師団編制解説(2)

◆はじめに

師団とは、軍隊組織の中でも独立して軍事行動が取れる戦略単位とされています。
戦略単位である師団は、諸兵科連合です。
諸兵科とは、歩兵、騎兵、砲兵、工兵、輜重兵などからなり、それらを統合運用して戦略的な軍事行動を行います。
師団の編成は、概ね決められています。
しかし、師団の地理的状況や運用目的などによって、細部ではかなり師団毎の特色が見られます。
また時代の変化に伴い、その規模や編制が改編されるなどしています。
ここでは、師団の基本的な編制全般について解説しています。

☆師団の編成
まず師団が編成されますが、それには次のパターンがあります。
1.既設・・・計画により動員・編成されたもの
2.新設・・・全く何の基幹も無く編成されたもの
3.改編・・・独立混成旅団などから師団に改編されたもの
1は師管区で編成されるもので、常備師団(平時編制)が常設師団(甲師団編成)を、更に特設師団(乙師団編成)を編成します。
師団が出動した後、常備師団は留守師団(あるいは師団留守隊)を編成し、出征した常設師団や特設師団の補充などを行います。
この留守師団が動員されて、更に師団が新設されることがあります。
2は基本的に師管区で編成されるもので、全く新規に動員・編成されたものです。
新規編成の治安師団や、後年の本土決戦兵備で新設された師団(張り付け師団や機動(決戦)師団)などです。
後年、支那事変により大陸で治安維持に任じる装備の劣る師団が新設され、治安師団(乙編成師団)と称しました。
また、同様に治安維持のために編成された独立混成旅団や独立歩兵旅団から師団に拡充されたものも治安師団と称しました。
これら治安師団で砲兵力を欠いたもの(あるいは廃止されたもの)は、警備師団(丙編成師団)と言います。
なお、これら治安(警備)師団に対し、常設師団や特設師団を野戦師団とも称します。
3は、既存の部隊(その多くは師団の縮小版である混成旅団)を拡充したり、または指揮運用の面から師団編制を取ったりするケース(高射砲集団から高射師団へ)があります。
編成はこれまでの師団に準じたものか、あるいはその縮小版、またはまったく無視したものがあります。
特に、混成旅団からの改組(師団編成の改組参照)や、高射師団はかなり異なります。

☆師団編制の改組
師団創設以来、師団の編制は歩兵聯隊4個からなる四単位師団でした。(欧米の軍団に匹敵するとしていた)
しかし支那事変が全面戦争と化すと、師団数が不足して、特設師団の編成にも、また増設するにも限界がありました。
そこで、従来の四単位師団から歩兵聯隊1個を抽出して、3個師団から集めた歩兵聯隊3個で1個師団を編成しました。
こうして師団の三単位化を進めましたが、近衛師団や一部師団では四単位のままであったケースもあります。
これにより、それまで歩兵聯隊2個で編成されていた歩兵旅団2個は、歩兵聯隊3個からなる歩兵団1個となりました。
この師団を、前者を重師団、後者を軽師団と称します。
また、以上は歩兵聯隊による編成を前提としたものですが、独立混成旅団等から改編された師団では、独立歩兵大隊による編成の師団も存在します。(これを丁編成師団とも言います)
この場合、大抵は独立歩兵大隊4〜6個からなる歩兵旅団2個から編成されます。

☆師団
師団は、各師団毎に特色やその期待される任務に従い、各々その編制や編成が異なります。
輓馬編成は、平野での機動を前提としたもので、車輛を馬で引くことで移動します。
この場合、砲兵は野砲兵聯隊となり、輜重兵も輓馬となります。
駄馬編成は、山岳での機動を前提としたもので、馬の背に荷物を積んで移動します。
この場合、砲兵は山砲兵聯隊となり、輜重兵も駄馬となります。(当然輓馬よりも人馬ともに増加します)
自動車等が配備されて自動車化したケース、戦車隊や騎兵を装甲車とした機械化されたケースがあります。(日本には機甲師団というものはありません)
また、第五師団のように敵前上陸などを想定した編成や装備、訓練をした海兵師団のような特定任務専科の師団もあります。
更に、太平洋での島嶼防衛(戦闘)を想定して、それまでの師団編成をその任務の為に改編した海洋師団(海洋編制師団)も戦争末期に編成されました。
第十四、第二十九、第三十六、第四十三、第四十六、第五十二の各師団が改編され、近衛第二、第五の両師団も改編予定でした。
これまで師団と言えば日本では諸兵科連合の師団を言いました。(そのため歩兵師団とは言わない)
しかし後年、単一兵科による兵科別師団が編成されました。
戦車師団、高射師団がそれです。
また、それまで地上とは異なっていた航空兵科でも、師団編組を取り飛行師団などになっています。