師団の編制と編成の推移

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陸軍で師団が創設された当初、日本には6個の師団があった。
その後、日清戦争、日露戦争と大きな節目を迎え、明治から大正に移る頃には、近衛師団を含む19個師団となった。
大正時代には朝鮮半島における兵力配備が認められて21個師団になるも、折りからの世界的軍縮の中、経済上と称しつつも軍備の近代化のため4個師団を廃して17個師団と減少した。
しかし、昭和になり中国大陸で戦火が起こると、戦時の特設だけでなく新設師団が相次いだ。
また、一部戦時特設の師団が復員したり、島嶼防衛戦で玉砕する師団があって減少するなどした。
この他、兵科別師団として戦車師団、高射師団が編成され、また近衛師団もそれまでの1個から3個に増加した。
終戦時、陸軍には師団165個(近衛3個師団含む)、戦車師団4個、高射師団4個の計171個師団が存在した。
→ 師団の増減一覧
→ 師団の展開一覧(大東亜戦争時)

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師団編成以前に、日本には6軍管に鎮台と歩兵連隊を置いて常備軍としていた。
→ 黎明期の陸軍部隊(鎮台と連隊)
しかし、沖縄や韓国を巡っての清との対立により、将来生起するであろう清国との戦争において兵力や戦備が不足されることが予想された。
明治15(1882)年に陸軍は「軍備拡張計画」を立案し、十ヵ年計画で約2倍の兵力を整備することとした。
また同年、鎮台条例を改正して歩兵連隊2個で旅団を編成する(これ以前は連隊は大隊に分かれて旅団に所属)し、
更に21(1888)年に鎮台を廃して師団を編成した。
6個の鎮台が第一〜第六師団となった。(下表参照)

鎮台 東京鎮台 仙台鎮台 名古屋鎮台 大阪鎮台 広島鎮台 熊本鎮台
師団 第一師団 第二師団 第三師団 第四師団 第五師団 第六師団

→ 師団創設時の編成
この時の師団平時編制は、
歩兵旅団2個(各2個歩兵連隊)、騎兵大隊、砲兵連隊、工兵大隊、輜重兵大隊
総人員は9199名(歩兵連隊は1721名)である。
この時に定められた[師団−旅団−連隊−大隊−中隊−小隊]という編制が、以降の陸軍編成の基本となった。
なお、近衛都督(近衛兵)も、明治23年に師団編成となっている。
明治27年からの日清戦争は、これら師団が戦時に増員充足され、戦時編成(戦闘序列)となって戦った。

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日清戦争後、ロシアのアジアへの台頭や三国干渉によって、陸軍はロシアを次の仮想敵国としてこれまで以上の軍備充実を図った。
日露戦争までに、第七〜第十二師団の6個師団が編成されることとなった。
これまで2/3程度の定数であった近衛師団が他師団並に拡充された。
また、このうち第七師団は北海道の屯田兵を改編したものである。(日清戦争で臨時に師団編成を取り、29年に常設師団となった)
そして、第二〜第六師団が新しく1個師団を編成した。
これにより、合計で17個師団となった。
更にこの時、陸軍平時編制も改定され、騎兵大隊は騎兵連隊と改称(兵力はそれまでと変わらず3個中隊。ただし第七師団のみ2個中隊)した。
また、砲兵連隊は野砲装備の野砲兵連隊と、山砲装備の山砲兵連隊とに分化して師団の(作戦や運用上の)特性となった。
明治37年からの日露戦争はこれらの兵力で戦うことになったが、しかし想像以上の損害と兵力不足をきたした。
急遽師団の増設を図ったが、計画した4個師団(第十三〜第十六)のうち、戦争中に間に合ったのは第十三と第十四の2個師団のみで、しかも戦闘に参加するまでも無く終った。
戦時動員計画によって、常設師団は野戦1個師団を動員出征させると、予備役や後備役兵によって後備歩兵旅団1個(3個大隊編成)を編成した。
しかし、数次に渡って動員されたこれら後備歩兵旅団も、本来占領地警備などに使われるはずが野戦部隊の穴埋めに使われた。
第二・第七・第十二師団を除く各師団から動員され(近衛を含み14個)、このうち4個旅団で2個の後備師団が編成されている。
→ 日露戦争で動員された後備歩兵部隊
戦争は一応日本優勢で講和休戦となった。しかし、それはロシア側の国内事情もあって、再び日露で戦争となる可能性は否定できなかった。

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日露再戦











仮想敵国をソビエト連邦としていた日本は、第二次五ヵ年計画によって増強されるソ連に対抗して、軍備の充実を図る必要に迫られた。昭和10(1935)年における極東での兵力見積もりは、ソ連10に対し日本3であった。
昭和11(1936)年、陸軍省は「軍備充実計画ノ大綱」を通牒して、翌年から五ヵ年計画で、対ソ戦を前提とした軍戦備の近代化を行うこととした。
のちに「一号軍備」と言われるこの計画で、計画初年度に「昭和十二年度動員計画令」として三単位師団の定数が定められた。
これによってそれまでは諸外国での軍団に匹敵するとしてきた日本の師団(重師団)は、世界の主流である三単位の軽師団に改められる事になった。
この計画では、近衛師団と第七師団を除く他の12個師団から各1個の歩兵聯隊を抽出し、それによって4個の師団を新たに新設する。
この年、独立混成第十一旅団が、まずは初の三単位師団として第二十六師団に改編された。
また、翌年には戦時特設師団として第十五・十七師団が三単位で編成された。(前年に戦時特設師団として編成された第十三・十八師団は四単位だった)
この時に新設された第二十一・二十二・二十三の3個師団も三単位(おもに新設の歩兵連隊)で編成された。
更に、支那駐屯軍の兵力が師団に改編され、三単位の第二十七師団となった。
支那事変勃発により改正は遅れたが、これによって昭和14年〜から16年にかけて、第二十四・二十五・二十八・二十九の4個師団が新設された。
この時、第六師団から抽出した歩兵第四十七聯隊は、南方作戦に使用する予定の敵前上陸戦用師団である第四十八師団(昭和15年11月に台湾混成旅団を改編)に編入され、第二十四師団には歩兵第八十九聯隊を新設して編入している。
昭和15(1940)年には編制改正も行われた。
計画終了時の配備計画では、在満10個師団と在韓・内地17個師団の27個師団で、戦時41個師団を揃えるというものである。
内地にある平時編制の師団14個(近衛師団を除く)が、戦時特設師団(常設師団番号に百を追加する。ただし大正軍縮で廃止された師団は復活)を編成する。(下表参照 ちなみに第七師団も除外された。また、第十師団は更に第百十師団も編成した)

常備 近衛 10 11 12 14 16 19 20
常設 近衛 10 11 12 14 16 19 20
特設 101 13 15 104 105 106 108 109 17 111 18 114 116

実際、支那事変によって動員されたのは上表の特設師団の赤字の師団であり、またそのうちの百一・百六・百八・百九・百十四は復員して解隊している。(第百十一は山砲兵連隊のみ動員編成)
また、四単位で編成された十三・百四・十八・百十六・百十(第十師団の特設)からは、他同様に後に1個歩兵連隊が抽出されている。
→ 四単位師団の抽出連隊一覧
→ 師団編成と抽出連隊との関係一覧







中国方面では、支那事変が長期化の様相を呈してくると、中国での占領地を警備する治安維持兵力が必要となった。
特設師団が野戦師団として作戦に投入されたため、所要の兵力を新設することとなった。
昭和14年に新設された治安師団は、第三十二〜第四十一の10個師団である。
これらは当初の予定通り中国各地で警備の任務についたが、戦局はその本来の任務を許さず、前線の兵力補填のため転用を余儀なくされた。
なお、このうち第三十四、第三十五の両師団は、18年5月に砲兵力を欠く丙師団へと切り替わっている。
転用に伴って、兵力不足を補うために在支独立混成旅団が師団に改編された。
第五十八〜第六十と、第六十八〜第七十が、昭和17年に治安師団となった。(いずれも丁編成師団)
同様に、第六十二〜第六十五も昭和18年に治安師団として誕生している。





満州方面は、ヨーロッパ方面の情勢により、従来からの兵力では有事に間に合わず、また地形や気象などの自然条件に適応できずに作戦に支障をきたす恐れがあった。
昭和15年の軍備改編では、満州に永久駐屯する師団として、以下の13個師団を決定した。
第一、第八、第九、第十、第十一、第十二、第十四、第十六、第二十三、第二十四、第二十五、第二十八、第二十九師団
日本本土の常設師団が満州に移動したため、移動となった師団の留守部隊を母体として、新たに常設師団を編成することとなった。それが下表である。

移動した常設師団 第一 第八 第九 第十 第十一 第十二 第十四 第十六
新設された常設師団 第五十七 第五十二 第五十四 第五十五 第五十六 第五十一 第五十三

このうち、第一師団では編成せず、また第五十三師団は第十六師団が南方に転用予定となって実際には満州に移動しなかったため、編成が他の師団と比べて1年以上も遅くなっている。



昭和18(1943)年、「昭和十八年総合作戦指導並びに兵力運用及び兵備の大綱」によって、更に師団の増設を図った。
この増加師団の中心となったのが、先に満州への駐屯した後に編成された五十番代師団の余剰連隊である。
旧来の常設師団は四単位だったが、新設された常設師団は三単位だった。
これら余剰連隊(8個)に独立歩兵団(第六十一〜第六十七)を基幹として5個師団が新設された。
これらは五十番代の常設師団が編成した特設師団という位置付けにあたる。
なお、第四十一は既に治安師団として編成されているため、第六十一独立歩兵団基幹の師団は第六十一師団となった。
また、第六十五独立歩兵団は第六十五旅団となって戦地にあり、師団を編成することが無かった。(そのため第四十五は欠番)