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目次

<冠詞に関する覚え書>
指示力なき指示詞としての定冠詞:直接規定

第13話 同格と冠詞
(the A 疑問詞節、the A of B、the A to 不定詞)




= 覚え書(13) =

 今回も、前回と同様、同格と冠詞の関係を扱います。

「A (of) 疑問詞節」という同格

 まず、question や problem と疑問詞節の場合です。結論から言いますと、この場合は the を使うのが普通です。

(1)We have to discuss the question (of) how we will raise the money.(お金をどのように調達するかという問題を議論しなければならない)『ジーニアス英和辞典』
(2)Then arose the problem (of) who should bell the cat.(次いで誰が猫の首に鈴をつけるのかという問題が生じた)『新グローバル英和辞典』

これは、前回述べた that 節の同格と同じで、「疑問、問題」という語は、明瞭で具体的なイメージを伴うことが多いからだと考えられます。「どんな問題」であるかがはっきりしているわけです。不定冠詞が用いられるのは、やはり、新しい情報として紹介導入する場合です。

(3)It is a question of who should bell the cat.(それは誰がその難しい仕事をするかの問題だ)『ルミナス英和辞典』

なお、この「問題」という語について、少し注意する必要があるのは、there is 構文と使われる場合です。同格の of によって question や problem が特定されて the が付いているときにも、there is 構文とよく使われるのです。これは、通例、いろいろな問題点、疑問点を列挙する場合です。

(4)Second, there is the question of just how well aligned they are.(次に、それらがまさにどの程度一直線上に並んでいるかという問題がある)
『http://imagine.gsfc.nasa.gov/docs/ask_astro/answers/961207a.html』
(5)In addition, there is the problem of when he revealed the arrest.(さらに、彼がその逮捕をいつ明らかにしたかという問題がある)
『http://www.cnn.com/COMMUNITY/transcripts/2000/11/3/McFeatters/』

feeling のような単語の場合は、同格の that 節と同じで、a も the も普通に使えます。

(6)You have to get a clear feeling how flexible the other person is.(相手がどれだけ融通がきくか見極めることが必要だ)『ジーニアス英和辞典』

この文は、clear という形容詞があるので、a を使う必要がありますが(不定冠詞の質の含み)、a (or the) feeling (of) how flexible the other person is のような表現も可能です。

「A of B」という同格

 次に同格の of です。これは、前回説明した同格の that 節とほぼ同じです。具体的で明瞭な名詞と使った場合は、the が使われ、曖昧なイメージを持つ語や、明瞭なイメージを話者が持っていない場合、a が使われやすくなります。また、「1回、1つ」という意識が強い場合は、a が使われることが多くなります。

(7)the city of New York(ニューヨークという都市)『新グローバル英和委辞典』
(8)the journey of life(人生という旅)『同上』
(9)at the age of nine(9歳という年齢で)『同上』
(10)the fact of his being a student(彼が学生であるという事実)『ルミナス英和辞典』
(11)the problem of transporting the luggage(荷物を運ぶという問題)『同上』

(10)の fact は、同格の that 節の場合と同じく、同格の of の場合も、a と使われることは基本的にありません。

「A of B」という同格の A に入る名詞(1)

 さらに、the と使われることが多い名詞には次のようなものがあります。

job(仕事), idea(考え), thought(考え), notion(考え), sense(意味), exception(例外), promise(約束), purpose(目的), aim(目標), objective(目的), intention(意図), certainty(確信), conviction(確信), hope(希望・見込み), likelihood(見込み), probability(見込み), possibility(可能性), chance(見込み・機会), prophecy(予言), report(報道), desire(願望), reputation(評判), impression(印象)など

(12)The notion of the Free World battling communism won many adherents.(共産主義と闘う「自由世界」という考え方は多くの支持者を得た)『新編英和活用大辞典』
(13)I boggled at the thought of spending my life sitting in a chair in an office.(会社の椅子に座って一生過ごすのかと思うと尻込みした)『同上』
(14)Can you please pursue the possibility of finding a new site for the head office?(本社建設の新しい用地を見つけるという可能性を追求していただけないでしょうか)『同上』

 初出の概念として新しい情報を述べる場合には、不定冠詞が使われます。特に形容詞が付く場合には、「どの〜」ではなく「どんな〜」であるかを述べることになりますから、定冠詞を使わず、不定冠詞を使うことになります。

(15)There is always a likelihood of such a thing happening.(そういったことが起こる可能性は常にある)『新編英和活用大辞典』
(16)I saw a good possibility of making a career as politician.(政治家として身を立てる十分な可能性を認めた)『同上』

なお、no や any などが用いられることもあります。

(17)Mr. Green came to Japan with the intention of studying Japanese history.(グリーン氏は日本史を研究するつもりで日本へ来た)『新グローバル英和辞典』
(18)She has no intention of going abroad yet.(彼女はまだ外国に行く意思はない)『ルミナス英和辞典』
(19)I don't know whether he has any intention of doing that.(彼がそれをする意思があるのか分からない)
『http://www.cbsnews.com/stories/2003/08/10/ftn/main567513.shtml』

「A of B」という同格の A に入る名詞(2)

 さらに、「感じ」、「感情」を表す語です。例えば、

feeling(感情), sensation(感じ), sense(感じ), fear(恐れ・心配)など

です。さらに suspicion, rumor など「疑い」、「うわさ」のような言葉もあります。これらの語は、上で述べてきた語よりも、a と使われることがやや増えてきます。the の場合は、具体的で明瞭なイメージがあり、やや強い感触を伴い、一方、a の場合は漠然としたイメージになり、「一種の、ある種の」という感触を伴います。

(20)I had the sensation of being watched.(私は見られているという感じがした)
『http://www.3ammagazine.com/short_stories/horror/room6/page1.html』
(21)I had a sensation of light coming into that taxi that night.(その夜、私は、光がそのタクシーの中へ入ってくる感じがした)
『http://www.firstlutheran.com/html/october_12.html』
(22)I have a suspicion of his having accepted a bribe.(どうも彼が賄賂を受け取ったように思う)『ジーニアス英和辞典』

on (or under) suspicion of O(O という容疑で)や for fear of O(O を恐れて)といった熟語の場合は、suspicion や fear の名詞性が弱まり、無冠詞になることが多くなります。

(23)He was arrested on (the) suspicion of having accepted a bribe.(彼は賄賂を受け取った容疑で逮捕された)『ジーニアス英和辞典』
(24)I didn't go skiing for fear of catching cold.(私はかぜをひくといけないのでスキーには行かなかった)『ルミナス英和辞典』

「A of B」という同格の A に入る名詞(3)

 次も同格の that 節の場合と同じで、sign(表れ)は the と使われることは少なく、no, any, a などと使われることが多くなります。また、evidence(証拠), proof(証拠)は、無冠詞が多くなります。

(25)He showed little sign of being interested in our project.(彼は我々の企画に興味がありそうな様子をほとんど見せなかった)『新グローバル英和辞典』
(26)These scratches are telltale evidence of the lock having been tampered with.(これらのひっかき傷は錠前がいじられたというひと目でわかる証拠だ)『新編英和活用大辞典』
(27)His cigarette case was indisputable proof of his having been there.(彼のたばこケースの存在は彼がそこにいたということの議論の余地のない証拠となった)『同上』

「A to 不定詞」の A に入る名詞

 では次に、同格の to 不定詞と冠詞の関係です。この場合も同格の of と基本的に同じです。ただ、to 不定詞と同格を形成する名詞は、人の持つ「能力、決心、願望、傾向」などを表すものが多く、従って、the の代わりに one's を使うケースが増えてきます。the, one's, a のいずれもが使われるのは、

need(必要性), command(命令), ability(能力), inability(無能力), decision(決心・決定), impulse(衝動), intention(意図), refusal(拒否), desire(願望), wish(願い), chance(機会), demand(要求), order(命令), request(依頼), tendency(傾向), plan(計画), attempt(試み)など

です。大体、a と使われることが少ないものから、多いものへと並べてあります。refusal あたりが、the と a が拮抗している語だと思われます。plan, attempt などは「1つの計画」、「1回の試み」というように「1」という概念と結びつきやすいために、a と使われることが多いと考えられます。幾つか例を挙げておきます。

(28)He has the ability to communicate with dogs.(彼は犬と気持を伝え合う能力を持っている)『英語の中の複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(29)He has an ability to communicate with dogs.(同上)
(30)He suddenly had the impulse to eat inarizushi.(彼は突然いなりずしを食べたいという衝動に襲われた)『同上』
(31)He suddenly had an impulse to eat inarizushi.(同上)
(32)I have been waiting for the chance to express my own opinion.(自分自身の意見を披露する機会を待っていました)『同上』
(33)I have been waiting for a chance to express my own opinion.(同上)
(34)She was in the mood to see a movie tonight.(彼女は、今夜映画を見に行きたい気分であった)『同上』
(35)She was in a mood to see a movie tonight.(同上)

「have the A to 不定詞」が感情を込めた評価を表す例

 「have the 名詞 to 不定詞」という形で、ある共通の特徴を持つ類似した表現がかなりあります。最後にこれについて述べておきます。まず、以下の表現をご覧下さい。

have the assurance to do (厚かましくも…する)
have the audacity to do (ずうずうしくも…する)
have the boldness to do (厚かましくも…する)
have the cheek to do (厚かましくも…する)
have the confidence to do (自信を持って…する、ずうずうしくも…する)
have the conscience to do (…するくらいの良心しかない、厚かましくも…する)
have the effrontery to do (ずうずうしくも…する)
have the face to do (厚かましくも…する)
have the front to do (ずうずうしくも…する)
have the gall to do (厚かましくも…する)
have the impudence to do (生意気にも…する)
have the neck to do (…する度胸がある、ずうずうしくも…する)
have the nerve to do (厚かましくも…する、…する勇気がある)
have the temerity to do (厚かましくも…する)
have the guts to do (…する勇気がある)
have the courage to do (…する勇気がある、大胆にも…する)
have the heart to do (…する勇気がる、大胆にも…する)
have the cruelty to do (残酷にも…する)
have the indiscretion to do (無分別にも…する)
have the foolishness to do (愚かにも…する)
have the (good) fortune to do (幸運にも…する)
have the luck to do (幸運にも…する)
have the misfortune to do (不幸にも…する)
have the goodness to do (親切にも…する)
have the kindness to do (親切にも…する)
have the (common) decency to do (…するくらいの礼儀は持ち合わせている)
have the (good) grace to do (…する礼儀はわきまえている)
have the honor to do (光栄にも…する)
have the pleasure to do (…する光栄に浴する)
have the wisdom to do (賢明にも…する) など

これらの表現では、原則として the を使います。共通の特徴は、「何たる厚かましさ」、「何たる生意気さ」、「何たる幸運」、「何たる不幸」、「何たる光栄」など、ある行為・出来事に対して、感情を込めた評価を行っているということです。to 不定詞の同格について、ドイツ語学者の関口存男氏は『定冠詞』(三修社)の中で次のように述べています。もちろん、ドイツ語についてですが、英語にも当てはまることだと思います。「主語対述語の関係」というのは、要するに「同格の関係」だと理解して下さい。
「 "不定詞と先行詞との間に主語対述語の関係を設けたという意思表示として先行詞に冠詞を附するのである"(中略)。此の "関係を設けたのだという意思表示" というやつは、"自然にそんな関係が生じてくる" というのとは違って、わざわざ企んでやることなのであるから、露骨であり、念入りであるのがその顕著な兆候で、此の "入念" 或いは "念力" という眼に見えない現象がつまり、"定冠詞" となって顕れるのである」
これは、上記(28)の the ability to communicate with dogs などの通例の to 不定詞の同格に関する説明なのですが、ここで扱っている「厚かましくも…」といった感情的な評価の場合、関口氏の言う「入念」、「念力」がより一層加わっていると考えられますから、ほとんど機械的に定冠詞を使うことになります。この「入念さ」は、to 不定詞の場合に限らず、あちこちに表れ、結局、the を使うと「強調的」といった説明につながります。例えば、『ジーニアス英和辞典』に次のような記述があります。

(36)I have a (or the) feeling of being a stranger here = I have a (or the) feeling (that) I am a stranger here.(ここは初めてのような気がする)(◆ the の方が強調的)

つまり、the が用いられることで、明確で、具体的なイメージを生み出すわけで、それが「強調されている」という感触を生み出すことになります。しかし、注意すべきことは、今述べている「the による強調」とは、具体性の強調、つまり「どの〜か」の強調なのであり、状況によっては、a の方が強調的にもなります。例えば、前々回の「覚え書(11)」に引用した次のような文があります。

(37)I broke the window that my elder brother broke the week before.(私は、兄が前の週に割った窓を割った)『英語のなかの複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(38)I broke a window that my elder brother broke the week before.(同上)

この(38)は、「どの〜」という「具体性の強調」ではなく、「どんな〜」という「形容の強調」、「特殊性の強調」であるわけです。また、同格で the が使われることが多い名詞に a が使われた場合、それだけで「どんな〜」を強調する力は強くなり、a と使われることが多い名詞に the が用いられれば、「どの〜」という具体性を強調する力が大きくなります。もちろん、その逆も真であると考えられます。つまり、the が使われることが多い名詞に the を使い、a と使われることが多い名詞に a を使った場合、強調的な感じはしないということです。このことは、同格に限らず、あらゆる場合に起こってきます。

 今回で、文脈や形容詞的な要素による修飾関係と冠詞の話はひとまず終わり、次回から、いわゆる総称の定冠詞とか総称の不定冠詞と呼ばれている場合を扱う予定です。

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