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<冠詞に関する覚え書>
不定冠詞

第28話 補語と用いられる不定冠詞



= 覚え書(28) =

 今回も、「個別性の含み」、「不定性の含み」、「質の含み」、「仮構性の含み」という4つの含みを個別に説明するのではなく、文法的な側面から説明したいと思います。

補語と用いられる不定冠詞

 今回扱うのも英語を学習する最初の段階で現れる不定冠詞であり、「A は B である」という場合の B と共に使われる不定冠詞です。前回述べた「紹介導入の不定冠詞」は、何らかの概念(名詞)を話の中に初めて登場させ、紹介するという場面で用いられる不定冠詞でした。今回の不定冠詞は、いわゆる補語と用いられる不定冠詞です。この不定冠詞は「紹介導入」と呼んでもそれほど無理はないと思いますが、一応、別扱いをしておきます。

 可算名詞は、熟語など例外的な場合を除いて単数無冠詞では使われませんから、補語になる場合も、単数であり、かつ定冠詞を用いる理由がなければ、不定冠詞を用いることになります。

(1)He's a student.(彼は学生である)
(2)He's the student.(彼がその学生である)

上記の例は、よく指摘されることですが、日本語の「は」と「が」で訳し分けができる場合です。(2)は既に「学生」のことが話題に上っており、それを受けて "the student" としています。

 「A = B」の表現が含まれるものは、全て同様です。

(3)He became a student.(彼は学生になった)
(4)He seems to be a student.(彼は学生のようだ)
(5)I want to be a doctor.(私は医者になりたい)
(6)It's a great pleasure to see an old friend after a long time.(しばらくぶりで旧友に会うのはとてもうれしいことだ)『新グローバル英和辞典』
(7)It's a pity that you must go home so soon.(もうお帰りにならなければならないとは残念です)『ジーニアス英和辞典』

目的語の補語の場合

「A = B だと思う」のように目的語の補語になる場合も同様です。

(8)I thought him a student.(私は彼が学生だと思った)
(9)I found him (to be) a student.(私は彼が学生だと知った)
(10)I believed him to be a student.(私は彼が学生だと思った)
(11)He admitted himself to be a liar.(彼は自分がうそつきだと認めた)
(12)That is why the University makes it a priority to provide the best in medical and emotional support for all students.(だからこそ、大学は全ての学生に医療面及び情緒面の最善のサポートを提供することを優先するのである)
『http://www.man.ac.uk/study/ugrad/life5.html』

like, as, for と共に

前置詞の like や as と使われる場合も同じです。for も熟語で同じように使われることがあります。

(13)She looks like a student.(彼女は学生のように見える)
(14)She sings like a bird.(彼女は鳥のように歌う)
(15)This would be something like a robot.(これはロボットのようなものだろう)
(16)I worked as a teacher there.(私はそこで教師として働いていた)
(17)I thought of her as a teacher.(私は彼女を教師だと思った)
(18)As a young man, he taught English in Africa.(若い頃、彼はアフリカで英語を教えていた)『ジーニアス英和辞典』
(19)My father left Edinburgh as a boy.(父は少年の頃エジンバラを去った)『新グローバル英和辞典』
(20)I took him for an American.(あの人をアメリカ人と間違えた)『同上』
(21)He was mistaken for an Egyptian.(彼はエジプト人に間違われた)

(13)は「彼女 = 学生」、(16)は「私 = 教師」という関係が伏在しています。その他も同様です。

「A, B」の同格

 さらに、次のような同格の例もあります。

(22)John, a teacher, was concerned about the youth wandering the streets.(教師である John は、通りをうろついている若者たちのことを心配していた)
『http://www.franciscan-brothers.net/BrotherJohnHoever.html』
(23)Bob, an engineer, lives in Castle Point with his wife and their four children.(技術者である Bob は、妻と4人の子供と一緒に Castle Point で暮らしている)
『http://www.conservatives.com/tile.do?def=people.person.page&personID=5032』
(24)Jane, a volunteer nurse in our clinic for more than a year-and-a-half, is now leaving us.(1年半以上の間、私たちの医院でボランティア看護師として働いてきた Jane が私たちのもとを去ることになりました)
『http://www.jhc-cdca.org/newsletters/2002-12.html』
(25)For one reason or another, I was always moving ― an easy matter when all my possessions lay in one small trunk.(何やかやで私はいつも引っ越しばかりしていた―それは全財産が1つの小さいトランクに入ってしまうので容易なことだったが)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(26)This kind of headache could be due to a ruptured aneurysm causing subarachnoid hemorrhage, a condition that is very serious and can be fatal.(この種の頭痛は、クモ膜下出血を引き起こす動脈瘤の破裂が原因である可能性があり、この状態は非常に深刻で命にかかわる恐れがあります)
『http://www.bestdoctors.com/en/conditions/h/headaches/headaches_060200.
htm』

以上のさまざまな例全てに共通することは、「A は B である」という関係が含まれていることであり、B が単数の可算名詞であるということです。A と B が単純な名詞である場合だけでなく、(25)や(26)のように、A が前文の全体あるいは部分である場合も同じです。例えば、(25)は「いつも引っ越しをすること」=「容易なこと」という関係が述べられています。

無冠詞を用いる場合

 さてここで、例外的に補語となる単数可算名詞が無冠詞になる場合を上げておきます。次のように、主に単独の人が占める役職や地位を表す名詞の場合です。ただし、the と共に用いられることもあります。

(27)He was director of the Institute of International Affairs.(彼は国際問題研究所の所長だった)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(28)They elected George captain of the club.(彼らはジョージをクラブのキャプテンに選出した)『同上』
(29)As (the) chairman of the committee, I declare the meeting closed.(委員長として、会議の閉会を宣言します)『英文法解説』(金子書房)
(30)Who will act as principal?(だれが校長代理をするのか)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(31)Darwin, (the) author of "The Origin of Species" was born in 1809.(『種の起源』の著者であるダーウィンは1809年に生まれた)『英文法解説』(金子書房)

これらの無冠詞は、補語となる語が、引用符で括ったように掲げ上げられた感じになることから来ると考えられます。つまり「A は "B" である」という感触に近くなるからです。as の場合は、不定冠詞が用いられても良さそうな場合にも無冠詞になることがあります。as を用いると、引用符で括ったように掲げ上げる力がいっそう強く働くからだと考えられます。

(32)She acted as (an) interpreter at the international conference.(彼女は国際会議で通訳(の1人)を務めました)『英文法解説』(金子書房)

「A は B である」という関係が間接的に表現される場合

 では次に、「A は B である」という関係が、上記の諸例ほど直接的ではなく、間接的に表現される場合です。英語を初めとする西洋諸語では、「A = B」という関係が意識されていることが非常に多く、そのため、be 動詞のように「A = B」という関係を明示的に表現する方法以外に、「A = B」という関係を単に示唆するような表現が発達しています。

(33)Twelve citizens form a jury.(12名の市民が陪審を構成する)『新グローバル英和辞典』
(34)The right plot represents a detail of the flow around the planet.(右の図は、惑星の周りの流れを詳しく表している)
『http://www-star.qmw.ac.uk/~masset/intertmr.html』
(35)The H on the weather map stands for a High pressure area.(天気図上の H は高気圧のエリアを表す)
『http://www.chino.k12.ca.us/iditarod/about/science.html』
(36)People talk of a disease when they speak about alcoholism.(アルコール中毒のことを話すとき、病気という言葉を使う)『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
(37)In Robert I have a true friend.(Robert は真の友人である)『The Doings of Raffles Haw』(Arthur Conan Doyle)
(38)We have a delicate matter before us now...(今や私たちは厄介な問題を抱えている)
『http://computer-ease.com/socci/rpt03ins.htm』
(39)Obviously we are dealing with a different phenomenon now.(明らかに私たちは今別の現象を扱っている)
『http://www.nixoncenter.org/Program%20Briefs/vol7no17terrorism.htm』

form, represent, stand for などの表現は be 動詞とほとんど同じ働きをしています。また(36)は "alcoholism = a disease"、(37)は "Robert = a true friend" であるという関係を修辞的に述べているに過ぎません。(38)や(39)になると「A = B」の「A」が文内にはありません。しかし、文脈から「今直面しているもの」が "= a delicate matter" であり、"= a different phenomenon" であることは明らかです。一方で、(38)や(39)は、前回扱った「紹介導入」に近くなっています。逆に言うと、「紹介導入」をする場合も、実は、「A = B」だという判断をしているわけです。例えば、Once there was an old man.(昔、ある老人がいた)と言う場合、「ある人物 = an old man」だという認識が根底にあるのです。もっと広く言ってしまえば、不定冠詞が用いられている場合は、必ず(それがたとえどんなに微かで、無意識であっても)「A = B」の判断をしているのです。

この「A = B の判断をした」という感触が非常に強く感じられる場合があります。次回は、「紹介導入」と「A は B である」と述べる場合にも共通する「評辞」というものについて述べる予定です。

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