毎週更新第二回 日本軍の基礎知識


このページは、いわゆる軍事用語に疎い素人の方を対象にした解説ページです。

1997(平成9)年大東亜戦争戦史研究会発行 日本軍の基礎知識から転載、再構成しました。


◆日本軍の基礎知識<組織編>◆

これからの内容を理解するには必要不可欠の基礎知識です。
特に近代日本史は軍事に関しての知識があるのと無いのとでは、大きく理解度が異なります。
もちろん覚える必要などありませんので、そういうものだと理解して下さい。

◇陸軍の組織◇

陸軍は巨大な組織ですが、次の4つに分類されます。

(1)軍隊(ぐんたい)
ここで言う軍隊とは、戦闘部隊、あるいは戦闘部隊に類する部隊(教育や直接戦闘には参加しない支援、後方部隊で、部隊としての編制であるもの)です。
部隊については次回。

(2)官衙(かんが)
官衙とは、いわゆる役所のことです。陸軍省(軍政と言って予算や人事など陸軍を管理する)や参謀本部(軍令と言って用兵や作戦など軍隊を運用する)、また工場や研究機関も含みます。
なお、陸軍省と参謀本部についての説明は後述。

(3)学校(がっこう)
その名の通り教育を行う場です。将校に参謀教育を施す陸軍大学校を始め、将校を養成する陸軍士官学校などの高度な軍事教育を施すもの(以上を補充学校と言う)と、陸軍歩兵学校や所沢陸軍飛行学校など、兵科別などで専門的な教育や特別の教育を施したもの(以上を実施学校と言う)、そして経理や軍医、獣医などを養成する専門学校などです。
なお、スパイを養成した有名な陸軍中野学校も実施学校です。

(4)特務機関(とくむきかん)
以上のいずれにも属さないものです。在外公館の駐在武官、武官補佐官や元帥府、軍事参議院などです。
元帥府は軍の意見役や天皇陛下の軍事顧問という役割の元帥(前回の階級についてを参照のこと)が所属するもので、特に建物や事務取扱の役所のない実体のないものです。
また、軍事参議院も元帥府と同様天皇陛下に対する諮問機関として、特命の将官(専任参議官)と、元帥、陸海軍大臣、参謀総長、軍令部総長の兼任者で組織されます。
なお、後に出てくる謀略機関としての特務機関は、ここには属しません。

◇陸軍省と参謀本部◇

今現在は防衛庁が自衛隊を管理していますが、その運用に関しては統合幕僚監部が行っています。
簡単に説明しておくと、防衛庁は総理府に属する行政機関です。また、防衛庁長官は文官です。
統合幕僚監部は、陸、海、空三自衛隊の幕僚監部(参謀本部)の上部組織で、三自衛隊の調整や統一運用に関して責任を持ちます。
以上は現在におけるものですが、これから説明することは似たような言葉はあっても、全く意味や規定が異なるものです。現在の価値観や思想を持ち込んで判断してはいけません。仮に今現在、その考えや決まりが間違っている、あるいは悪であるとしても、です。

陸軍省
陸軍省とは、その名の通り行政機関の一つであり、その長を内閣に送るのは他の行政機関と同じです。
その機能などについては特にここで説明することはありませんが、問題は陸軍大臣の選定についてです。
軍人が政治に関与しないようにされたのは、現在と同様です。軍隊を管理するのには、軍隊を良く知る武官がより良いに決まっています。しかし、武官が武力を管理、保持している以上、政治に関与することは厳しく戒められています。明治維新の際には、武力を用いた政治闘争が行われたため、特に日本では文民統制(シビリアンコントロール)が厳しく定められていました。(そのため、陸軍創設時の陸軍大臣、当時は陸軍卿と言いましたが、閣僚として政治に関わることは許されませんでした。その逆に、閣僚が軍事に関わることも出来ません)ですが、軍内の事情に精通し、その意見を反映する(陸軍大臣は、しかし軍の代表者としてだけあるのではなく、閣僚の一員として政府の意向を軍に反映させることも重要なはずです。その実際は本稿を参照)ため、予備役武官を登用しました。現役ではなく、予備役としたところは建前的ですが、実際には後年、軍部大臣現役武官制を楯にとって政治に関与してきます。陸軍大臣は現役の大将、あるいは中将であるように定められています。これが色々と組閣や内閣改造に(主に意図的に)干渉して、政治の混乱を招きました。

参謀本部
軍隊の特殊なところは、軍の運用や作戦に関しての独立性が保たれている事にあります。これは大日本帝国憲法に定められた「天皇は陸海軍を統帥す」によって、他の何人も軍の作戦運用に口を挟めないようになっているからです。
参謀総長は統帥部長とも称され(海軍の軍令部総長も同様)、天皇陛下の直接指揮下(直隷)にあり、帷幄上奏(いあくじょうそう。直接天皇陛下に面会し、意見を言えること。大臣以外には普通許されなかった)することが出来ました。後に統帥権独立問題などを引き起こし、日本を戦乱に導いた一つの原因とされています。

ところで、日本軍にも一応、現在の統合幕僚監部のように、国防や統一された用兵に関しての調整機関が存在しました。
(陸軍と海軍の反目、陸軍と政府の反目など複雑な色々な問題を含んでいますが、簡単に説明します)
大本営(だいほんえい)という機関ですが、これは戦時にのみ設置されるもので、作戦用兵に関して陸海軍を一元的に指揮するものとして、陸軍幕僚長(参謀総長が兼任し、大本営陸軍部は参謀本部が兼務)と、海軍幕僚長(軍令部総長が兼任し、大本営海軍部は軍令部が兼務)が所属します。
しかし、それが有効に働いていたのかというと必ずしもそうではなく、戦争遂行には軍部だけではなく政府もかなりな部分を負担していたため、その間に齟齬を生じ、国政に混乱をもたらしてしまいます。
そのために大本営政府連絡会議(後にはもっと進んだ最高戦争指導会議)が設置されていますが、その機能も不十分でした。

◇学校◇

学校の一覧表です。ここでは一覧のみ載せてます。(一部不足あり)
なお、各学校の管轄は、陸軍大臣、参謀総長、教育総監、陸軍航空総監などに分属されます。

陸軍大学校
陸軍幼年学校
陸軍士官学校(陸軍予科士官学校、陸軍士官学校、陸軍航空士官学校)
陸軍予備士官学校
陸軍教導学校
陸軍憲兵学校
陸軍砲工学校(後、陸軍科学学校)
陸軍工科学校(後、陸軍兵器学校)
陸軍少年戦車兵学校(昭和16年12月)
陸軍少年通信兵学校(昭和18年3月)
陸軍少年飛行学校(昭和18年3月)
陸軍歩兵学校
陸軍騎兵学校
陸軍戦車学校(後、千葉陸軍戦車学校)
陸軍野戦砲学校
陸軍重砲兵学校
陸軍防空学校(後、千葉陸軍高射学校)
陸軍工兵学校
陸軍通信学校
陸軍自動車学校
陸軍輜重兵学校
陸軍戸山学校(軍楽、剣術、体操)
陸軍習志野学校(毒ガスなど化学戦)
陸軍中野学校(スパイ養成)
陸軍航空技術学校
所沢陸軍飛行学校
下志津陸軍飛行学校
明野陸軍飛行学校
熊谷陸軍飛行学校
浜松陸軍飛行学校
陸軍経理学校
陸軍軍医学校
陸軍獣医学校

 


 

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