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<冠詞に関する覚え書>
指示力なき指示詞としての定冠詞:直接規定

第11話 関係詞・分詞・to 不定詞と冠詞



= 覚え書(11) =

 今回は、関係詞節の先行詞を中心に扱います。

関係詞節による修飾

 まず、次の文をご覧ください。

(1)This is the doll that he made yesterday.(これは昨日彼が作った人形だ)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(2)This is a doll that he made yesterday.(同上)

(1)の方は、「彼が昨日作った人形」は1つだけであり、「どの人形」であるかが特定されているために the doll になっています。一方、(2)は、「彼が作った人形」は複数であり、そのうちの1つであることを示しています。基本的に、関係詞の先行詞については、たいていの場合、この区別で the と a を使い分けることができます。同様の例を挙げます。

(3)This is the map I borrowed from Bill.(これはビルから借りた地図だ)『英文法解説』(金子書房)
(4)This is a map I borrowed from Bill.(同上)
(5)My parents went to look over the house that they're thinking of buying.(両親は買ってはどうかと思案中の家を下見に出かけた)『同上』
(6)My parents are looking for a house that is convenient for all transportation.(両親はあらゆる交通機関に便利な家を探している)『同上』
(7)She went back to the seat where she had left her handbag.(彼女はハンドバッグを置き忘れた席に引き返した)『同上』
(8)She would like to get a seat where she can get a full view of the valley.(彼女はその渓谷の全景が見える席に座りたいと思っている)『同上』
(9)This is the knife which was used in yesterday's murder.(これは昨日の殺人に使われたナイフです)『英語のなかの複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(10)This is a knife which was used in a murder.(これは殺人に使われたナイフです)『同上』

各奇数番号の文では、特定の「地図、家、席、ナイフ」であることが明らかですが、各偶数番号の文は、「ビルから借りた地図」、「あらゆる交通機関に便利な家」、「渓谷の全景が見える席」、「殺人で使われたナイフ」が、1つではなく、複数あることを暗示しています。例えば、(10)の文を the knife とすると、「殺人で使われたナイフ」が世の中に1つしかないと考えて述べているか、あるいは、既に話題に上っている「殺人で使われたそのナイフ」のことを述べていることになります。なお、関係詞の非制限用法は先行詞の冠詞に何の影響も及ぼしません。つまり、例えば(5)を次のようにした場合、the house は既に話題に上っている「その家」です。
My parents went to look over the house, which they're thinking of buying.(両親はその家の下見に出かけたが、その家を買ってはどうかと思案している)

先行詞が複数形の場合

 先行詞が複数である場合、不定冠詞は使えませんから、the を使うか、無冠詞のいずれかになります。the を使うのは、話者が、「どの〜」であるかが具体的に特定されたとみなした場合です。

(11)I know the people who live here and I say hello to them on the street.(私はここに住んでいる人たちと知り合いであり、通りで見かければ挨拶をする)
『http://www.wetcoast.org/archive/000130.html』
(12)I know people who live in rural areas.(私は田園地域に住んでいる人たちを知っている)
『http://www.chiark.greenend.org.uk/pipermail/ukcrypto/2003-September/027875.html』

(11)は、「ここに住んでいる人たち」が、私にとって、「誰と誰と誰と…」であるか分かっており、しかも、全員を知っていることが暗示されています。この「全て」という包括性については、「覚え書 (6)」で、形容詞との関連でも述べていますので、それも参照してください。一部、再録しておきます。

≪これまで見てきたように、定冠詞 "the" は「どの〜」であるかが特定され、「それ以外はない」という意識が働いた場合に用いられます。そこで、「全体の〜、全ての〜」というとき、対象の全てを指すと、当然、それが全てなのですから、「それ以外はない」ことになります。そして、その集合の組み合わせは、それしかなく、特定されていると見なされることになります。≫

 先行詞が複数の例を幾つか挙げます。まず、the の付いている例です。

(13)A neighborhood that was once divided on what should be done with 30 liquidambar trees is reluctantly saying goodbye to most of the mature trees that line the shady street.(30本の楓の木をどうすべきかで、かつて意見が分かれていた近隣の人たちは、日陰になった通り沿いに並ぶそれらの成木のほとんどにしぶしぶ別れを告げようとしている)
『http://www.svcn.com/archives/wgresident/09.13.00/trees-0037.html』
(14)Cameron Avenue is two-way but only about 20 feet wide, with low granite curbing and trees with boughs that form a canopy over the street. Set behind the trees that line the street, there are sidewalks on each side.(キャメロン・アベニューは両面交通の通りであるが、幅が約20フィートしかなく、低い花崗岩の縁石があり、通りを覆う天蓋のように枝を伸ばした木々が立っている。通り沿いにあるそれらの木々の背後には、歩道が両側に配置されている)
『http://www.fpc.unc.edu/CampusMasterPlan/Campus_Design_Guidelines_
LowBandwidth/Street_Types.pdf』

この(13)と(14)の the mature trees と the trees は、初出ではなく、前にある trees を受けているために the が付いており、さらに that line the (shady) street という関係詞節があるためにいっそう the を付けるのが自然です。さらに次の例を見て下さい。

(15)Wardell Circle will soon see much-needed road improvements, but Oceanport residents are fighting to save the trees that line the neighborhood's streets.(ワーデルサークルでは、もうすぐ切望されていた道路の改修が行われる。しかし、オーシャンポートの住民たちは近隣の通りに沿った木々を残すために闘っている)
『http://atlanticville.gmnews.com/News/2002/0228/Front_Page/003.html』
(16)I have set anchor in the shade of the tall trees that line this Mohawk River, which would give me a cool breeze coming down its high mountain ridges.(私は、このモホーク川沿いの高い木々の陰に錨を固定した。この川は高い山の尾根からやってくる涼しいそよ風を私に運んでくれたものだ)
『http://www.dbflint-colonial-wars.com/kanatsiohareke.htm』
(17)Whoever wrote, "I think that I will never see a poem as lovely as a tree" should drive down Old Country Road in Melville on Long Island. The trees that line this road have been pruned−apparently with a meat cleaver−to keep branches away from power lines. (「木と同じほど美しい詩を見ることは決してないだろう」と書いた人は誰でも、ロングアイランドのメルビルにあるオールドカントリーロードを走ってみるとよい。この道路沿いの木々は、枝が電線に触れないように(見たところ大きな肉切り包丁を使って)刈り込まれている)
『http://www.aaany.com/safety/traffic/tips_issues/981tips_issues_
stories.asp』

これらは、いずれも初出の trees なのですが、the が付加されています。これは、それぞれ that 以下の関係詞節によって特定され、「どの木々」であるかを示しているためです。この場合も the を付ける方が普通です。しかし、同じように初出の trees であり、同じような関係詞節が付いていますが、無冠詞である場合もあります。(18)と(19)をご覧下さい。

(18)Neighbors living on Parkside Avenue gathered to discuss the removal of trees that line the street.(パークサイド・アベニューに住む近隣の人たちが、街路沿いの木々の除去について話し合うために集まった)
『http://www.svcn.com/archives/wgresident/09.13.00/trees-0037.html』
(19)But some council members said they were not satisfied with the modified plan because it requires cutting down trees, most of which are mature pittosporum trees that line Shattuck Avenue between Channing Way and Addison Street.(しかし、何人かの市議は次のように述べた。変更されたその計画案に満足していない。なぜなら、木を切る必要があり、それもそのほとんどの木がチャニングウェイとアディソンストリートの間のシャタックアベニュー沿いにあるトベラの成木であるからだ)
『http://www.dailycal.org/article.php?id=365』

(18)と(19)の trees は、初出の概念として紹介導入されているケースです。上の(15)〜(17)と同じような文脈なのですが、こちらは無冠詞です。これは、冠詞というものが「意味」ではなく、むしろ話し手や書き手の気持や意識を強く反映するためであり、状況によっては非常に微妙な差になります。まず、(18)は the を付けても良いと思いますが、「どの木々」であるかということよりも、「何の除去」であるかを強く意識しているために、that 以下が強く trees を特定しているという意識が弱くなり、無冠詞になっていると考えられます。「どの木々か」ということではなく、「木々の除去」に意識が向いています。一方、(19)の場合も the を付けても良いと思いますが、こちらが無冠詞であるのは、書き手の意識が、「どの木々か」というよりも「どんな木々か」に強く向いたからだと考えられます。文の内容からして、「チャニングウェイとアディソンストリートの間のシャタックアベニュー沿いにあるトベラの成木」というのは、普通の木ではなく、何か重要な意味を持っているか、切ることができない理由のある木、という感じがします。このような意識が働く場合、「どの木々か」よりも「どんな木々か」を述べている気持になるはずで、無冠詞を使いたくなると言えます。極端に言ってしまえば、very important trees と言っても話し手の意識にかなり近いと考えられます。

「the + 複数の名詞」が包括性を示さない例

 また、the が持つ包括性、つまり、例外を意識せず「全ての木々」と考えているのか、あるいは例外を意識して「木々」と考えているのかという問題があります。(18)と(19)は、包括性を避けて無冠詞にした、とも考えられなくはないのですが、(15)〜(17)も同じような文脈であることを考慮すれば、(15)から(19)の文では、包括性は重要ではないと思います。the 複数名詞が常に「全ての〜」を示すとは限らないからです。例えば、次の文をご覧下さい。

(20)Jack is fed up with his new university, because the students are lazy.(ジャックは自分の新しい大学にうんざりしている。学生が怠惰だからだ)『新英文法選書 第6巻 名詞句の限定表現』(大修館書店)
(21)The soldiers attacked the two towns simultaneously.(その兵士たちは2つの町を同時に攻撃した)『同上』
(22)Though the soldiers surrounded the towns, not all of them participated.(その兵士たちがそれらの町を包囲したけれども、彼らの全員が参加したわけではなかった)『同上』

(20)の the students は、「全ての学生」ということではなく、一般的に「そこの学生たち」のことを言っていると解釈するのが普通でしょう。(21)は「同時に2つの町を攻撃した」ということですから、「兵士全員」が「2つの攻撃に同時に参加した」ということは考えられません。また、(22)は文字通り「全員」ではないということです。つまり、「全て」という包括性ではなく、「どの〜」であるかに意識が強く向いていると考えられます。

先行詞が普遍妥当命題の主語

 さらに、関係詞の先行詞となる名詞に通例 the を付けないケースとして、普通に一般的事実や一般的真理と見なされる文(これを関口存男氏は「普遍妥当命題」と呼んでいます)の場合があります。典型的な例は、一般論として「A は B である」と述べる場合です(これはいずれ詳しく述べる予定です)。

(23)Animals which are in cages are not happy.(おりの中の動物は幸福ではない)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(24)Birds that eat insects can see them from far away.(昆虫を食べる鳥は遠方から昆虫が見える)『同上』
(25)Babies who are allergic to milk shouldn't be given it.(牛乳アレルギーの赤ん坊に牛乳を飲ませてはいけない)『同上』

これらの文の animals, birds, babies に the を付けると、具体的な「それらの動物」、「それらの鳥」、「それらの赤ん坊」と解釈されると考えられます。

先行詞が単数の場合に、関係詞節が質の含みを感じさせる例(「どんな〜」の意識が顕著な例)

 以上は複数の話ですが、単数の場合も複数の場合ほどではありませんが、the が使われそうなところで a が使われることがあります。

(26)I broke the window that my elder brother broke the week before.(私は、兄が前の週に割った窓を割った)『英語のなかの複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(27)I broke a window that my elder brother broke the week before.(同上)
(28)(日本は湿度が高いので本にかびが生えやすいという話をしているとき)"Look, this is a book I bought two years ago, and this is a book I bought yesterday. Notice the difference."(見ろよ。これは2年前に買った本で、こちらは昨日買った本だ。その違いに注目してくれ)『英語の冠詞がわかる本』(研究社)

(26)は普通の文であり、兄が1枚の窓を割り、私がまたその窓を壊した、ということを述べており、「どの窓」であるかに意識が強く向いています。これに対し、(27)は、兄が割った窓が1枚であるとすれば、「どの窓」であるかというよりも、私が「どんな窓」を割ったのか、ということに重点が置かれていると考えられます。言い換えれば、(26)がどちらかと言えば、淡々と客観的事実を述べているという感じがするのですが、(27)は that 以下の「兄が先週割った」ことに意識が向いており、例えば、多少大げさに言えば、「私は窓を割ったんだが、何と馬鹿なことに、それは先週兄が割った窓だったんだ」という感触が伴うわけです。(28)は、「2年前に買った本」と「昨日買った本」がそれぞれ1冊だけであったとしても、the ではなく a が適切だと言えます。この文は、明らかに「どの本」ではなく、「どんな本」であるかを述べているからです。何なら、"This is an old book, and this is a new book." としても言いたいことはちゃんと伝わるはずです。

先行詞に all が付加された場合

 なお、先行詞に all が付く場合、普通、all the となり、the を必要とします。

(29)She always writes down all the things our teacher says.(彼女は先生が言うことをいつも全部書き取る)『英誤を診る』(進学研究社)

先行詞が抽象名詞

抽象名詞の場合も特定されていれば、the が用いられます。

(30)The pleasures one gets from reading and drinking have a certain similarity.(読書と酒の楽しみには、ある種の類似性がある)『英誤を診る』(進学研究社)
(31)This was a situation he hadn't met before.(これは、彼がこれまでに経験したことのない状況だった)『同上』
(32)He greeted me with the warmth that I was accustomed to.(彼は、私が慣れ親しんだ暖かさで私を出迎えた)『新英文法選書 第6巻 名詞句の限定表現』(大修館書店)
(33)He greeted me with the warmth that I expected.(彼は、私が予想したとおりの暖かさで私を出迎えた)『同上』
(34)He greeted me with a warmth that I had not expected.(彼は、私が予想していなかった暖かさで私を出迎えた)『同上』
(35)He greeted me with a warmth that was surprising.(彼は、驚くべき暖かさで私を出迎えた)『同上』

(30)、(32)、(33)は、それぞれ特定の「楽しみ」、「暖かさ」ですが、(31)、(34)、(35)は、いろいろな「状況」、「暖かさ」の「1つ、1種」です。

分詞および to 不定詞による修飾

 ここまで関係詞節について述べてきましたが、現在分詞、過去分詞、to 不定詞などが形容詞的に名詞を修飾する場合も、上で述べたことが全て当てはまります。

(32)The man standing over there is the owner of the store.(あそこに立っている人がその店の持ち主です)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(33)That is the mansion belonging to Mr. Smith.(あれがスミス氏所有の邸宅です)『同上』
(34)What is the language spoken in Iran.(イランではなされている言葉は何ですか)『同上』
(35)This is the way to learn to think creatively.(これが創造的に考えることを身につける唯一の方法である)『http://www.subclub.org/field/blocks.htm』

(32)から(35)はいずれも特定の1つを示しています。特に、(35)は the way となっていますから、「それ以外の方法はない」と書き手は考えています。

(36)And the little man says, ‘That is a ring belonging to us, and we'll be forever grateful to you for returning it to us. What can we do for you in return?'(そして小柄な男は言う。「それは私たちの指輪です。お返しいただいたことをいつまでも忘れることなく感謝します。お返しに私たちは何をすればよいでしょうか」)
『http://www.liamclancy.com/articles/old.htm』
(37)Irish is a language spoken today by approximately 300,000 people.(アイルランド語は今日約30万人に話されている言語である)
『http://www.celticobsessions.com/Celtic%20Languages.htm』
(38)This is a way to learn about foreign lands and languages.(これは外国の土地と言語を学習する1つの方法である)
『http://news.mywebpal.com/partners/870/public/news498589.html』

いずれも紹介導入されたために使われている a です。(37)は、「今日約30万人に話されている言語」が1つであっても、ここは、アイルランド語が「どの言語」ではなく、「どんな言語」であるかの説明ですから、a です。

 複数の場合も同じです。

(39)With the two major international airports in the Orlando area, Orlando and Sanford, over 85% of the tourists arriving are from Europe and the UK.(オーランド地区には2つの大きな国際空港、オーランド空港とサンフォード空港があるが、到着する旅行者の85%以上がヨーロッパ大陸と英国からの旅行者である)
『http://www.nasda-hq.org/FMD/FLletter.htm』
(40)Tourists arriving in Japan find only Western-style buildings which are not very different from those in their own countries.(観光客がせっかく日本に来ても、目にするのは自分の国のものと大差ない西洋風の建物だけである)『英誤を診る』(進学研究社)

(39)のように「〜のうちの…」という割合を表す場合は、必ず、「特定された全てのもの(のうちの…)」になるはずですから、定冠詞になります。(40)は上記(23)〜(25)と同じです。the を付けて The tourists とすると、特定の「(日本に到着する)それらの旅行者」を意味します。

 次回は、同格と冠詞の関係を扱う予定です。

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