舎は残っているものの、かつてあった駅務室・券売所はベニヤの壁になって塞がっている。その時間を利用して少し離れた村道で走行風景を撮影した。

写真2 八百津線の終点八百津駅 写真3 雨の中を走行する
LEカー31番(兼山駅近く)

雨の中を走るレールバスはディーゼルのエンジンを高々に上げ、煙を吐きながら走行する。時速45キロで走る八百津の路を、レールバスは人々の暮らしを運んで行く。その走行写真を私は一眼レフを手に写した。昼間ながらヘッドライトを灯しながら走る雨の八百津線は、何故か物寂しい雰囲気がある。それは、間もなく終焉を迎える走りであろうか、それとも、過疎化に悩む地域に訴える走りであろうか…。(写真3)
兼山駅に戻り、再び乗車したLEカー31番車は、車両交換の経路である新可児行きに変わった。明智駅に到着すると、今度は広見線で乗り換える客が続々と乗り込んだ。そう、八百津線の雰囲気とは違った光景だ。同じ車両で走る八百津線と広見線では随分違う。それは、まるで都心部を駆け抜けるラッシュ時と閑散時とは違ったもう一つのシーンを見るような光景なのかもしれない。明智駅に到着したLE31番車は、2番線に待機中の新可児からの八百津行きLE32番車にバトンタッチ。すぐ発車した。そして、LE31番車はこのまま新可児駅まで客を運びながら、終点の新可児駅で客を降ろし、その駅の引込み線で足を休んだ。

一企業としての苦境…名鉄としての選択は…
八百津地区の交通の要であり、生活路線である八百津線も他の3線とともに今年の10月1日で廃線となる。交通整備もあまり良くなく、この地区の高齢化も進んでいる。中京圏内の交通網は名古屋一点集中型に偏っており輸送効率も悪く、加えて過疎路線も多く、おまけにモータリゼーション化でマイカー普及率も高い。さらに、名鉄のドル箱路線である名古屋本線(新岐阜〜豊橋間)自体も競合路線であるJR東海道本線(岐阜〜豊橋間)に水を開けられているらしい。

余談であるが、昭和8年に製造され当時のカラーボディーで本線などを駆け抜けた通称「いもむし」こと3400系2両1編成が、現在も犬山車庫で保存されており、平日に数回運行されている。まさに昭和を、いや、20世紀を駆け抜けた歴史的のある車両をいつまでも残して欲しいものだ。(残念ながら、2001年9月30日付で定期運用から外され、現在、犬山車庫で動態保存されている)

2軸LEレールバス…電車の運転性能を持ちながら、車体はバス形式をアレンジ・左右にサイドミラー・台車は2軸・後乗り前降り式など、コスト削減を重視した小型車両。車内をバススタイルにしやすいよう車両の長さや幅を小型化し、運転も2軸台車やバスのエンジンなどで走らすので減音対策には効果が発揮でき、メンテナンスも比較的に出来やすい反面、2軸で運転するので車輪の磨耗が激しく、運転中の車内の揺れが一般車両と比較して激しいため速度向上が出来難く、積載重量に限界があるなどといったデメリットもある。現在ではくりはら田園鉄道の他、近畿地区の三木・北条・有田・紀州の各鉄道線などで見かけるが、導入して僅かにも関わらず老朽化も目立ち、導入された路線は4軸ボギー車のレールバスや一般車両に置き換えられているところもある。ちなみに、1998年に運転を休止(2002年8月1日に廃止)した南部縦貫鉄道は昭和38年にレールバスの車体を画一した元祖であるが、バスの性能がクラッチ式であるため、本稿では鉄道機能を持ちながら、バススタイルを画一した名鉄八百津線を最初にLEレールバスを本格導入したことにしている。

お知らせ(2001・10・4修正)

名鉄八百津線は2001年9月30日を持って運転を廃止いたしました。現在、明智〜八百津間はヤオツバス(八百津町と御嵩町などが出資のバス会社)が列車代行バスを運転中です。これに伴い、アクセス方法も変更となりましたのでご了承下さい。八百津方面のアクセスは明智駅でご確認下さい。

名古屋から明智駅までのアクセス

名鉄新名古屋駅から御嵩行き直通急行利用が便利。
最短所要時間…新可児行き直通急行と御嵩行き普通利用で約58分(乗り換え時間含む) 

名鉄新名古屋からは、7時から21時までの毎時2分・32分(一部時間帯は犬山または新可児で普通車に乗り換え)に発車する直通急行が便利。所要時間約61分。最短所要時間は新名古屋から犬山経由新岐阜・新可児行き急行利用で新可児で御嵩行きに乗り換え。約58分。(乗り換え時間3分含む)
また、新可児駅ではJR太多線可児駅の乗換駅でもあるので、JR太多線からもここから乗り換え可能。新可児から明智方面は30分毎の運転間隔で、新可児から明智まで約5分。

なお、運行ダイヤ・料金などは、名古屋近郊を掲載されている時刻表などでご確認ください。