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<冠詞に関する覚え書>
通念の定冠詞

第19話 遍在通念
(交通機関・通信手段および時・自然現象を中心に)




= 覚え書(19) =

 前回は、施設・場所に関連する名詞を中心に扱いましたが、今回は、交通機関や通信手段、さらに、時、自然現象を表す名詞を扱います。これらの名詞の中にも通念化するものがあります。

遍在通念(8)(交通機関)

まず、

subway(地下鉄)、underground(地下鉄)、tube(地下鉄)、metro(地下鉄)、monorail(モノレール)、railroad(鉄道)、railway(鉄道)など

です。これらは非常に通念化しやすく、if you take the monorail(モノレールに乗っていく場合)などと言うとき、普通、the を使い、a は用いません。一般的に、交通機関の場合、個々の具体的な乗物ではなく、組織的な輸送方法としての機関やシステムを述べる際に通念の定冠詞が用いられます。これは the police(警察)や the fire department(消防)と類似しています。subway や monorail は具体的な個々の乗物ではなく、組織やシステムを表すことが多く、the が用いられることになります。

(1)If you take the Long Island Railroad from Jamaica into Penn Station, it's $6.75, and if you take the subway from Howard Beach, it's $2.(ロングアイランド鉄道でジャマイカからペン駅へ行く場合、6.75ドルであり、ハワードビーチから地下鉄で行く場合、2ドルである)
『http://www.cnn.com/2003/TRAVEL/ADVISOR/12/16/hln.adviser.trains/』
(2)If you take the underground, the Baker Street station has a statue of Sherlock Holmes.(地下鉄に乗って行くと、ベーカーストリート駅にシャーロック・ホームズの像がある)
『http://www.travelforkids.com/Funtodo/England/londoncity/regentspark.htm』
(3)In American and Canadian English, a subway is a mass transit system with trains that operate underground; also known as a metro or rapid transit system; also known as the underground in British English, e.g. London Underground.(米語とカナダ英語では、subway は地下を走行する電車の大量輸送システムである。メトロまたは高速輸送システムとしても知られている。さらにイギリス英語では、London Underground(ロンドンの地下鉄)のように underground と呼ばれる)
『http://www.fact-index.com/s/su/subway.html』

(3)の例に見られるように、subway と underground では冠詞の用法が少し異なり、その性質や特徴を述べる場合、subway には総称の不定冠詞が用いられることもありますが、underground の方は the を使うことが多いと言えます。これは、本来、ロンドンの地下鉄を指していたので、特定の地下鉄を示すものとして the と使われ、それが慣習化しているからだと考えられます。metro も同様の傾向があり、通例、the と使われます(上の例では a が使われていますが)。例えば、『Collins Cobuild』の定義は次のようになっています。

(4)The metro is the underground railway system in some cities, for example in Paris.(メトロは幾つかの都市、例えばパリの地下鉄システムである)

つまり、metro も underground も特定の都市の地下鉄を意識している場合に使われることが多いと言えます。

遍在通念(9)(交通機関)

次に、train, bus などの次のような名詞は、if you take the (or a) train(電車で行くならば)のような場合には the も a も大体同じ程度用いられます。通念として交通機関を挙げる場合は the、仮構性の含みが意識されたり、単なる初めての概念として紹介する場合は a が用いられることになります。the の場合は、他の交通機関との対比が感じられることがあります。例えば、「バスではなく電車」という含みです。a の場合は、「複数の電車の中のある電車」という含みが多少感じられます。また、「電車に乗るのが好きだ」というような場合は、the が普通です。特にいろいろな種類を強調するときには無冠詞複数が用いられます。この種の名詞には次のようなものがあります。

train(列車・電車) bus(バス) plane(飛行機) airplane(飛行機) ship(船)  boat(船) ferry(フェリーボート) tram(路面電車)など

(5)Mary took the (or a) bus to London.(Mary はロンドンへバスで行った)『CGEL』
(6)Mary took the (or a) train to London.(Mary はロンドンへ列車で行った)『同上』
(7)If you take the train, allow for extra time.(電車で行くなら、時間に余裕を持っておきなさい)
『http://www.usatoday.com/travel/destinations/cityguides/spotlight/2004-07-11-boston-traffic-tips_x.htm』
(8)If you take a train in Italy, the Italians sitting next to you will consider you their traveling companion and will be eager to know all about your life.(イタリアで列車に乗ると、あなたの隣に座ったイタリア人たちはあなたを旅仲間だとみなし、あなたのことをあれこれ知りたがるでしょう)
『http://www.putnam.k12.ga.us/pcms/teachers/wrakosnik/notesworksheets/ CriticalThinkingSkills12.pdf』
(9)I love taking the bus. A bus journey for me is like all my Christmases rolled into one!(私はバスに乗るのが大好きだ。私にとってのバス旅行は、一生分のクリスマスが1度に来たようなものだ)
『http://www.volunteeredinburgh.org.uk/news/Newsletters/july04/default.htm』
(10)I love taking the ferry to work because it gives me time to wake up in the morning, and time to wind down in the afternoon going home.(私はフェリーで仕事に行くのがとても好きだ。なぜなら、朝、目を覚ますための時間が得られ、午後に家へ帰る際には緊張をほぐす時間が得られるからだ)
『http://www.virginiadot.org/comtravel/how-virginians-ferry.asp』
(11)If you offer your seat to someone on the train they figure you must be from out of town.(もしあなたが電車の中で誰かに席を譲った場合、人々は、あなたはこの町の人ではないと考える)
『http://www.cjnetworks.com/~cubsfan/places/boston.html』
(12)This is also Harry Potter's first impression of George when they met on the train.(これはまた、列車で出会ったときの Harry Potter の George に対する第一印象である)
『http://www.hp-lexicon.org/wizards/george.html』
(13)I met a friend on a train one night who was an aeronautical engineering student.(私はある夜電車の中で、航空工学科の学生である友だちに出会った)
『http://www.ewh.ieee.org/r5/fort_worth/sig0898.html』

通念化しにくい名詞(2)

一方、通例、通念化しない乗物を表す名詞があります。組織化された輸送機関とは言えない名詞です。

car(車) taxi(タクシー) cab(タクシー) bicycle(自転車) motorcycle(バイク) ambulance(救急車) police car(パトカー) helicopter(ヘリコプター)など

例えば、if you take the taxi と言うと、特定のタクシーを指し、「そのタクシーで行くならば」という意味になります。

(14)If you take a taxi, limousine, or shuttle, please ask them to drop you off at the Duke Chapel or West Campus bus stop.(タクシー、リムジンバス、シャトルバスを利用する場合、Duke Chapel か West Campus の停留所で降ろしてもらうように頼んで下さい)
『http://www.studentaffairs.duke.edu/location/』
(15)I hate taking taxis. I hate having to take taxis, but better than walking everywhere.(タクシーに乗るのは嫌いだ。タクシーに乗らなければならないのは嫌だが、全ての場所に歩いて行くよりはましだ)
『http://www.stat.duke.edu/~ervance/waIIemails.html』
(16)If I call an ambulance, what should I say?(救急車を呼ぶ場合、何を告げるべきか)
『http://www.mass.gov/dph/fch/emsc/emredpar.htm』

無冠詞(熟語)

 さらに、これは有名な現象ですが、前置詞の by と共に「…で」という交通手段を表す場合、完全に熟語化し、無冠詞になる表現があります。

by subway(地下鉄で) by underground(地下鉄で) by tube(地下鉄で) by monorail(モノレールで) by train(列車で) by (air)plane(飛行機で) by ship(船で) by boat(船で) by ferry(フェリーで) by bus(バスで) by tram(電車で) by express (train, bus, boat)(急行で) by helicopter(ヘリコプターで) by car(車で) by taxi(タクシーで) by cab(タクシーで) by bicycle(自転車で) by motorcycle(バイクで) by ambulance(救急車で)など

これらの表現も、修飾語が付く場合は、冠詞が付きます。

by the 7:10 train(7時10分の列車で) by the last train(終電車で) by an early train(早い列車で)

他に by land(陸路で)、by air(空路で)、by sea(海路で)、さらに on を使うものとして、on foot(徒歩で)、on horseback(馬で)などがあります。

遍在通念(10)(通信手段)

 では次に、通信・伝達手段です。これも交通手段と同じように組織化された通信システムとして述べる場合は、通念の定冠詞を用います。『Collins Cobuild』の定義を見てみましょう。

(17)The mail is the public service or system by which letters and parcels are collected ad delivered.(郵便とは、手紙や小包が集配される公共サービスまたは公共制度である)
(18)The telephone is an electrical system of communication that you use to talk directly to someone else in a different place.(電話とは、別の場所にいる他の誰かと直接話をするために使う意思伝達のための電気システムである)

 それに対して、個々の郵便物や電話機を述べるときは、通念の定冠詞は使いません。『Collins Cobuild』の定義です。

(19)You can refer to letters and parcels that are delivered to you as mail.(配達される手紙や小包を郵便(物)と呼ぶことができる)
(20)A telephone is the piece of equipment that you use when you talk to someone by telephone.(電話機は、電話で誰かと話をするときに使う装置である)
(21)A newspaper is a publication consisting of a number of large sheets of folded paper, on which news, advertisements, and other information is printed.(新聞とは、折り畳まれた大きな紙面数ページから成る出版物であり、そこにはニュース、広告、その他の情報が印刷されている)
(22)Newspaper consists of pieces of old newspapers, especially when they are being used for another purpose such as wrapping things up.(新聞紙とは、特に物を包むような他の目的に使われているときなどの、数枚の古い新聞のことを言う)

(21)は総称の不定冠詞です。新聞とはどういうものかを説明しています。(22)は物質名詞としての新聞紙であり、paper(紙)と同じ扱いになっています。しかし、次のようにメディア、通信媒体としての意識が強い場合、通念の定冠詞を使うのが普通です。

(23)"You should always read the newspaper before you go to bed," implored Miss Hearn who taught social studies for decades at the same school.(「ベッドへ入る前にいつも新聞を読むべきだ」と同じ学校で数十年間社会科を教えていた Miss Hearn は切々と訴えた)
『http://www.oais.org/docs/docs/RWP99-00.doc』

(23)の the を a にすると特定の「ある新聞」の意味に解釈され、newspapers とすると「複数の新聞」を読むように言っていることになります。

無冠詞(熟語)

 通信手段の場合も、by … という表現では無冠詞になります。

by post(郵便で) by mail(郵便で) by letter(手紙で) by express (mail or post)(速達で) by registered mail (or post)(書留で) by air (or airmail)(航空便で) by (tele)phone(電話で) by radio(ラジオで、無線で) by fax(ファックスで) by computer(コンピュータで) by e-mail(電子メールで) by telegram(電報で) by telegraph(電報で) by wire(電報で)など

 通信・伝達手段は on や over でも表現されるものがありますが、その場合は通念の定冠詞を使います。ただ、テレビは、the を付けるとテレビ受像器の意味に誤解されるため、現在では無冠詞になります。

on (or over) the radio(ラジオで) on (or over) the (tele)phone(電話で) on (or over) the Internet(インターネットで) on (or over) the computer(コンピュータで) on the piano(ピアノで) on the violin(バイオリンで) on TV(テレビで)など
(cf. turn on the TV(テレビをつける))

 以上、交通機関、通信・伝達手段を見てきましたが、最後の「ピアノ、バイオリン」などの楽器になると、通信手段とは言えませんし、これらは遍在通念と呼べるかどうか疑問になってきます。交通手段なども含めて、いずれ詳しく述べる「対比・対照による通念の定冠詞」と関係があります。この通念の定冠詞は、「冠詞に関する覚え書 (14)」で述べた、上位の類概念が意識されている場合にその下位概念に付ける定冠詞と基本的に同じであり、特定の選択肢の中からどれかを選択したり、指し示す感覚を多少伴っています。

遍在通念(11)(時)

 ではここで、通念の定冠詞が用いられる別の種類の名詞に話を移します。今度は、時に関係する言葉です。『Collins Cobuild』の定義から見てみましょう。

(24)The present is the period of time that we are in now and the things that are happening now.(現在とは、私たちが今いる時間および今起こっている事柄である)
(25)The past is the time before the present, and the things that have happened.(過去とは、現在よりも前の時、および既に起こった事柄である)
(26)The future is the period of time that will come after the present, or the things that will happen then.(未来とは、現在の後に続く時間、またはその時に起こる事柄である)
(27)The morning is the part of each day between the time that people usually wake up and noon or lunchtime.(朝とは、各1日で、人々が通常目覚めた時から、正午または昼食時までの時間帯である)
(28)The afternoon is the part of each day which begins at lunchtime and ends at about six o'clock.(午後とは、各1日の中の、昼食時からおよそ6時頃までの時間帯である)
(29)The evening is the time of each day between the end of the afternoon and the time when you go to bed.(晩とは、各1日の中の、午後の終わりから就寝するまでの時間帯である)
(30)The night is the part of each day when the sun has set and it is dark outside, especially the time when people are sleeping.(夜とは、各1日の中で、太陽が沈み、屋外が暗い時間帯、特に人々が眠っている時である)
(31)The night is the period of time between the end of the afternoon and the time that you go to bed, especially the time when you relax before going to bed.(夜とは、午後の終わりから人々が就寝するまでの時間であり、特に人々が就寝する前にくつろぐ時間である)
(32)The daytime is the part of a day between the time when it gets light and the time when it gets dark.(昼間とは、1日の中で、明るくなった時から暗くなる時までの時間帯である)

以上のように、「現在、過去、未来」、「午前、午後、夜(晩)」、「昼間、夜間」を表す語は通念の定冠詞を用いることができます。これらの単語も上で触れたように、対比・対照の定冠詞とも考えられます。the present と言う場合、the past, the future との対比・対照を意識しているとも考えられるわけです。あるいは、「時」という上位概念の下位概念と考えても構いません。ただ、これらの時を表す語は(交通手段や伝達手段を表す語も)、本当に対比しているという意識は非常に弱く、ある種の表現の場合には、習慣的に定冠詞が使われる、あるいは使えると考えるのが適切でしょう。例えば、in や during, for, through といった前置詞の後は、一般的に述べる場合、通念の定冠詞が用いられます。純粋な時の表現以外も挙げておきます。

in the past(過去に) in (the) future(今後、将来) in the morning(朝に、午前中に)  in the early morning(朝早くに) in the late morning(朝遅くに) in the afternoon(午後に) in the evening(夕方に、晩に) in the night(夜に) in the daytime(昼間に) in (the) daylight(昼間に、日向で) in the sunshine(日向で) in the moonlight(月明かりのもとで) in the dark(暗闇で) in the darkness(暗闇で)
during the morning(午前中に) during the afternoon(午後に) during the evening(夕方・晩の間に) during the early evening(宵のうちに) during the night(夜間に) during the day (or the daytime)(昼間に)
for the present(現在、今のところ) for the moment(今のところ) for the time being(今のところ) for the future(今後は、将来のために)
through the night(一晩中)
in the middle of the night(真夜中に) in the middle of the day(真っ昼間に)など

以上は、時間的な幅を表しており、時間の区分が根底にあると考えられます。そのため、対比の意識が本来あり、それが上記のように定冠詞が付いた形でほとんど熟語化していると言えます。in (the) future は、米語とイギリス英語で、多少使い方が異なりますが、「未来のあるときに、将来(sometime in the future)」という意味では通例英米とも in the future が用いられ、「これからは、今後(from now on)」という意味の場合には、米語では the を付けることが多く、イギリス英語では in future が普通です。なお、in broad day (or broad daylight)(真っ昼間に)、for now(今のところ)のように無冠詞の表現もあります。

また、季節に関しては次の通りで、一般的に米語では the を用いることが多いと言えます。fall は主に米語です。

in (the) winter(冬に) in (the) spring(春に) in (the) summer(夏に) in (the) autumn(秋に) in (the) fall(秋に)
during the winter(冬の間) during the spring(春の間) during the summer(夏の間) during the autumn(秋の間) during the fall(秋の間)など

例えば、during the winter は、特定の「その冬の間」ではなく、一般的な「冬の間」を表す場合にも用いられます。また、during の場合、during winter のように無冠詞になることもありますが、the を用いるのが普通です。

(33)The area's weather is hot during the summer and cold during the winter.(その地域は夏の間は暑く、冬の間は寒い)
『http://www.epinions.com/content_119497395844』

空間的なもの

 さらに、上に挙げた in the dark に類似した例を示しておきます。いずれも、通念の定冠詞が用いられます。

in the shade(日陰で) in the warm(暖かいところで) in the cold(寒いところで) in the air(空中で) in the rain(雨の中で) in the snow(雪の中で) in the wind(風上で) in the distance(遠くに) in the background(背景に)など

無冠詞(熟語)

 上記の前置詞では通念の定冠詞が用いられるのが一般的であるのに対して、at, before, after, till, until, by, since などの前置詞と用いられる場合、無冠詞単数形になるのが普通です。これらの前置詞は、時間的な幅ではなく、時間的な一点を表す語句と用いられるのが原則であり、他の時間帯との対比の意識が生じにくく、時の一点だけに意識が集中する傾向があると考えられます。あるいは、上位概念が想定されていない、とも考えられます。これが通念の定冠詞が用いられない理由の一つでしょう。ただ、現在では、単に熟語として習慣的に無冠詞で使っているというのが正しい語感であろうと思います。

at present(現在) at noon(正午に) at (or by) night(夜に) at midnight(真夜中に) at dawn (or daybreak)(夜明けに) at dusk (or twilight)(夕暮れに) at daylight(明け方に) at sunrise (or sunup)(日の出時に) at sunset (or sundown)(日没時に) at (the) break of day(夜明けに) at (the) break of dawn(夜明けに)
before dawn (or day, daybreak)(夜明け前に) before (the) morning(夜明け前に) before (the) night(夜になる前に) before dark(暗くなる前に)
after dark (or nightfall)(日没後)
till (or until) morning(朝まで) till (or until) midnight(真夜中まで)
by morning(朝までに) by noon(正午までに) by sunset(日の入りまでに) (by) day and night(昼も夜も) by daylight(明るいうちに) by moonlight(月夜に)
since morning(今朝から)など

上の表現の中で、at (the) break of day, at (the) break of dawn は、「at + 無冠詞」という語感と of に特定されると「the 名詞 of …」になるという語感が衝突し、ネイティブスピーカーの語感に迷いが生じています。一般的に break of day は無冠詞が、break of dawn は the を用いることが多いようです。

時の去来

 次に、時の去来を述べる場合、例えば「朝が来る」と述べるような場合です。一般的には無冠詞の形が使われることが多いと言えます。特定の「その朝」ではなく、一般的な「朝」のことを述べる場合にも the が用いられることがありますが、これは詩や文学的な表現に比較的多いと言えます(もちろん、the のない形も用いられます)。無冠詞の場合、ある種の「簡潔さ」、「ぶっきらぼうさ」が感じられるのに対して、通念の定冠詞の場合、「悠長さ」、「典雅さ」、「古風さ」ときに「堅苦しさ」が感じられる傾向があるからです(in the morning のような場合はこのニュアンスは感じられません)。

(34)Along with your child, decide on a special place to put the clothing so it will be easily found in the morning. When morning comes, try to get up early enough to give yourself some time before others wake up.(お子さんと一緒に、洋服を置いておく特別な場所を決め、朝に服が簡単に見つけられるようにして下さい。朝になったとき、他の人が目を覚ます前に自分の時間が持てるように十分早く起きるようにして下さい)
『http://www.cdasandiego.com/parenting%20tips/quality_time.htm』
(35)She finds somewhere to hide and sleep, but when the morning comes and she wants to make her way home, she sees a mysterious stranger carrying a suspicious object.(彼女は隠れて眠る場所を見つけるが、朝が来て、家へ帰りたくなったとき、謎めいた見知らぬ人が怪しげな物を持ち歩いているのを見かける)
『http://www.penguinreaders.com/downloads/0582416795.pdf』
(36)When morning came, they started again.(朝が来ると、彼らは再び出発した)
『http://fairy-tales.classic-literature.co.uk/the-wonderful-wizard-of-oz/ebook-page-59.asp』
(37)So each of the lions went to sleep hungry and when the morning came they were awakened by the sound of the great door being unlocked and in came the king.(そういうわけでライオンはそれぞれ空腹のまま眠りについた。朝が来ると、ライオンたちは大きなドアの鍵が開く音で目覚めた。すると王様が入ってきた)
『http://www.onevisionministry.co.uk/kids/stories/thelioncub.html』
(38)When morning came again, the jungle smelled different.(朝が再びやって来たとき、ジャングルは別のにおいがした)
『http://www.rivetmagazine.org/articles/R7/outfromunder.html』
(39)Is it true that it freezes there whenever night comes except for a few nights every year, and nearly every day it snows a bit, possibly hence the name?(そこは、毎年、数日を除いて夜になると必ず凍りつき、ほとんど毎日多少の雪が降るというのは本当だろうか、ひょっとしたら、だからその名前なのだろうか)
『http://www.epinions.com/content_31446109828』
(40)When the night has come, and the land is dark / And the moon is the only light we will see(夜が来て大地が暗くなるとき / 月だけが見える明かり)『Stand By Me(Ben E. King)』
(41)We live in Michigan and when summer comes, it's hard to come to work when it's so nice outside.(私たちはミシガンに住んでおり、夏が来ると、外がとても気持ちいいので、職場にやって来るのが辛くなります)
『http://www.joanlloyd.com/articles/open.asp?art=700.htm』
(42)As we all know summer goes by way faster than any other season.(誰もが知っているように、夏は他のどの季節よりもずっと速く過ぎ去ってしまう)
『http://wplr.com/about_us/jesse.html』

なお、通念の定冠詞が典雅な古風さを伴うことがあるということは、ことわざで、before the dawn という表現が残っていることからも分かります。

(43)The darkest hour comes before (the) dawn.((ことわざ)一番暗いのは夜明け前)
(44)It's always darkest before (the) dawn.((ことわざ)夜明け前はいつも最も暗い)

 一方、it is … の形で時を表す場合は無冠詞です。

(45)It is truly spring in Virginia.(バージニアは本当に春になった)
『http://www.leapintohealth.org/newslettersapr2004.htm』
(46)It is morning and a warm mist has descended upon the farm.(朝だ。暖かい霧が農場に降りた)
『http://www.cp.duluth.mn.us/~ennyman/thelight.html』

遍在通念(12)(気象)

 では次に、雨、雪、風などの自然現象を表す語です。これらの単語は物質名詞として扱われるときは無冠詞ですが、通念として定冠詞と用いられることがあります。関口存男氏は、ドイツ語に関してですが、「天地に遍在する単一不可分の一威力」と考えられる場合に定冠詞を使うと述べており、遍在通念の特徴を、「何等かの意味に置いて、"絶対化" されて遍在的存在となる傾向を持っており、絶対化されて遍在的存在となるというと、それは何等かの "厳存勢力" として感ぜられる傾向をもっている」と述べています。英語に関しては、やや微妙であり、無冠詞を使う傾向が高まっていると考えられますが、それでもなお、通念の定冠詞が用いられた場合は、多少の「威力」が感じられるように思います。上記の去来を表す the morning, the night なども同様です。一方、英語における、時の去来を表す場合の無冠詞について、関口氏は、「 "異変"(即ち何か報道価値のある事実)を伝える場合の掲称的語局の無冠詞と見るのが妥当である」と述べています。これは、「雨や雪が降る」といった場合も同様であると考えられます。

(47)It occurs when rain first falls upon the freezing road surface where it immediately turns into ice.(それが生じるのは、凍結しかけている路面にまず雨が降り、それが即座に氷に変わるときである)
『http://www.dudley.gov.uk/council/due/enviromanage/streetcare/gritting.htm』
(48)The seed case is coated with a waterproof layer which helps prevent drying out. When the rain eventually falls it acts as a trigger. The seedlings burst out and grow quickly into adult plants.(果皮は、乾燥を防ぐのを助ける耐水性の層で覆われている。最終的に雨が降ると、それが引き金となる。芽が吹き出し、素早く成熟した植物になっていく)
『http://www.tictoc.co.uk/Phase3/Resource/eco.html』
(49)As a child, he could not sleep at night if snow was falling or predicted.(子供の頃、彼は雪が降っていたり、雪の予報が出ていると、夜に眠ることができなかった)
『http://ulysses.atmos.colostate.edu/%7Eodie/snowtxt.html』
(50)Early in the winter, when the snow first falls in the Rocky Mountains, it is so light and dry that snow-shoes can not be used to advantage.(初冬にロッキー山脈に初雪が降るとき、その雪はとても軽く湿気が少ないので、雪靴は役に立たない)
『http://www.isu.edu/~trinmich/00.ar.marcy.app.html』
(51)Waves, or vertical oscillations in horizontal airflows, occur whenever the wind blows.(風が吹くと必ず、波、つまり水平方向の気流に垂直方向の震動が生じる。)
『http://www.fffoundation.co.uk/Gliding.html』
(52)Ridge lift occurs when a wind blows up a slope, or ridge.(リッジリフト(斜面上昇風)が生じるのは、風が斜面や山の背を吹き上がるときである)
『http://www.fffoundation.co.uk/Gliding.html』
(53)Why do regular, wavelike shapes form when the wind blows over the sand on the beach for a long time?(風が長時間浜辺の砂の上を吹くとき、なぜ、規則的な波模様が生じるのだろうか)
『http://www.sciam.com/askexpert_question.cfm?articleID=00052088-C25C-1C71-9EB7809EC588F2D7』
(54)They (= Ripples in sand) arise whenever wind blows strongly enough over a sand surface to entrain grains into the wind.(風が砂面上を十分強く吹き、砂粒を巻き上げるとき必ずそれら(砂の波紋)が生じる)
『http://www.sciam.com/askexpert_question.cfm?articleID=00052088-C25C-1C71-9EB7809EC588F2D7』

(52)の a wind は「一回の風、一吹きの風」です。(51)と(52)、(53)と(54)は同じサイトから引用しており、内容的にも同じように科学的な説明をしている文ですが、定冠詞と無冠詞、さらには不定冠詞まで用いられています。これらの用法が極めて近接しており、ネイティブスピーカーも特に統一して使っているわけではないということがお分かりいただけると思います。

なお、次のような場合は掲称的語局の無冠詞です。

(55)By the way, the weather forecast for London today is rain.(それはそうとして、今日のロンドンの天気予報は雨だ)
『http://www.dailyrepublican.com/letter_to_america.html』

関口氏の言う「掲称的語局」とは、この(55)の rain が典型的な場合であり、引用符で括ったり、コロンを使ってもそれほど違和感がないような場合のことです。つまり is "rain" あるいは is: rain と似た感触があるということです。(45)や(46)の is spring, is morning もほぼ同様です。

 ちなみに、12ヶ月の名前、曜日の名前、歴史、人生、愛、自然、死、平和、戦争、時間、空間、運命、人、科学、哲学、資本主義などといった言葉は、一般的に述べる場合、通念の定冠詞は使わず、無冠詞です(これらはいずれ詳しく述べる予定です)。the を使うと、普通、特定の「その…」を表すことになります。関口氏は、英語の場合、これらは「遍在通念たることを強調して冠詞を省く」と述べています。ドイツ語では(そしてフランス語も)、これらの言葉も、通例、通念の定冠詞を使います。例えば、「人生は短い」はそれぞれ次のように言います。

英語: Life is short.
独語: Das Leben ist kurz.
仏語: La vie est courte.

das と la が定冠詞です。英語の場合、通念が無冠詞化する傾向があり、それが英語の冠詞の分かりにくさにつながっています。従って、冠詞の用法を理解するには、通念化したときに定冠詞とともに使われる傾向にある名詞とその状況を洗い出す必要があるわけです。

 次回も通念の定冠詞を扱う予定です。

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