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目次

<冠詞に関する覚え書>
通念の定冠詞

第16話 数と代名詞



= 覚え書(16) =

目的語・補語に総称の不定冠詞が用いられる場合(複数形が不自然)

今回は、数の関連性によって、目的語や補語に不定冠詞が用いられるケースを主に扱います。具体的に言うと、主語に不定冠詞付きの名詞や単数の名詞を使ったので、それと連動するように目的語や補語も「一つ」となる場合です。

(1a)A buffalo resembles a bull.(水牛は雄牛に似ている) 『現代英文法辞典』(三省堂)
(1b)? A buffalo resembles bulls.(同上)
(2a)But as soon as the lights went out I walked like a crab.(しかし、明かりが消えるとすぐに、私はカニのように歩いた)
『http://www.anarchive.org/maureen.htm』
(2b)They look like crabs, they walk like crabs, they eat like crabs, but they are actually barnacles.(それらはカニのように見え、カニのように歩き、カニのように食べるが、実際は、フジツボである)
『http://cypressash.blogspot.com/』
(3)A mule is a cross between a horse and a donkey.(ラバは馬とロバの交配種である)『例解現代英語冠詞辞典』(大修館書店)

以上は、「水牛=雄牛」、「私=カニ」、「ラバ=交配種」というように「A は B である」という意識が根底にある例です。つまり、He is a teacher. の a teacher と類似しています。(3)の a horse と a donkey についても、a mule という不定冠詞を使ったことから、単数形を用いることになります。

単数か複数か

 数の関連性は、別に「A = B」という関係に限られるわけではありません。

(4a)A giraffe has a long neck.(キリンの首は長い)『英語の中の複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(4b)Giraffes have long necks.(同上)
(4c)The giraffe has a long neck.(同上)
(5a)A cowboy has a gun.(カーボーイは銃を持っている)『現代英文法辞典』(三省堂)
(5b)?× A cowboy has the gun.(同上)
(6)A rabbit lives in a hole.(ウサギは穴に住む)『新英文法選書 第6巻 名詞句の限定表現』(大修館書店)
(7)John drives a truck.(ジョンはトラックを運転する)『同上』
(8)At least he did get to drive trucks; he was sent to Iraq with his unit last September, and he drives trucks there, so he's constantly in danger.(少なくとも彼は実際にトラックを運転するようになった。そして彼は昨年の9月に彼の部隊と共にイラクに派遣され、そこでトラックを運転しているので、絶えず危険にさらされている)
『http://www.mfso.org/Pratt.html』
(9)A gopher digs a tunnel.(ホリネズミはトンネルを掘る)『同上』

(4)については、(4b)が最も普通の表現で、次に(4a)が自然で、いかにも「キリンの属性・特徴」を述べているという感じがします。(4c)は総称の定冠詞を使った表現ですが、堅苦しい感じがします。なお、Giraffes have a long neck. は普通の表現ではなく、long を特に強調したいような特殊な状況でしか用いられないと思われます。(5a)の a gun を guns とすると、「複数の銃を持つ」ということを意識的に述べていることになります。(5b)の the gun は具体的な「その銃」と解釈されます。(6)は、holes にすると「それぞれのウサギが複数の穴に住む」ことを述べている感じがします。また、Rabbits live in holes. は自然であり、Rabbits live in a hole. は「複数のウサギが一つの穴に住む」と解釈されるのが普通です。(7)は trucks とすると、「運転するトラックが複数である」ことになります。その例が(8)であり、軍の中でいろいろなトラックを運転することが示唆されています。(9)は、数を合わせて、a tunnel を使う方が一般的であるようですが、tunnels でも可能です。これは、「掘る」という行為を、一時点の一回の行動と考えれば a tunnel となり、反復される行動として捉えれば tunnels が選ばれることになります。これは、前回前々回のコラムで引用した、A beaver builds a dam. と A beaver builds dams. という文についても同様です。また、× He smokes a cigarette. と He smokes cigarettes. との違いにも触れておく必要があるでしょう。まず、(6)や(7)のような「穴に住む」、「トラックを運転する」という場合の「穴」や「トラック」は、一定期間に渡って「ある一つの同じ穴に住む」、「ある一台の同じトラックを運転する」とみなすのが自然でしょうから、a hole, a truck が用いられます。一方、「タバコ」は毎回吸う一本一本のタバコは異なるわけですから、「同じ一本のタバコ」を示す可能性のある a cigarette は使わないということになります。もちろん、前回述べたように、例えば、I smoke a cigarette after dinner. のように「一回、一時点」を意識させる表現があれば、自然な表現になります。この「穴」、「トラック」と「タバコ」との、ある意味で中間にあるのが「トンネル」や「ダム」です。「穴」や「トラック」ほど「1つ」が意識されず、また「タバコ」ほど「複数」であることが意識されないということです。ただ、気をつけなければならないのは、a gopher と a beaver を複数形にした場合です。「キリンの首」や「ウサギの穴」の場合と同じで、Gophers dig a tunnel. や Beavers build a dam. という複数と単数の組み合わせは不自然に響きます。主語が複数になることで、複数の「トンネル」と「ダム」が強く意識されるからです。

比較および対比

 次の文のように、比較や対比を表す場合も、数を合わせるのが自然です。

(10a)A restaurant is more difficult to manage than a grocery store.(レストランは雑貨店を経営するより難しい)『英語の中の複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(10b)Restaurants are more difficult to manage than grocery stores.(同上)
(11a)A movie is different from a stage play.(映画は演劇とは違う)『同上』
(11b)Movies are different from stage plays.(同上)
(12a)An ear is more susceptible to frostbite than a finger.(耳は指より凍傷にやられやすい)『同上』
(12b)Ears are more susceptible to frostbite than fingers.(同上)
(12c)The ear is more susceptible to frostbite than the finger.(同上)
(12d)? The ears are more susceptible to frostbite than the fingers.(同上)

定冠詞を使った(12c)は、堅苦しく、医療機関で交わされている言葉のように響きます。また、(12d)は、専門書などの非常に特殊な場合を除くと、具体的な「それらの耳」、「それらの指」を指していると解釈されます。

上位概念および集合概念

 さらに、次のような場合があります。

(13a)The lion is called the king of beasts.(ライオンは百獣の王と言われています)『英語教育 2002年11月号』(大修館書店)
(13b)? A lion is called the king of beasts.(同上)
(13c)? Lions are called the king of beasts.(同上)
(13d)× The lions are called the king of beasts.(同上)
(14a)The ostrich is the largest bird in the world.(ダチョウは世界で一番大きな鳥である)『同上』
(14b)? An ostrich is the largest bird in the world.(同上)
(14c)? Ostriches are the largest bird in the world.(同上)
(14d)Ostriches are the largest birds in the world.(同上)
(15)Ostriches are an endangered species.(ダチョウは絶滅の危機に瀕している種である)『同上』
(16)Ostriches are now an important food source.(ダチョウは今や重要な食糧源である)『同上』

(13b)の a lion と(14b)の an ostrich は、それぞれ「ある特定のライオン・ダチョウ」を意味する可能性があるために避けられる傾向にあります。(13c)と(14c)は主語と補語の数が一致しないので、このような表現も避けられることが多いと言えます。(13d)は「それらのライオン」と解釈されるのが普通であり、また、数も一致していませんから、用いられません。(15)と(16)は文法的な数は一致していませんが、species, food source という語が「種」、「食糧源」という集合的な概念を表していますから、複数形の名詞が主語であっても、全く自然な表現です。

総称の不定冠詞と代名詞

 では次に、代名詞との関連です。

(17)I like dogs. They are faithful animals.(私は犬が好きだ。犬は忠実な動物だ)『英語教育 2002年9月号』(大修館書店)
(18)A dog is a faithful animal. It [= A dog] is loved by many people.(犬は忠実な動物であり、多くの人々に愛されている)『英語教育 2003年7月号』(大修館書店)
(19)What is a panda like? − It [= A panda] is like a bear, but it eats bamboo.(パンダはどのようなものですか。それはクマに似ていますが、竹を食べます)『英語教育 2003年10月号』(大修館書店)
(20)What is a parasol for? − It's [= A parasol is] used to block the sun.(パラソルは何のためにあるのですか。それは太陽の光を遮るために使われます)『同上』
(21)What is a parasol for? − We use it [= a parasol] for shade.(パラソルは何のためにあるのですか。それは日陰を作るために使います)『同上』
(22)What is a parasol for? − We can use it to protect your skin.(パラソルは何のためにあるのですか。肌を保護するために使うことができます)『同上』
(23)× What is a parasol for? − One is used in the sun.(パラソルは何のためにあるのですか。日向で使われます) 『同上』

以上の(18)から(23)は総称の不定冠詞ですが、それを総称の意味のままで受ける場合、代名詞は it を使います。または、不定冠詞+名詞を繰り返します。一方、(23)のように one を使うと、具体的な「一つの…」のことになってしまいます。また、the 名詞で受けることはできません。代名詞が可能で、the 名詞が不可能であるのは、定冠詞の方が、代名詞よりも特定のものを指す力が強く、具体的な「その…」を意味すると解釈されるからだと考えられます。

(24)What is a black hole? A black hole is an old star that has run out of fuel.(ブラックホールとは何か。ブラックホールとは燃料が切れた、年老いた星である)
『http://www.superioressays.com/DisplayPaper.php?PaperID=293』
(25)What is a black hole? It is a "hole" in space that has tremendous gravitational pull and any thing that gets near it is sucked in, never to return. Scientists do not really know what is in a black hole, but I think it is cyber space.(ブラックホールとは何か。それは、途方もない引力を持つ宇宙の「穴」であり、それに接近するどんなものも吸い込まれ、決して戻ってくることはない。科学者は、ブラックホールの中に何があるのか完全に分かっているわけではないが、それはサイバースペースであると私は考えている)
『http://gouchercenter.edu/certificate/vohrer.htm』

What is a black hole? The black hole is … のようにすると、通例、具体的な「そのブラックホールは…」という意味になり、総称の意味にはなりません。前の表現をそのまま繰り返して、A black hole is … とするか、It is … とするのが普通です。

総称の名詞と総称以外の名詞

 一方、次のような場合には it や them などは使えません。上記の例では、総称の名詞を総称の意味のまま受けています。それに対して、下記の(26)から(29)は、前文に含まれる名詞が総称ではなく、不特定のものを指しています。また、(30)と(31)では、前の文の a panda は総称ですが、後の文ではその名詞が総称の意味で使われていないために、it や them で受けることはできません。

(26)× Did you ever see pagodas? − Yes, I saw them.(あなたはパゴダを見たことがありますか。はい、見たことがあります)『英語教育 2002年9月号』(大修館書店)
(27)Have you ever seen a pagoda? − Yes, I saw one (or some, many).(あなたはパゴダを見たことがありますか。はい、一つ(幾つか、たくさん)見たことがあります)『英語教育 2002年9月号』(大修館書店)
(28)Are there lions in those hills? − Yes, I saw some (×ones) on the way over.(あれらの丘にライオンはいますか。はい、来る途中で何頭か見ました)『同上』
(29)Have you ever seen a panda? − No, I haven't seen one [= a panda]. (あなたはパンダを見たことがありますか。いいえ、ありません)『英語教育 2003年7月号』(大修館書店)
(30)What is a panda like? − I have never seen one; so I cannot tell what it [= a panda] is like.(パンダはどのようなものですか。私は見たことがありません。だから、パンダがどんなものか分かりません)『英語教育 2003年10月号』(大修館書店)
(31)What is a panda like? − I saw some [= some pandas] long time ago, and all I can tell is that they were cute.(パンダはどのようなものですか。ずっと前に何頭か見たことがありますが、私に言えることは、それらがかわいかった、ということだけです)『英語教育 2003年7月号』(大修館書店)

(27)の one は one pagoda(one は数詞であり、強強勢)または a pagoda(one は「不定冠詞+可算名詞」であり、弱強勢)のことで、「一つのパゴダ」または「(具体的な)あるパゴダ」を意味します。後者の one は、不定冠詞の独立形とか独立用法の不定冠詞と呼ばれることがあり、不特定の単数可算名詞を表します。(29)と(30)の one も不定冠詞の独立形の one であり、「不定冠詞+可算名詞」を表します(one の詳細については、『英独仏 冠詞雑感』の「直接規定 (1)」における(O-I)から(O-V)の説明を参照)。これを it にすると特定の「そのパンダ」のことになります。それに続く「パンダがどんなものか」の部分は、総称的な意味ですから、it を使っています。(31)の they は前にある some、つまり、具体的な「何頭かのパンダ」を指しています。なお、次のような場合は、総称の名詞を総称の名詞として受けているので、them を使います。

(32)"Do you like apples?" "Yes, I like them (×ones)."(「リンゴは好きですか。」「ええ、好きです」)『ロイヤル英文法』(旺文社)

仮構性の含みと代名詞

 次に仮構性の含みがある場合です。

(33)Melinda wants to buy a motorcycle. She will buy it tomorrow.(Melinda はあるオートバイを買いたいと思っている。彼女は明日それを買うだろう)『現代英文法辞典』(三省堂)
(34)Melinda wants to buy a motorcycle. She will buy one tomorrow.(Melinda はオートバイを買いたいと思っている。彼女は明日買うだろう)『同上』
(35)I have lost my watch and have to buy one (= a watch).(私は時計をなくしたので、買わなければならない)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(36)I don't have a pen. Can you lend me one (= a pen)?(ペンを持っていないんだ。貸してくれないか)『同上』
(37)When the telephone was invented and was ready to use, hardly anybody cared to install one.(電話が発明されて実用化されたとき、電話をひこうという人はほとんどいなかった)『英文法解説』(金子書房)
(38)I'd like a cup of coffee.− Pour yourself one (or some).(コーヒーを一杯(少し)飲みたい。自分で入れて下さい)『英語教育 2002年9月号』(大修館書店)

(33)は、仮構性の含みはなく、特定の「あるオートバイ」の場合で、it で受けています。(34)は「どのオートバイ」か、具体的には決まっていない場合です。(35)から(38)も不特定の「一つの時計、ペン、電話」、「一杯のコーヒー」のことですから、it や the 名詞で受けることはできません。なお、(37)の the telephone は総称です。

(39)Bill has a car. It (or The car, Bill's car) is black.(Bill は車を持っている。それは(その車は、Bill の車は)黒だ)『http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/discourse.pdf』
(40)× Bill doesn't have a car. It (or The car, Bill's car) is black.(Bill は車を持っていない。それは(その車は、Bill の車は)黒だ)『同上』
(41)× You must write a letter to your parents. They are expecting the letter.(あなたは両親に手紙を書かなければならない。彼らはその手紙を待っている)『同上』
(42)× Bill can make a kite. The kite has a long string.(Bill は凧を作ることができる。その凧には長いひもが付いている)『同上』
(43)× Mary expects to have a baby. The baby's name is Sue.(Mary は(いずれ)赤ちゃんを持つことだろう。その赤ちゃんの名前は Sue である)『同上』

(39)は特定の「車」を受けています。(40)から(43)が仮構性の含みがある場合です。(40)に関しては、「車」は存在しませんから(否定を伴う文脈)、it や the car で受けることはできません。(41)〜(43)の文は、それぞれ前の文が仮構的な内容(must, can, expect によるモダリティ(法性)を伴う文脈)であるのに対し、後の文が現実的な(モダリティを伴わない)内容であるため、連続性がなく、仮に設定された「不定冠詞+名詞」を次の文で the 名詞 や it などで受けることはできません。例えば(41)の場合、They may be expecting the letter.(彼らはその手紙を待っているかもしれない)とすれば、モダリティが継続するので容認されます。また、現実的な内容にするなら、They are expecting a letter (from him).(彼らは(彼からの)手紙を待っている)などとする必要があります。

仮構性の継続

 しかし、次のように、仮構的な内容が続く場合は、the 名詞 や it で受けることになります。

(44)You must write a letter to your parents and mail the letter right away.(あなたは両親に手紙を書き、その手紙をすぐに投函しなければならない)
『http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/discourse.pdf』
(45)John wants to catch a fish and eat it for supper.(John は魚を捕まえて、夕食にそれを食べたいと思っている)『同上』
(46)You must write a letter to your parents. It has to be sent by airmail. The letter must get there by tomorrow.(あなたは両親に手紙を書かなければならない。それは航空便で送らなければならない。その手紙は明日までにそこに着く必要がある)『同上』
(47)Suppose Mary had a car. She takes me to work in it. I drive the car too.(Mary が車を持っていると仮定しよう。彼女はそれで私を仕事場に送っていく。私もその車を運転する)『同上』
(48)The best way to learn a foreign language is to live among its people.(外国語を習得する最良の方法は、その外国語を話す人たちの中で暮らすことである)『英語教育 2003年10月号』(大修館書店)
(49)If a fly is flying in a moving train, how fast is it flying?(ハエが動いている電車の中で飛んでいる場合、そのハエはどのような速度で飛んでいるのですか)『英語教育 2003年11月号』(大修館書店)

まとめ

 以上をまとめると次のようになります。まず、(33)や(39)のように「どの…」であるかが決まっており、その特定の名詞を受けるときは、it か the 名詞 を使います。さらに、(18)から(22)のように総称の名詞を総称の意味のままで受けるときは、it か a 名詞 を使います。(27)〜(29)および(34)〜(38)のように不特定の名詞を不特定のまま受けるときは it, them, the 名詞 などは使いません。仮構性の含みがある場合は、仮に設定されたその状況が解除されておらず、その状況が前提として生きているときには、it や the 名詞 が用いられ((44)〜(49))、そうでないときには、it や the 名詞 は使えない((40)〜(43))ということです。

単数の名詞を代名詞の複数形で受ける場合

 では次に、代名詞の数の問題です。

(50)The tuatara was a scientific enigma until last century. Before 1867, some experts believed it was a lizard.(ムカシトカゲは19世紀までは科学上の謎だった。1867年以前には、トカゲだと信じる専門家もいた)『例解現代英語冠詞辞典』(大修館書店)
(51)Says Mark Marks, a research biologist at the South African Museum in Cape Town, "I believe the white shark to be cognizant and aware. I have seen some of them make decisions and change behaviours to suit circumstances."(ケープタウンの南ア博物館の生物学研究者である Mark Marks は次のように言う。「私の確信ですが、ホホジロザメは認識力・理解力があります。それらの何頭かが、状況に適応するように決定し行動を変えたのを見たことがあります」と)『同上』
(52)Even the humpback's ordinary qualities have a touch of the fantastic about them.(ザトウクジラの日常的な特徴さえも彼らの物珍しさを少しばかり示している)『同上』

(50)は総称の定冠詞を用いた the tuatara を it で受けており、問題ありません。しかし、(51)の the white shark も総称ですが、them という複数で受けています。(52)も同様に them で受けています。総称の定冠詞の場合、このように複数の them で受けることがあります。また、総称の不定冠詞の場合も複数の代名詞で受けることがありますが、これは、someone や somebody を they で受けるのに似た感覚であろうと思います。前回挙げた例ですが、もう一度示しておきます。

(53)Montaigne believed a person to be fully formed by the time they were twenty.(モンテーニュは、人は20歳になるまでに完全に形成されると信じていた)
『http://morgannels.org/gnosis/2003/10/07.html』

総称の定冠詞も不定冠詞も複数の代名詞で受ける場合は、特定の「その…」、「ある一つの…」と誤解されない文脈である必要があります。

 では最後に、内容から考えて、代名詞の複数形を使わざるを得ない場合です。

(54a)× Give me a cigarette, please. I have run out of it.(タバコを一本下さい。切らしてしまったんで)『英語参考書の誤りを正す』(大修館書店)
(54b)Give me a cigarette, please. I have run out of them.(同上)
(55a)× He admired an antique store because it is rare in his neighborhood.(近所にはほとんどないので、彼は骨董店をことのほかありがたがった)『英誤を診る』(進学研究社)
(55b)He admired an antique store because they are rare in his neighborhood.(同上)
(56a)Coffee shops, however, are difficult to find when you are looking for them. Normally they appear all over the place − this time though they seemed to have disappeared off the face of the earth. ((冷たいコーヒーを飲もうと私は喫茶店を探した。)しかし探しているときにはなかなか見つからないものだ。普段はやたらと目につくが、不思議なことに、そういうときにはまるで町から消えてしまったように無い)『クニヒロの入試の英作36景』(南雲堂)
(56b)Yet it would seem impossible to find a place when you are looking for one. Amazingly, they seem to be everywhere normally, but when you are actually looking for one, it is as if they had all disappeared from the town.(同上)
(56c)I can never find a coffee shop when I'm looking for one. Ordinarily I see them all over the place. But strangely enough, when I want a glass of iced coffee, there's not a coffee shop to be found.(同上)
(56d)But I can never find one when I'm looking for one. Ordinarily, they are all over the place, but wouldn't you know it, when you really need one, they all seem to have vanished.(同上)
(56e)But we can seldom find one (or it's scarcely to be found) when we're looking for it. Though we usually can see a lot of coffee shops, strangely enough, we cannot find any (or one). It's as if they've disappeared.(同上)

(54a)と(55a)の it は特定の「そのタバコ」、「その骨董店」を意味することになりますから、不可です。(56a)は最初の coffee shops を they, them で受けており、特に問題ありません。(56b)から(56d)では、それぞれ they が使われていますが、前に複数形の名詞はありません。いずれも単数の代名詞では特定の喫茶店を指すことになりますから、複数の代名詞を使うことになります。これらの they は「the + 名詞の複数形」に置き換えることはできず、無冠詞の複数名詞に相当します。例えば、(54a)は I have run out of cigarettes. と同じです。

 次回も、通念の定冠詞を扱う予定です。

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