【12月11日=報道規制? So what?】
先週は、講演やシンポジウムをまとめてお引き受けした。ちょうど自衛隊派遣延長と重なる時期だったので、話題の多くはそこに集中した。
多くの会場の来場者から、防衛庁や自衛隊取材の「報道規制」の質問をされた。あるシンポジウムでは、タイトルからしてこうだった。
「イラクでの報道規制は有事法の先取りだ!〜伝わらない自衛隊の活動」
これに対して、僕は最初からこう言った。
「きょうのテーマですけど、答えはもうすでに出てると思うんですが…。
『報道規制』なんて、どんな時代にも、どんな問題でも権力者の側は仕掛けてきたでしょう。でも、それを何とかして打ち破る、抵抗する、あるいは抜け道を探して取材するのがジャーナリズムや報道の役割だと思います。
『自衛隊の活動が伝わらない』のは、別に自衛隊が何もしていないからではなくて、単に自衛隊が活動している場所に日本のメディアがいないからだけの話です」。
自衛隊関係の取材が、難しいのは確かにわかる。私も実感でわかる。しかし、その「難しさ」を取材者の側がいくら世間に訴えてもあまり意味はない。訴えれば訴えるほど、言い訳にしか聞こえない。
先日も知り合いの日本人ジャーナリストがロシアで軟禁後に国外退去処分になったようだが、ほかにもキューバや中国、ビルマなど、世界中でジャーナリストの拘束・逮捕・暗殺が相次ぐ国がいくつもある。「国境なき記者団」・「ジャーナリスト保護委員会」(CPJ)
そうした国で取材活動を続ける地元の報道機関やジャーナリストからすれば、日本の「報道規制」なんて、「So
what?(それがどうした?)」の一言で片付けられるだろう。日本の「報道規制」なんて、たいしたレベルではない。
いくつかの会場で参加者から声が出ていたが、クウェートとイラク南部を往復する航空自衛隊の活動がこれまでほとんど報道されていない。しかし、これまでに米兵1200人を輸送しているという(共同通信記事)。だが、その映像や写真を僕も見たことがない。
マスメディアも、フリーランスにとっても、現在のイラクは取材が最も難しい国の一つだろう。
結局、今回の自衛隊派遣延長問題で、肝心の【サマワ発】の報道は新聞もテレビも皆無だった。すべて、イラク人の助手やアシスタント頼りだった。フリーランスも含めて、日本人記者やカメラマンはいまは誰もサマワにいない。
自分の国の軍隊がどんな活動をしているのかを監視するのを、イラク人の助手やアシスタントに任せるのは無理がある。
防衛庁長官や与党幹事長がサマワに入っているのに、その周辺に一人も記者がいないというのはなぜだ?何のための「記者クラブ」なのかな?
イラクの自衛隊報道に対して「報道規制」を訴える前に、どうやって通常の当たり前の「現場取材」に戻れるのかを考えて実行に移すしかない。それはまさしく僕も同じだ。