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目次

<冠詞に関する覚え書>
通念の定冠詞

第21話 特殊通念(病名など特殊な概念を中心に)



= 覚え書(21) =

特殊通念

 前回、通念の定冠詞が使われる名詞としてダンス名を挙げましたが、これはある意味で専門的な用語であるとも考えられます。そこで今回は、定冠詞と使われる特殊な専門用語を扱います。これを、関口存男氏は、「特殊通念」と呼び、『定冠詞』の中で次のように説明しています。
「一般人の語彙の中へ、時々専門用語が乗り込んできて注目を浴びる。(中略)世人の注視の的となる専門用語は直ちに通り言葉となるのである。何等かの程度において通り言葉となって語彙の一角に収録された専門用語を、仮に特殊通念と呼んで、他の非専門的な通念と区別することは、或種の程度までは決して無理ではないと思う。また、そうした一断面を設けないでは完全に説明しきれない定冠詞用法が相当多いのである。」
もちろんこれはドイツ語についての説明であり、英語に完全に当てはまるかどうかという問題があります。私見によると、英語の場合、特殊通念の定冠詞はドイツ語に比べると弱いと言わざるを得ませんが(これは通念の定冠詞全般に言えることです)、やはり存在すると思います。ただし、以前から述べているように、通念の定冠詞の分類はある意味で便宜的なものであり、ある名詞が特殊通念か、遍在通念か、総称か、対比・対照か、といったことを明確に分類しがたいものも多数あり、これから述べる名詞にも特殊通念以外の通念に分類しても差し支えないものが多く含まれています。

競技名

 まず、ダンス名と類似していますが、泳法や競技の名前です。泳法名は do や swim と使われる場合に the が現れることが多いと言えます。ただし、無冠詞の場合も多く、一般的には do の場合には定冠詞を使う方が、swim の場合には無冠詞を使う方が多くなります。いずれにしろ、前回述べたように複数の選択肢から選んだという意識が働いている場合に定冠詞が多くなり、その場合に do が選択される傾向にあるということです。他の競技名も使われる動詞は多少異なりますが、冠詞の用法はほぼ同じで、定冠詞を使う場合と無冠詞の場合があり、do, run, throw や in や on などと使うときに定冠詞が用いられることが多くなり(多少熟語化しているとも考えられます)、一方、特に口語的な場合やくだけた場面で無冠詞になる傾向があります。さらに複数回の事柄や種類を述べるときは複数になります。

the backstroke(背泳ぎ)− the breaststroke(平泳ぎ)− the butterfly(バタフライ)− the crawl (stroke)(クロール)− the sidestroke(横泳ぎ)− the freestyle stroke(自由形)
the high jump(走り高跳び)− the long (or broad) jump(幅跳び)− the running long (or broad) jump(走り幅跳び)− the standing long (or broad) jump(立ち幅跳び)− the triple jump(三段跳び)− the pole vault(棒高跳び)
the 100-meter dash (or the 100 meters)(100 m 走)− the relay(リレー)− the hurdles(障害走)− the marathon(マラソン)− the mile(1マイル競争)
the javelin (throw)(やり投げ)− the discus (throw)(円盤投げ)− the hammer (throw)(ハンマー投げ)− the shot (put)(砲丸投げ)
the high (or horizontal) bar(鉄棒)− the (still) rings(吊り輪)− the vault(跳馬)− the floor exercise(床運動)− the parallel bars(平行棒)− the pommel horse(鞍馬) − the uneven parallel bars(段違い平行棒)− the balance beam(平均台) など

(1)A few years ago I was learning how to do the backstroke at my local swimming pool.(数年前、私は地元のプールで背泳を習っていた)
『http://www.self-help-personal-development.com/going_with_flow.html』
(2)For the medley relay team, Eman Ismaeil will start with the backstroke, Theresa Westhaver will swim the breaststroke, Jenna Jackson the butterfly, and Devon Blackstock the freestyle leg.(メドレーリレーチームは、Eman Ismaeil がまず背泳を泳ぎ、Theresa Westhaver が平泳ぎで、Jenna Jackson がバタフライ、Devon Blackstock が自由形を泳ぎます)
『http://www.jasperbooster.com/story.php?id=113994』
(3)Therefore most people swim breaststroke 2 to 3 times slower than the dive speed.(従って、ほとんどの人々は飛び込む速度より2倍から3倍遅い速度で泳ぐ)
『http://www.breaststroke.info/Fstbrst.htm』
(4)Twenty minutes after winning gold in the freestyle, Thorpe won the first semi-final of the 100m backstroke.(自由形で金を取ってから20分後に、Thorpe は100 m 背泳ぎの準決勝第1組で1位になった)
『http://news.bbc.co.uk/sport3/commonwealthgames2002/hi/swimming/newsid _2168000/2168040.stm』
(5)He won gold in freestyle, silver at backstroke and bronze for breaststroke, while Chris Henry gained silver in the freestyle.(彼は自由形で金、背泳ぎで銀、平泳ぎで金を取り、一方、Chris Henry は自由形で銀を取った)
『http://www.thisishertfordshire.co.uk/archive/display.var.178145.0.
mariners_sail_off_with_medal_haul.php』
(6)I'm not going to do the long jump this year.(今年、幅跳びをするつもりはない)
『http://www.american-trackandfield.com/news/paytonjordanopen04quotes.html』
(7)Track and field has several jumping events. The high jump and pole vault test a competitor's ability to clear a bar at various heights. The long jump and triple jump determine how far a competitor can jump horizontally after a running start.(陸上競技には跳躍競技がある。高跳びと棒高跳びではいろいろな高さでバーをクリアする能力を試される。幅跳びと三段跳びでは、助走した後、競技者が水平にどれくらい飛べるかを判断する)
『http://encarta.msn.com/text_761562123___2/Track_and_Field.html』
(8)I run the 100 meter and do long jump. I also do shotput.(100 m 走を走り、幅跳びをする。また砲丸投げもする)
『http://waldron.k12.mi.us/03web/05dan/sports.htm』
(9)If Edwards doesn't run in the 100 and Devers opts to run only the hurdles, then Jones could run the 100 meters and be a part of the 400-meter relay team.(Edwards が 100 m を走らず、Devers がハードルだけを走ることにしたなら、Jones は100 m を走り、400 m リレーに出場することができる)
『http://seattletimes.nwsource.com/html/athens2004/2002000673_olytrack10.
html』
(10)She won gold in the shot, discus, hammer and weight and bronze in the javelin.(彼女は、砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ、重量投げで金を取り、やり投げで銅を獲得した)
『http://www.scottishathletics.org.uk/news_item.php?id=1092』
(11)For the men, Ronny Jimenez will compete in the shot and discus, Josh Ralston will throw the discus and Luke Marrs will throw the javelin.(男子では、Ronny Jimenez が砲丸投げと円盤投げに出場し、Josh Ralston が円盤投げ、Luke Marrs がやり投げに出場する予定である)
『http://www.aggiesports.com/track/news/031402agsprepareforrelays.htm』
(12)First, throw the javelin like a discus from a stand.(まず、立ち位置から円盤と同じようにやり投げを投げてみなさい)
『http://www.geocities.com/Colosseum/8682/jav.htm』
(13)On May 8, 1954, two days after Roger Bannister broke the four-minute mile, O'Brien became the first person to put the shot more than 60 feet.(1984 年5月8日、Roger Bannisterがマイル4分を切った走りをしてから2日後に、O'Brien は砲丸を 60 フィート以上投げた最初の人となった)
『http://www.usatf.org/HallOfFame/TF/showBio.asp?HOFIDs=123』
(14)Hamm secured his spot on the team by winning his second consecutive U.S. All-Around title at the U.S. Championships in June plus four individual medals, including gold on the high bar and pommel horse, and silver on the floor exercise and parallel bars.(Hamm は6月の全米選手権で個人総合のタイトルを連続して獲得したこと、さらに鉄棒と鞍馬の金、床と平行棒の銀の4つの個人メダルを取ることで、チーム内での自らの地位を確固たるものにした)
『http://www.usa-gymnastics.org/news/2004/jan05-04aau.html』
(15)At the 1996 Atlanta Olympics, Miller became the first American gymnast to win gold on the balance beam and she also took a gold medal in the team competition.(1996 年のアトランタオリンピックで、Miller は平均台での金メダルをアメリカ人として初めて獲得し、さらに団体競技でも金を手にした)
『http://www.hickoksports.com/biograph/millershannon.shtml』

(12)の like a discus は競技というよりも円盤それ自体を指していることと、like の目的語という不定冠詞が現れやすい位置にあるために不定冠詞が用いられています。

さまざまな特殊通念

 一般的に定冠詞と用いられる特殊通念を挙げておきます。

the alimentary canal(消化管) the apparatus((一連の)器官) the digestive apparatus(消化器官) the small intestine(小腸) the solar plexus(太陽神経叢) the vascular system(血管系、リンパ系;繊維束植物) the vascular tissue(繊維管系) the apparent horizon(視地平、見かけの地平線) the croup(クループ(激しい咳を伴う小児病)) the pip((家禽の)舌の伝染病) the rot(ヒツジの肝臓病) the genetic code(遺伝コード) the moment(モーメント) the next friend(近友(未成年者などの代理人として訴訟行為を行う人)) the recall(召艇信号) the self(自我) the silver standard(銀(貨)本位制) the snow line(雪線) the solar year(太陽年) the sonic barrier(音速障壁) the square(平方、2乗) the vertical(垂直位置) the stratosphere(成層圏) the troposphere(対流圏) the turbulence(乱気流) the tarot(タロットカード) the tatoo((深夜の)帰営ラッパ) the three mile limit(3マイル海域) the white((アーチェリーの)的の5番目の輪) the whites((印刷の)空白、余白) the wood((ゴルフの)ウッド) the voice(態) the passive (voice)(受動態) the active (voice)(能動態) the perfect(完了形、完了時制) the past perfect(過去完了) the present(現在時制) the person(人称) など

これらはごく一部に過ぎません。同様の語句は、上で説明した泳法や競技名と似た使い方をすることになります。

病名

 さらに病名があります(特殊通念とは呼べないほど一般化した名詞も一緒に扱います)。病名はほとんどが無冠詞で用いられるのが原則であり、一部の病名や症状だけが have, get, catch, contract, come down with などの目的語になる場合に定冠詞と用いられることもあります。以下の名詞の中で、chickenpox と smallpox は無冠詞が普通で、the はまれです。一方、flu は influenza の短縮形であることを示すために the と使うことが多く、また、plague は本来「疫病、伝染病」の意味ですから、the を付けることで「例の、あの伝染病」となり、具体的に「ペスト」を指すことになります。bend も多義語なので、the bends とすることで「ケーソン病」であることがはっきりします。sniffle は単に「鼻をすすること」との違いを示すために the sniffles の形で使うのが普通です。measles, mumps, hiccups は定冠詞を使うケースと無冠詞のケースが半々ぐらいです。また、suffer from, die of, die from のような表現では、chickenpox, smallpox, measles, mumps, hiccups は無冠詞が非常に多くなります。これらは苦痛や死の原因を掲称的に挙げる表現であり、いわば、from や of の後の名詞を引用符で括ったように掲げ挙げているために無冠詞になると考えられます。また、cause, develop, lead to, give rise to などの発生を表す表現も無冠詞が圧倒的に多くなります。これは、cause や lead to などの場合は「新たに生み出す」ことなので、既存のものを暗示する the と相反するためだと考えられます。ただし、flu, plague, sniffles は the のケースも見られますが、定冠詞を使う理由が少し違うからだと思われます。the sniffles は下で述べる the blues や the dismals に近いと言えます。

(the) chickenpox(水痘) (the) smallpox(天然痘) the flu(インフルエンザ) the plague(ペスト) the bends(ケーソン病、減圧病、潜水病) the sniffles(鼻風邪) (the) measles(はしか) (the) mumps(おたふく風邪) (the) hiccups(しゃっくり) など

(16)Before the chickenpox vaccine became available in the 1990s, most children in the United States got chickenpox.(1990年代に水痘のワクチンが利用できるようになるまでは、米国のほとんどの子供が水痘にかかっていた)
『http://www.wrongdiagnosis.com/s/shingles/causes.htm』
(17)He contracted the chickenpox as they traveled north to Tennessee.(彼は、彼ら(北軍)が北のテネシーに向かったときに水痘にかかった)
『http://www.hsv.k12.al.us/schools/magnet/asfl/service%20learning/aaahp/jt%20moore/Moore.htm』
(18)According to the Centers for Disease Control and Prevention (CDC), about 10 percent to 20 percent of U.S. residents come down with the flu each year.(疾病対策センター(CDC)によると、米国の住民の約10%から20%が、毎年、インフルエンザにかかっている)
『http://www.mamashealth.com/infect/fluvaccine.asp』
(19)These include malaria, yellow fever, typhus, and the plague.(これらには、マラリア、黄熱病、発疹チフス、ペストが含まれている)
『http://www.ndsu.nodak.edu/entomology/topics/disease.htm』
(20)Plague or the plague is a very infectious and usually fatal disease, in which the parent has a severe fever and swellings on his or her body.(plague または the plague は非常に感染力が強く、通例死に至る病気であり、これに罹患した人は熱がひどく出て、体に腫れ物が生じる)『Collins Cobuid』
(21)A sniffle is a slight cold. You can also say that someone had the sniffles.(鼻風邪とは軽い風邪のことである。また、「人が鼻風邪をひいていた」のように使える)『同上』
(22)Five days before my birthday I contracted the measles. My best friend and I both came down with measles at the same day.(誕生日の5日前にはしかにかかった。私の一番の友だちも私も同じ日にはしかにやられてしまったのだ)
『http://members.aol.com/danielsown/encephalitis/lorre.htm』
(23)When I was in kindergarten (before there was a vaccination) literally every child in my class except me got the mumps.(私が幼稚園に通っていた頃(ワクチンができる前のこと)、私を除く文字通りクラスの子供全員がおたふく風邪にかかった)
『http://www.chronicles-network.net/forum/showthread.php?mode=hybrid&t=347』
(24)I got mumps from Tom next door.(隣のトムからおたふく風邪をうつされた)『ルミナス英和辞典』
(25)Why do people get the hiccups? We're not sure why people get hiccups. It seems like every species has its cross to bear and hiccups is ours (along with death and taxes). ((質問者)人はなぜしゃっくりをするのですか。(回答者)人がなぜしゃっくりをするのか、はっきりとは分かりません。どのような生物の種にもそれなりの苦労があるもので、しゃっくりは私たちの悩みの種ということです(死や税金もそうですが))
『http://ask.yahoo.com/ask/19990525.html』
(26)The number of people suffering from flu in England is rising, according to official figures released on Thursday.(木曜日に発表された公式の数字によると、イギリスでインフルエンザにかかる人々の数は上昇している)
『http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/584150.stm』
(27)Many people who claim to be suffering from the flu are in fact infected with different sorts of viruses which can cause illnesses quite similar to flu, although usually these illnesses are less severe.(インフルエンザにかかっていると主張する多くの人々は、実際にはインフルエンザとよく似た病気(これらの病気はインフルエンザほど深刻ではない)を引き起こす恐れのあるいろいろな種類のウイルスに感染している)
『http://www.wellway.co.uk/healthadv/flu_like_illness.htm』
(28)But if vaccinations against measles were stopped, each year about 2.7 million people would die of measles worldwide.(しかし、はしかに対するワクチン接種が停止された場合、世界中で毎年約2700万人がはしかで死ぬことになるだろう)
『http://www.immunizationinfo.org/exposure_parties_detail.cfv』
(29)Jenkins is diagnosed with mumps and takes quinine.(Jenkins はおたふく風邪と診断され、キニーネを飲む)
『http://dlg.galileo.usg.edu/jenkins/chronology.php』
(30)People with hiccups were once thought to be possessed by the devil.(しゃっくりをする人々はかつて悪霊にとりつかれていると考えられた)
『http://superstitions.boredland.com/general.htm』
(31)My own mother, over in Kentwood, suffering from the sniffles, stayed up late that night to root for a school neither of her sons or herself attended.(私自身の母親は、ケントウッドにおり、鼻風邪にかかっていたが、その夜、遅くまで起きて、自分の息子も自分自身も通ったことのない学校を応援した)
『http://www.timesofacadiana.com/thirdopinion/』
(32)There is one obvious solution to the problem, but many people would rather suffer from sniffles, sneezes and itchy eyes than get rid of their four-legged family member.(この問題に対する明確な解決策が1つある。しかし、多くの人々は四本足の家族の一員をなくすよりも鼻づまりやくしゃみや目のかゆみに苦しむ方が良いだろう)
『http://www.buzzle.com/editorials/3-10-2003-37052.asp』
(33)In humans, viruses cause measles, mumps, yellow fever, poliomyelitis, influenza, and the common cold, among others.(人間の場合、ウイルスが、はしか、おたふく風邪、黄熱病、灰白髄炎、風邪などを引き起こす)
『http://www.womenchildrenhiv.org/wchiv?page=tp-glossary&post=16』
(34)The vaccine itself cannot cause the flu, but you could become exposed to the virus by someone else and get infected soon after you are vaccinated.(そのワクチン自体はインフルエンザを引き起こすことはないが、ワクチンを接種した直後に、他の人のウイルスにさらされて感染する可能性はある)
『http://www.niaid.nih.gov/factsheets/flu.htm』
(35)Actually, the flu vaccine can't cause flu because it contains only inactivated viruses.(実際には、インフルエンザのワクチンは、不活性化されたウイルスしか含んでいないので、インフルエンザを引き起こすことはない)
『http://www.fda.gov/fdac/features/896_flu.html』

なお、pox は本来 pocks という複数形であり、上記の病名・症状も flu と plague を除けば全て複数形であると言えます。従って、これらの the は総体を表す用法でもあります。複数のものをひとまとめにして一つの概念を作り出しているわけです(なお、(33)の the common cold は common が付くことで通念化し、the と使われています)。

症状を表す複数形の名詞

 これと類似して、the と用いられるある種の症状を表す複数形の名詞があります。全て「例の、あの…」という意識で本来用いられていた定冠詞が、形式的に現在でも残っていると考えられます。これらの表現は無冠詞よりも the と使う方が多いと言えます。

the blues(憂鬱) the dismals(憂鬱) the doldrums(憂鬱、ふさぎ込み) the dumps(憂鬱) the jumps(いらいら、心配) the fidgets(そわそわすること、落ち着きのないこと) the horrors(ぞっとする気持;ふさぎ込み) the creeps(ぞっとする感じ) the jitters(神経質、そわそわ) the shakes(震え:悪寒) the shivers(寒気、身震い) the shudders(身震いの発作) the willies(おじけづくこと、おびえ) the shits(下痢) the trots(下痢) など

日本語では、「そわそわ、いらいら、ぞくぞく、ぶるぶる」といった同じ音を反復するという表現が多くありますが、上記の複数の名詞はそれらのイメージに通じるところがあります(もちろん、日本語のそれらの表現と英語の the 複数名詞が一致するということではありません)。

無冠詞の病気・症状を表す名詞

 上記以外の病名や症状は原則として不可算名詞であり、無冠詞で用いられます。

acne(座そう、にきび) AIDS(エイズ) appendicitis(虫垂炎) arthritis(関節炎) asthma(喘息) cancer(癌) cholera(コレラ) claustrophobia(閉所恐怖症) diabetes(糖尿病) diarrhea(下痢) dysentery(赤痢) hypertension(高血圧症) hysteria(ヒステリー) hysterics(ヒステリーの発作) influenza(インフルエンザ) insomnia(不眠症) leprosy(ハンセン病) malaria(マラリア) nausea(吐き気) neurosis(ノイローゼ) osteoporosis(骨粗鬆症) paranoia(偏執病) pneumonia(肺炎) rabies(狂犬病) rheumatism(リューマチ) schizophrenia(精神分裂症) tonsillitis(扁桃腺炎) tuberculosis (or TB)(結核) typhus(発疹チフス) など

 2語以上からから成る病名や of が付いている病名も無冠詞で用いるのが原則です。

Down syndrome(ダウン症) altitude sickness(高山病) heart disease(心臓病) yellow fever(黄熱病) lung cancer(肺ガン) cancer of the breast(乳ガン) cirrhosis of the liver(肝硬変) など

(36)The American Heart Association released new guidelines for preventing and treating heart disease in women on Wednesday and said most women still do not realize heart disease is more likely to kill them than anything else.(心臓病協会は、女性の心臓病を防ぎ、治療する新しい指針を水曜日に発表し、ほとんどの女性が、心臓病が他の何よりも自分たちの死亡原因になる可能性が高いということを認識していないと述べた)
『http://www.msnbc.msn.com/id/4163284/』
(37)Ben was 5500 metres above sea level when his friends were struck down by altitude sickness.(Ben が海抜5500メートルのところにいたとき、友人たちが高山病に襲われた)
『http://www.thesite.org/youthnet/jsp/polopoly.jsp?d=232&a=1452』
(38)If a patient has cancer of the larynx, the doctor will do more tests to find out if cancer cells have spread to other parts of the body.(患者が喉頭癌である場合、医師は、癌細胞が体の他の部位に広がっていないかどうかを調べるためにさらに多くの試験をするであろう)
『http://www.umm.edu/cancer/overview/laryn-stages.html』
(39)Alcoholic hepatitis can lead to liver scarring and cirrhosis, and very frequently occurs in alcoholics who already have cirrhosis of the liver.(アルコール肝炎は、肝臓の瘢痕化と肝硬変を引き起こす恐れがあり、また、既に肝硬変があるアルコール中毒患者に非常によく見られる)
『http://cpmcnet.columbia.edu/dept/gi/alcohol.html』

不可算名詞としても可算名詞としても用いられる病気・症状を表す名詞

 また、以下の名詞は不可算名詞としても可算名詞としても用いられます。本来、その単語が病名や症状を表していない可算名詞が病名・症状を表すようになったものと、「1回」あるいは「1カ所」を意識しやすいものが多いと言えます。また、上の方で述べたように suffer from, die of, cause などと使うときは無冠詞が多くなります。

allergy(アレルギー) cold(風邪) coma(昏睡) concussion(脳しんとう)  cramp(けいれん) deformity(奇形) depression(憂鬱、鬱病) haze(意識のもうろうとした状態) hernia(ヘルニア) malaise(不快感、不安感) migraine(偏頭痛) paralysis(麻痺) pimple(にきび) rupture(ヘルニア) spasm(けいれん、発作) spot(吹き出物) など

(40)She has a cold now.(彼女は今風邪をひいている)
(41)He often has a cold (or colds).(彼はよく風邪をひく)
(42)They have colds (or a cold).(彼らは風邪をひいている)
(43)I have a mild (or bad) cold.(私は軽い(ひどい)風邪をひいている)
(44)She'll catch (or get) (a) cold.(彼女は風邪をひくだろう)
(45)He catches colds (or a cold) easily.(彼は風邪をひきやすい)
(46)Do you have any allergies?(アレルギー体質ですか)『ジーニアス英和辞典』

(40)の have a cold の a、(43)の a 形容詞 cold の a は省略しません。後者については、可算名詞として使える病名・症状も同じであり、「どんな病気・症状」かを説明する形容詞を強めるために不定冠詞が用いられるのが普通です。have a cold の方は、いずれ不定冠詞を述べる際に触れる予定ですが、there is S の S、S is C の C と並んで、S have O の O は新たに概念を紹介する典型的な表現であり、いわゆる初出の不定冠詞と使われることが多いこと、高い伝達価値を含む異変(この場合は無冠詞になりやすい)を表していないことが影響していると思います。また、(41)の頻度を表す副詞を伴う場合、通例、a cold ですが、過去の話を述べるとき(つまり、had と使うとき)は colds も a cold と同じ程度用いられています。現在形のときは、「a cold をひくということが何回か起こる」という意識であるのに対し(これは、このコラムの『冠詞に関する覚え書 (14)』で紹介した "(61) A madrigal is always popular." が可能であることとも関連しています)、過去のことを述べる場合は、既にひいた複数の風邪を意識しやすいためだと考えられます。

 その他です。

go into a coma(昏睡状態になる) come out of a coma(昏睡状態からさめる) fall into (a) depression(ふさぎ込む) be in a haze(ぼんやりしている) go into spasm(s)(けいれん状態になる) など

最初の2つの coma の例は無冠詞の例も少しあります。

可算名詞の病気・症状を表す名詞

 さらに、次の名詞は一般に可算名詞であり、無冠詞単数形ではあまり使いません。

attack(発作) cough(せき) cataract(白内障) yawn(あくび) など

-ache

 次に、-ache の例ですが、a headache(頭痛)は可算名詞として扱います。toothache(歯痛), earache(耳痛), stomachache(胃痛、腹痛), backache(腰痛)は可算名詞と不可算名詞の用法があり、米語では可算名詞、イギリス英語では不可算名詞として用いることが多いようです(この地域の差異は、通念の定冠詞の用法に時々見られ、いずれもイギリス英語の場合に無冠詞化する傾向があります)。

なお、個別の病名の上位概念である illness, sickness, disease など「病気」を意味する名詞は不可算名詞と可算名詞の場合があり、抽象的に「病気」を表す場合は不可算名詞、種類や個別性を意識した場合の「病気」は可算名詞として扱うことになります。「痛み」を表す pain や ache も同様です。これらの「病気、痛み」を表す名詞も suffer from, cause などの動詞と使うときは無冠詞で使われることが多くなります。ただし、suffer from などの後でも、an illness 関係詞 … や a 形容詞 illness のように、「どんな、どのような」を示す修飾語句が付く場合は、不定冠詞が多くなります。

 次回も通念の定冠詞を扱う予定です。

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