トップページへ

目次

<冠詞に関する覚え書>
不定冠詞

第26話 個別性の含み
(頻度を表す語句とともに)




= 覚え書(26) =

 今回も不定冠詞の「個別性の含み」を扱います。

個別性の含み(never, ever とともに)

 今回は頻度を表す副詞が一緒に用いられている場合はどうなるのかを中心に見ていきます。前回、never や ever が含まれた文についても扱いましたが、never も頻度の副詞です。never の場合はそれぞれ一つ一つの時点について否定する語であり、元来、各一時点が強く意識されています。従って、前回示したように一時点に単数の名詞が関連する場合、単数形を使うのが自然です。否定語 + ever も同様です。さらに、hardly ever, scarcely ever や、それらと同じ意味の seldom, rarely も「不定冠詞+単数形」と使う方が普通です。ever は各時点について「どの時点でも…である(…でない)」という文脈で使う表現であり、それぞれの一時点を意識した表現です。また、ever は、if 文などの条件文でも単数形の名詞と共に使われることが多い語ですが、これは、任意のある時点を仮構的に捉えた場合に使う語なので、一回の出来事を述べることが多く、名詞の個別性を意識するからです。

(1)Practically no one ever has a problem.(ほとんど誰にも全く問題がない)
『http://www.vocationsplacement.org/CommonQuestions.asp?Authenticated=true』
(2)I have a Philips DVDR75 which is basically the same and I've hardly ever had a problem with it despite quite extensive use.(私は基本的に同じ機種である Philips 社の DVDR75 を持っていますが、非常によく使っているにもかかわらずそのような問題はほとんどありません)
『http://www.dvd.reviewer.co.uk/forums/thread.asp?Forum=211&Thread=402629&Type=1&NewPosts=1』
(3)Regardless of what may happen to the economy, the skilled mechanic seldom has a problem finding a job.(経済に何が起ころうとも、熟練整備士は仕事を見つけるのに苦労することはめったにない)
『http://mciunix.mciu.k12.pa.us/~mcavtweb/pages/automotive.html』

個別性の含み(often, sometimes とともに)

 次に often と sometimes の場合です。これらの頻度の副詞は出来事が複数回起こることについて用いられるわけですが、それぞれの一回を意識して単数形にするか、それとも複数回の総体・総合を意識して複数形にするか、という問題が伴います。結論から言うと、often, sometimes やそれらの類似表現は名詞の複数形と用いることが多いと言えます。これは、本来、これらの語句が、各一回一回の出来事それ自体を意識するよりも、起こった、あるいは起こる出来事を全体的に捉えたり、複数回であることに意識が向いた場合に用いられる傾向があるためだと考えられます。簡単に言えば、例えば、「よく本を読む」は「たくさん本を読む」、「ときどき本を読む」は「何冊かの本を読む」こととほぼ同じように感じられることが多いからです。

(4)I often read books far too quickly and this can mean that I miss out words to keep the pages turning.(私は本をあまりにも素早く読んでしまうことが多いのですが、これは、言葉を読み落として、ページをめくり続けることになりがちです)
『http://www.amazon.co.uk/exec/obidos/ASIN/0349101256/026-3202424-9297201』
(5)Krauss's diary is written in such detail that readers will sometimes have problems following the main path - there are too many interesting things to the left and right of the road.(Krauss の日記はとても詳しく書かれているので、読者は時々メインストリートを辿って行くのに苦労する。道の左や右にあまりにも多くのおもしろいことが目に付くからだ)
『http://physicsweb.org/articles/review/14/6/3/1』
(6)So, for example, I generally hold doors open for people when I'm not in a particular hurry to get where I'm going.(だから例えば、出ていくときに特に急いでいなければ、普通、他の人のためにドアが閉じないように手で保ちます)
『http://slitheryd.blogspot.com/2004_01_01_slitheryd_archive.html』

個別性の含み(always, usually とともに)

 よく使われる他の頻度の副詞としては、always, usually があります。この2つの副詞も often, sometimes などに近く、複数形の名詞と使われることが多いと言えます。

(7)I always hold doors, etc. for women, but it's amazing how few even acknowledge the fact these days.(私はいつも例えば女性のためにドアを持ってあげるが、最近、それに会釈さえしない人がとても多いことに驚く)
『http://news.bbc.co.uk/1/hi/talking_point/2740635.stm』
(8)A gentleman usually opens doors for a lady and lets her enter and exit first.(紳士は通常女性のためにドアを開け、最初に出入りさせてあげるものです)
『http://www.party411.com/queen10g.html』

しかし、事はそれほど単純ではありません。often や sometimes が総体としての複数が容易に意識される語であるのに対し、always, usually は各時点、各一回についても意識される語であり、often などに比べて単数回の事柄に意識が向きやすいと言えます。同時あるいは非常に短時間に複数の名詞が関連する出来事が生じる可能性のあるケース、あるいは名詞の個別性がほとんど意識されないケースでは、always も usually も複数の名詞と使われることが多くなります。一般論として「うそをつく、問題がある、ドアを開ける」などと述べる場合です。しかし、単数の名詞しか関連し得ない、あるいは関連しにくいケースでは単数になりやすくなります。例えば、一回の動作・出来事が比較的長い時間継続すると感じられる場合や、名詞の個別性、独自性が強く意識される場合です。例えば、「いつも散歩をする」という場合、一人の人が同時に複数の散歩をすることはできませんし、あるいは立て続けに複数の散歩をすることはまずないでしょうから、単数の散歩、つまり a walk が念頭に浮かびやすいと言えます。また、always, usually は「…のときはいつも〜」、「…の場合にはいつも〜」というように時点を特定して使うのが普通ですから、特定の一回の出来事を意識することが多くなります。

(9)We always took a walk up to Charlie's grave on the mountainside behind the cabin.(私たちは小屋の背後の山腹にある Charlie の墓までいつも散歩した)
『http://www.badgerclark.org/badger_clark_a_personal_reminiscence.htm』
(10)I always took a walk alone in some park before getting back for dinnertime.(私はいつも食事に戻る前にある公園を一人で散歩した)
『http://www.findarticles.com/p/articles/mi_m1000/is_n361/ai_9036350』
(11)I usually gave a talk on how to market and promote their organization to the public.(私は、通常、彼らの組織を一般の人々に売り込み、宣伝する方法について話をした)
『http://www.smalltownmarketing.com/promotehomebased.html』
(12)I usually took a nap after lunch.(私は昼食の後たいてい昼寝をした)
『http://www.glennshafer.com/personal/daddybio/daddybio_chap10.html』

時制との関係

 一方、「しばしば散歩をする」というように often や sometimes を、walk のような単数で使われる傾向のある名詞と一緒に用いる場合には、話はいっそう込み入ってきます。時制による相違がやや強く感じられるからです。一般的に、過去の出来事は現在から振り返った際に全体として捉えやすく、名詞の総体を意識しやすいので複数形が用いられることが多くなります。また、過去にした各散歩の間に大きな相違を意識することはほとんどなく、個別性を意識することが少ないことも関係していると考えられます。現在の習慣や反復的な出来事を述べる場合は、語感に多少の迷いが見られ、複数形も単数形も大体同じ程度用いられているようです。さらに、未来を初めとする仮構性が感じられる場合ですが、この場合、「散歩」や「昼寝」のような名詞は often や sometimes と用いられることはほとんどありません。そのような表現をする機会が少ないからでしょう。もしそのような機会がある場合には、複数形でも単数形も同様に使われると考えられます。念のために書き添えておきますが、ここで論じているのは、「よく散歩をしたものだ」とか「ときどき散歩をしている」とか「しばしば散歩をすることになるだろう」というような習慣的な出来事について述べる場合です。一回の事柄を意識している場合は、どの時制に限らず、単数形を使うのが一般的です。なお、個別性を意識しにくく、複数を意識しやすい名詞の場合は、習慣・反復を表す際、未来の事柄や仮構的な事柄でも複数形を用いるのが普通です。

(13)He often took walks along the shore at Oyster Bay near his home.(彼は家の近くのオイスター・ベイの海岸をよく散歩した)
『http://www.localcolorart.com/encyclopedia/Ray_Johnson/』
(14)She often takes walks with her dog, Winnie.(彼女は飼い犬の Winnie とよく散歩をする)
『http://www.websterschools.org/webpages/shughey/』
(15)She often takes a walk in the Arboretum to relieve stress and enjoy the air, birds, horses and plants.(彼女はストレスを解消し、空気や鳥や馬や植物を楽しむために植物園をよく散歩する)
『http://envhort.ucdavis.edu/ehweb/newsltr/1994/news94s.htm』

以上のまとめ

 ここまでの話をまとめましょう。まず、頻度の副詞の種類によって単数と用いられる傾向のものと、複数と用いられる傾向のものとがあります。never, hardly ever, seldom などが単数と、often, sometimes が複数と用いられる傾向にあります。always, usually はその中間的な語です。また、名詞の種類や伝達内容が影響します。個別性・単回性が強く意識されている場合や複数であることを排除する必要がある場合は、単数の名詞が用いられる傾向にあり、個別性・単回性が意識されない名詞は複数形で用いられることが多くなります。一方、過去の習慣的な事柄を述べる場合は、複数の名詞が用いられることが多く、現在の習慣は複数も単数もおおむね同じように用いられています。

個別性が意識されない名詞

 個別性が意識されない名詞の例を挙げておきます。

(16)Have you ever eaten kidney beans? (インゲン豆を食べたことがありますか?)
『http://www.mghpedirad.org/NewFiles/prep_exam/ivp.html』
(17)You have never eaten snails. (カタツムリを食べたことがない)
『http://youthspecialties.com/free/programming/camps/nextlevel/day2.php』

ever, never といった単数形と用いられることが多い頻度の副詞が用いられていますが、「インゲン豆」や「カタツムリ」は当然一度に複数個食べるのが普通でしょうから、複数形が用いられています。

 次の文は一度に「複数のタバコを手に持っている」のではないので、a cigarette が用いられています。個別性が意識されない Lucky Strikes, French cigarettes は複数形です。

(18)He generally had a cigarette in his hands; for years he preferred unfiltered Lucky Strikes. Later, he smoked strong French cigarettes called Gitanes.(彼は大抵手にタバコを持っていた。何年もフィルターなしのラッキーストライクを好んでいた。後にはジタンという強いフランスのタバコを吸っていた)
『http://psc.disney.go.com/guestservices/8910.html』

「ゾウは鼻が長い」(単数か複数か)

 最後に単数と複数でよく問題になる例について述べておきます。「ゾウは鼻が長い」とか「キリンの首は長い」という文で、主語を複数形にした場合に、「鼻」や「首」の数をどうするかという問題です。この場合、次のように複数形にするのが普通です。

(19)Elephants have long trunks.(ゾウは鼻が長い)
(20)Giraffes have long necks.(キリンは首が長い)
(21)Red brick houses with tile roofs.(瓦葺き屋根の赤レンガの家)

(21)のような場合も roofs と複数形を使うのが一般的です。ただし、複数持っていると誤解されたくない場合や単数であることを明示したい場合には、単数形を用いることになります。

(22)Cranes have a long neck, long legs, long, rounded wings, a long, pointed bill, and a streamlined body.(ツルは、長い首、長い脚、長く丸みを帯びた翼、長く尖ったくちばし、流線型の体を持つ)
『http://www.zoomschool.com/subjects/birds/printouts/Crane.shtml』

 次回も不定冠詞を扱います。

25話へ
〜26話〜
27話へ