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目次

<冠詞に関する覚え書>
無冠詞

第34話 掲称的語局
(of、補語、同格を中心に)




= 覚え書(34) =

 前回、「鋭い唐突性によって、鋭く浮かび上がって達意の主局」に立っており、明らかに掲称的語局であるケースについて述べました。そこで今回は、前回挙げた例ほどは明確な掲称的語局ではないとしても、掲称的語局であるために、あるいは掲称的語局になりやすいために、無冠詞が用いられる傾向がある表現および語句を見ていきましょう。

of(a kind of など)

 まず、前置詞の of に注目しましょう。of という前置詞は他の前置詞に比べて掲称力のかなり強い前置詞であり、of の後に無冠詞の名詞が現れやすいと言えます。現在では熟語化しており、本来の掲称性があまり感じられなくなっているものも多くありますが、無冠詞の表現として注目しておくべきものがあります。例えば、"a kind of" の後に来る名詞が原則として無冠詞である、というようなケースです。これは本来「…の一種」であり、of の目的語である "…" の部分が掲称されている表現であったと考えられます。つまり、a kind of car は、a kind of "car" というように引用符を伴うような掲称性が強い表現であったものが、現在では、修飾関係が入れ替わり、a kind of が car を形容詞のように修飾しているようにも感じられ、「一種の…」と解釈することが可能です("車" の一種 → 車の一種→ 一種の車)。つまり、kind of のような表現は、本来の掲称性と修飾関係の変化("a kind" + "of car" → "a" + "kind-of-car" という変化と考えても良い)という理由から、of の後に無冠詞が用いられていると考えられます。このような形で of と用いられる名詞を少し挙げておきます。

(T) kind(種類) sort(種類) type(型、種類) form(種類:「形」ではない) shape(種類:「形」ではない) class(部類、種類) manner(種類:「方法」ではない。「種類」の意味のときは複数形がない) variety(種類) など

次のように使います。

(1)That's the sort of thing I want.(それこそ私の欲しい種類のものだ)『ロイヤル英文法』
(2)This is a new type of dictionary.(これは新しいタイプの辞書だ)『同上』
(3)What kind of car is it?(それはどんな車かね)『同上』
(4)these kinds of cars = these kind of cars = these kinds of car(これらの種類の車)(前から順に「標準的な表現」−「くだけた表現」−「堅い表現」)

kind が単数形である(4)の2つ目の表現は誤りとされることもありますが、実際には非常によく用いられています。 この表現では kind of が非常に軽く、these cars に kind of が入り込んだような形になっています。言い換えれば、kind of 全体が形容詞のように感じられており、kind が名詞の性質をほとんど失っているということです。また、car が単数形になっている3つ目の表現は、car の掲称性がよく感じられます。なお、次のように of の後に不定冠詞が用いられる場合もあります。

(5)What kind of a car is it?(それはどの程度の車かね)(いい車かどうかを尋ねる感じ)『ロイヤル英文法』
(6)What sort of a man is he?(あの人はどんな人間ですか)『新グローバル英和辞典』

これらはくだけた表現であり、「どの種類の」というよりも「どんな、どの程度の」という意味合いが強く、「質の含み」が強調されていると考えられます(不定冠詞の「質の含み」については「冠詞に関する覚え書 (29)(31)」を参照)。この不定冠詞は、特に what kind (or sort) of の疑問文でよく用いられます。

of(「多くの…」)

  "kind of" と類似した表現に "lot of" などがあります。lot of は「多くの…」という意味から、後に来る名詞が可算名詞の場合は複数形、不可算名詞の場合は単数形になりますが、いずれも無冠詞です(定冠詞の例は下記(9)を参照)。lot は本来「ひと山」のことですが、この意味は今では通常感じられなくなり、lot of が後の名詞を形容詞のように修飾していると感じられています。この種の表現も本来 of の後に掲称的語局が生じていたと考えられますが、現在ではそのような掲称性はほとんどないと考えられます。例を挙げましょう。全て「たくさんの…」という意味です(不可算名詞のみに使う表現もあります)。

(U) a lot of (or lots of)  plenty of  a pile of (or piles of)  a heap of (or heaps of)  a host of (or hosts of)  a crowd of (or crowds of)  a herd of  a body of  a pack of  a shoal of  a (large, great, good) number of  a great (or good) deal of  a great (or large) amount of  a great (or large) quantity of  a volume of など

また、a small number of(数少ない…)や a growing number of(より多くの数の…)なども同様です。

(7)There are a lot of (or lots of) trees in the park.(この公園には木がたくさんある)『ルミナス英和辞典』
(8)We have a lot of (or lots of) rain in June.(6月にはよく雨が降ります)『同上』

なお、of の後に定名詞(句)(the, one's, these などで限定された名詞や代名詞など特定された名詞)が来る場合は、「…のうちの大部分」(この of は部分を表す of)を表す用法であり、ここで述べている無冠詞を要求する場合とは異なります。

(9)A lot of the book is about genetic engineering.(その本の大部分は遺伝子工学に関することだ)『ジーニアス英和辞典』

of(「…の集団・群れ」)

 上記の単語の多くは「多くの…」以外に「…の群れ」という意味を持ちますが、この意味の場合も同様に、of の後に無冠詞の名詞が入ります。「群れ」ですから当然その名詞は複数形です。次のような表現があります。

(V) a group of(…の集団) a crowd of(…の群衆) a flock of((ヒツジ・ヤギ・鳥などの)群れ) a herd of((牛・馬などの)群れ) a drove of((牛・ヒツジなどの)移動する群れ) a flight of((鳥などの)飛んでいる群れ) a pack of((犬・狼などの)群れ) a swarm of((昆虫などの)群れ) a covey of((ウズラ・シャコなどの)群れ) a shoal of((魚などの)群れ) a school of((魚・クジラ・イルカなどの)群れ) a bunch of((盗賊などの)群れ・(花などの)束) a collection of(…のコレクション) など

(10)A group of children was (or were) playing baseball in the park.(子供たちの一団が公園で野球をしていた)『ルミナス英和辞典』
(11)I ran towards the group of people who were standing around the body on the ground to see if I could help.(私は、助けることができないかと、地面に横たわっているその人の周りに立っている一団の人々の方へと走って行った)
『http://news.bbc.co.uk/1/hi/northern_ireland/1169557.stm』

of(「集団・群れ+ of +代名詞」)

(11)から分かるように、who 以下の文で people が特定され、the を付けたくなりますが、the は group の方だけに付けます("the" + "group-of-children" というイメージ)。「その子供たちの一団」は "the group of children" であり、a (or the) group of the children とは普通言いません。しかし、「彼らの一団」や「私たちのグループ」のように人称代名詞が関連している場合は "their (or our, your) group" の他に "a group of them (or us, you)" も使われることがあります。これは、「彼ら(私たち、あなたたち)が1つのグループである」ことを紹介導入する場合に用いられます。つまり「(1つの)グループである(グループとなっている)彼ら」、「彼らはグループなのであるが」あるいは「彼らは(1つの)グループとなって」といったようなことを述べたいケースです。普通の名詞との違いは、代名詞の方が "the+名詞" よりも名詞を特定する力が弱く、逆に、漠然と総称を表す傾向が強いためだと考えられます(「冠詞に関する覚え書 (16)」の「総称の不定冠詞と代名詞」の部分と関連)。とにかく、「その子供たちのグループ」は the group of children であるが、それと同じことを「彼ら(=その子供たち)のグループ」と言うなら、their group が普通で、a group of them も使われることがあるということです。代名詞の例を幾つか挙げておきます。

(12)A group of us went to raise the issue at a TUC meeting, but the union leaders wouldn't let us speak.(私たちのグループは 労働組合会議にこの問題を提起しに行ったが、組合の幹部たちは私たちに発言させようとしなかった)
『http://www.socialistworker.co.uk/article.php4?article_id=3143』
(13)A group of us - gay men and women - met to form the first lobbying group for gay teachers, students, and workers.(同性愛者である私たちのグループは、ゲイの教師、学生、勤労者のための初めての支援団体を作るために集まった)
『http://www.infopt.demon.co.uk/nestle.htm』
(14)They had spent the night drinking heavily in the Swan pub in Ironbridge on Sunday, celebrating a birthday. When the ambulance arrived at 11pm, a group of them jumped into the back of it.(彼らはその日曜日の夜 Ironbridge のスワンパブで、誕生日のお祝いをしながら酒をたっぷり飲んでいた。救急車が11時に到着すると、彼らは一団となってその奥の方に飛び乗った)
『http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2006/01/12/namb12.xml&sSheet=/news/2006/01/12/ixhome.html』
(15)There was a large flock of them, and they were flying, as they usually do, in a straight line.(それらの大きな群がいて、いつものように真っ直ぐに飛んでいた)
『http://www.athelstane.co.uk/er_young/sumrad3b/tbwnl15.htm』

of(「一連の…」)

 また、次のような表現も a group of などと同様です。

(W) a series of(一連の…) a succession of(一連の…) a sequence of(一連の…) a chain of(一連の) a train of(一連の…) a set of(一連の・1組の…) a variety of(さまざまな…) hundreds of(何百もの…) thousands of(何千もの…) millions of(何百万もの…) dozens of(何ダースもの…) など

(16)A series of lectures was (or were) given.(一連の講義が行われた)『ジーニアス英和辞典』
(17)A variety of books are (or is) available here.(さまざまな本がここには用意されている)
(18)Hundreds of people gathered there.(何百人という人々がそこに集まった)『ルミナス英和辞典』

of(a piece of など)

 さて次に、似たような形で無冠詞の不可算名詞と用いられる表現がたくさんあります。a piece of, a bit of など不可算名詞と用いて「1つの…」あるいは「…1つ」を表す表現です。これらの表現の of の次には原則として無冠詞の名詞が入りますが、これも kind of や lot of と同じであり、掲称的語局であったものが、熟語化したとみなすことができます。次のようなものがあります。

(X) a piece of(…1つ) a bit of (…1つ) a blade of(…1枚) a block of(…1個) a cake of(…1個) a cut of(…1切れ) a deck of …((トランプなど)1組) a pack of(…1箱) a drop of(…1滴) a grain of(…1粒) an item of(…1つ) a lump of(…1塊) a sheet of(…1枚) a slice of(…1枚) a speck of((ちり・染みなど)1つ) a stick of …(…1本) a strip of(…1片) a suit of(…1式) a glass of(…1杯) a cup of(…コップ1杯) a jar of(…1ビン) a bucketful of(…バケツ1杯) a handful of(…1握り) a spoonful of(…スプーン1杯) a meter of(…1メートル) a mile of(…1マイル) a hectare of(…1ヘクタール) a square mile of(…1平方メートル) a liter of(…1リットル) など

(19)a piece of wood(木片1つ)『ルミナス英和辞典』
(20)two pieces of chalk(チョーク2本)『同上』
(21)several interesting pieces of news(いくつかの興味あるニュース)『ジーニアス英和辞典』
(22)a piece of good news(1つの良い知らせ)(good と news の結びつきが強い)『同上』

of の後に複数形が入る例

 また、上記の表現と同じように、of の後の名詞が無冠詞になりますが、複数形の名詞が使われる表現もあります。a kilogram of(…1キログラム) や a ton of(…1トン)などがそれです。これらは、of の後に不可算名詞も可算名詞も可能です。

(23)10 tons of stone(10トンの石)
(24)10 tons of stones(同上)

なお、上記(4)の2つ目の these kind of cars のように、10 ton of stones や 10 ton of books のように ton を単数形にする例も散見されますが、kind の場合ほどは使われていませんから、避けるべきでしょう。また、"book" など明らかな可算名詞が用いられている場合、ten tons of book というように、of の後に無冠詞単数形を使うのは不自然です。この of は、可算名詞を単数無冠詞で使えるほど掲称性が強くありません((4)に示した these kinds of car との違いに注意。kind の場合は car のように可算名詞の無冠詞単数も可能)。

of の後に定冠詞が入る例

 上記 a piece of などの場合に注意すべきことは、of の後に冠詞付きの名詞が来ることもあるということです。この場合は、上記の例とは別の用法であり、「…のうちの1片」という意味です。これは(9)で示した a lot of the book(その本の大部分)と同じであり、この of は「部分」(…のうちの)を表す of です。

(25)Give me a piece of the pie.(そのパイを一切れ下さい)
(26)It is Jewish-run, financed by the Jewish community, but nowadays only a handful of the actual patients are Jewish.(そこはユダヤ人によって運営されており、ユダヤ人社会から資金を得ているが、現在、実際の患者のうちユダヤ人はほんの一握りである)
『http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/711917.stm』

of(数詞 of …)

これと同じように部分を表す of が用いられる表現には次のようなものがあります。"数詞 of …" の形で、"…" には特定された名詞(定名詞句:the 〜, one's 〜, these 〜, those 〜, 人称代名詞など)が入ります。特定されていない無冠詞の名詞は不可です。なお、hundreds of などはこの型とは異なりますから注意して下さい(上記(18)なども参照)。

(Y) all of(…の全て) both of(…の両方) half of(…の半分) most of(…の大半) many of(…の多く) much of(…の多く) some of(…の幾らか) any of(…のどんなものも・何等かのもの) one of(…の1つ) few of(…の少数) each of(…の各々) など

(27)× all of books  × a hundred of books
(28)all of the books(それらの本全て)
(29)all of them(それらの全て)
(30)all books((漠然と)全ての本)
(31)a hundred of the books(それらの本のうちの100冊)
(32)a hundred books(100冊の本)
(33)two hundred books(200冊の本) the two hundred books(それらの200冊の本)
(34)hundreds of books(何百冊もの本)

all を初めとするこれらの単語は、本来、形容詞として使われるものですから、(27)のように無冠詞の場合、of は用いず、(30)あるいは(32)の表現を用います。

まとめ

 以上、ここまで挙げてきた表現を規定関係の観点から述べておきます。普通、A of B という形は「B の A」を意味し、of B が A を規定しますが、a kind of car, a lot of cars, a group of people, a series of lectures, a piece of wood など上記(T)から(X)に挙げた表現は、of B が A を規定している(B の A)とも、A of が B を規定している(A の B)とも考えられます。これが明確に現れているのは、例えば、上記(10)の例のように、a group of children が主語のとき、動詞が was と were の両方が可能だという点です。また、(4)に挙げた these kinds of car が主語ならば動詞は kinds に対応し、these kind of cars の場合は cars に動詞の形を合わせます。くだけた表現ほど、A of が 形容詞のように B を規定していると感じられる傾向にあります。また、使用頻度が高く完全に熟語化している a lot (or lots) of や plenty of も、通例、A of が B を規定していると感じられます。それは、例えば、lots of water のように of の後に不可算名詞が来ている場合、Lots of water is のように動詞が単数に呼応した形になることから分かります。一方、(Y)に挙げた all of などの表現は、A of B の of B が A を規定している型です。上記(9)の a lot of the book や(25)の a piece of the pie も同様です。

「the number of …」など

 次に、A of B の of B が A を規定していながら、B に無冠詞の名詞が原則として用いられる表現を見ておきます。このような表現はあまりないようですが、特に注意すべきものは the number of(…の数)でしょう。

(35)The number of (× the) cars has been increasing.(自動車の数が増えている)『ジーニアス英和辞典』
(36)The number of boys in our class is twenty-five.(私たちのクラスの男子生徒数は25人です)『ルミナス英和辞典』
(37)Look at the number of books I have written!(私が書いた本の数を見て!)
『http://www.shu.ac.uk/schools/cs/corvey/corinne/1%20morgan/morgan%20biography.htm』
(38)The whale is the biggest animal that lives on the earth. In the 19th century, large-scale hunting of whales was carried out to get the fat and the number of whales (or ×them) decreased remarkably. It was determined by international agreement to protect the whale, so hunting whales is prohibited now.(鯨は地球に住む生物の中でもっとも巨大な動物である。19世紀には脂肪を採取するために捕鯨が大規模に行われ、その数が激減した。鯨の保護が国際的に取り決められ、捕鯨は現在禁止されている)『クニヒロの入試の英作36景第6集』(南雲堂)
(39)The whale is the hugest animal on (the) earth. In the 19th century, people hunted it to extreme in order to get its oil, so that the number of whales (or ×it) dramatically decreased. So the nations of the world decided to protect it and today whaling is banned.(同上)

(35)の文は、総称として一般的な車のことを述べているので、無冠詞複数形が用いられるのは当然です。the cars とすると、特定の複数の車を指すことになります。(36)と(37)はそれぞれ「私たちのクラスの」、「私が書いた」に修飾され、特定された「少年」と「本」なので、普通ならば定冠詞を使うところでしょうが、the number of の後なので無冠詞が使われています。定冠詞を使うのは不自然です。(38)と(39)は代名詞を使うのもやはり不自然であることが示されています。特に(39)のように単数の代名詞(総称の名詞を受けたものであっても)を the number of の目的語としては使いません。(38)は、the number of them ではなく、their number とすれば、まだ許容されます。以上のように、the number of の後には無冠詞の複数名詞が入るのが原則ですが、文脈上、定名詞句を使わずに表現するのが難しい場合には、定名詞句が用いられる場合もあります。ただし、これはまれです。

(40)As HIV multiplies, it destroys CD4 cells, so that the number of these cells declines.(HIV は増殖していくにつれて CD4 細胞を破壊するので、CD4 細胞の数は減る)
『http://hcd2.bupa.co.uk/fact_sheets/html/aids.html』

もし、the number of cells とすると、「一般の細胞の数が減る」と読まれかねないために、念のために these を使っていると考えることができます。なお、次のような例は、ここで議論している型(「いくつか」という個数を問題としている場合)とは明らかに違いますから、注意して下さい。

(41)"What is the number of the car." − "24545"(「その車のナンバーは?」「24545です」)
『http://www.bermuda.org.uk/23_03_e_wellman.htm』
(42)In many languages, adjectives are declined according to the number of the noun they modify.(多くの言語で、形容詞はそれが修飾する名詞の数に応じて変化する)
『http://pedia.newsfilter.co.uk/wikipedia/g/gr/grammatical_number.html』

the number of と同じように用いられるものに、the amount of(…の量)や the quantity of(…の数量)、the volume of(…の量)などがあります。

(43)Loss is the amount of money that a business loses.(損失とは企業が失うお金の量である)
『http://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/spanish/click/gloss.htm』
(44)Domestic appliances designed to make life easier are failing to reduce the overall amount of time spent doing housework.(生活を楽にするように設計された家電製品によって、家事に費やされる総時間が減ることはないだろう)
『http://www.timesonline.co.uk/article/0,,2087-1268876,00.html』
(45)The barrier to increased recycling in steel, as in aluminium, is the quantity of metal collected.(鋼のリサイクル量を増やす際に障害となっているものは、アルミニウムの場合と同じように、回収される金属の量である)
『http://www.defra.gov.uk/environment/waste/topics/packaging/pwreg97/12.htm』
(46)Despite the increase in the volume of exports of oil, the financial target of the $3.1 billion required for the implementation of the enhanced distribution plan had not been met due to low oil prices.(石油の輸出量が増加しているにもかかわらず、配給品を増やすという計画に必要な31億ドルという資金面での目標額は、石油価格が低かったために達成されなかった)
『http://www.brad.ac.uk/acad/confres/monitor/russia-mideast.html』

「the 量 of the 名詞」の例

次の例は、紛らわしいですが、上記の例とは微妙に違い、定冠詞が普通に用いられます。

(47)These records reflect both the date and the amount of the payment.(これらの記録にはその支払日と支払額の両方が記載される)
『http://www.co.lake.il.us/circlk/childsup.asp』
(48)The product shall not be considered adulterated under this definition if the quantity of the substance in or on the product does not ordinarily render it injurious to health.(本条項においては、生産品の内部または表面に含まれているその物質の量によってその生産品が通常健康に有害なものとならない限り、その生産品は不良品とは見なされないものとする)
『http://www.leg.state.vt.us/statutes/fullsection.cfm?Title=06&Chapter=204&Section=03302』
(49)Nominal totals for expenditure on many different commodities can be arrived at simply by multiplying the quantity of the commodity by its price.(多くのさまざまな商品に対する支出の名目総額は、単に当該の商品の量にその価格を掛けることで求められる)
『http://www.bized.ac.uk/timeweb/buffing/buff_describe_illus.htm』

定冠詞とも用いられるこれらの名詞は、本来、無冠詞で使われる名詞を受けられる名詞です。つまり、「そのお金」の「量」というとき、普通、"the amount of the money" ではなく "the amount of money" と述べますが、例えば、「そのお金」を文脈上、"the payment"(その支払金)という表現で受けられるとき、the amount of the payment になるということです。同様のことが、the substance, the commodity などにも言えます。metal を the substance で受けるような場合です。また別の方向から述べると、payment や substance という名詞は、特定されずに漠然と使うことはほとんどなく、「どの支払い(額)」や「どの物質」であるかが問題となっている場合に用いられる言葉ですから、無冠詞単数形になることは少なくなります。

 このような名詞の多くは、量の概念をそれ自体に含んでいる名詞です。「支払金」の意味も含む payment、「賞金」を意味する award、その他

cost(費用)、loss(損失)、deduction(控除)、charge(手数料)、income(収入)、value(価値・対価)、fee(入場料金)、charge(使用料)など

で、これらの名詞はその名詞が特定されている場合、定冠詞と用いられます。逆に言えば、それ自体に量の概念を含まない名詞、例えば

water, money, air, time, sleep, information, work など

の名詞は、無冠詞で用いられるのが原則であり、定冠詞と用いるのはまれです(例外的に、契約書や法律文書などで誤解を避けるために、the amount of the money のような形が使われることがあります)。規定関係で言うと、the amount of water が "the" + "amount-of-water" という感触に近くなっているのに対し、the amount of the payment などの場合は明らかに "the amount" + "of the payment" です。なお、the amount of the payment のような表現は、状況によっては冗長的な表現となり、the amount of を省いても意味が変わらないことがあります。また逆に、the payment だけでは不明確だと感じられた場合に、the amount of the payment が使われることも多いと考えられます。

(50)The amount of the payment is determined actuarially by the age of the participant and any beneficiary.(支給額は、保険数理に基づき、加入者および受取人の年齢によって決定される)
『http://www.3ps.co.uk/3ps/mysql_manual/index.php?path=http://web.mit.edu/faculty/reports/final-pension.html』
(51)The pension is based on a proportion of your immediate salary before retirement, and the payment is determined by years employed.(年金は退職直前の給与の比率に基づいており、支給額は雇用年数によって決定される)
『http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml?xml=/news/2005/12/01/npens501.xml』

「of 可算名詞の総称」の場合

 話を先に進めましょう。of の後の名詞をどのように表現するかで、特に非ネィティブスピーカーが少し迷う表現に「…の起源」、「…の発明(者)」、「…の歴史」、「…の選択」などで、"…" に総称の名詞、特に可算名詞の総称的な表現を入れたい場合です(不可算と可算の両方の用法を持つ名詞の場合は、掲称的語局の影響で無冠詞単数形(つまり不可算扱い)が普通です。具体的な「ある…」を入れるときは不定冠詞です)。結論としては、可算名詞の場合、無冠詞単数形は使わず、「無冠詞の複数形」か「定冠詞+単数形(この定冠詞は通念の定冠詞)」を使います。

(52)There are also web sites available to research the history of cars.(車の歴史を調べられるサイトもある)
『http://senior.billings.k12.mt.us/bexpress/index2.php?section=indepth&id=109』
(53)He claimed to be the inventor of the telescope although he does not appear to have constructed one before Galileo.(彼は、ガリレオより前に望遠鏡を作ってはいないようだが、望遠鏡の発明者であると主張した)
『http://www-groups.dcs.st-and.ac.uk/~history/Posters2/Porta.html』
(54)It is truly made exciting, when we see our words take shape in the form of a book.(自分たちの言葉が本という形で現れると、本当にわくわくする)
『http://www.macomb.k12.mi.us/utica/morgan/second.htm』

「talking of」など

 of の後に無冠詞の名詞が用いられる表現に、talking of(…と言えば)と speaking of(…と言えば)があります。この表現の of の次には、可算名詞の場合、総称を表す無冠詞の複数形が用いられ、不可算名詞の場合、無冠詞単数形が用いられます。

(55)Talking of drinks, I've got a case of champagne in the car.(お酒と言えば、車の中にシャンペンが一箱あります)『ランダムハウス英和大辞典』
(56)Speaking of movies, have you seen Gone With the Wind?(映画と言えば、『風と共に去りぬ』を見たことがありますか)『同上』
(57)Speaking of water, I don't know why taste and smell were lacking.(水と言えば、なぜ味と匂いがなかったのか分からない)
『http://bubl.ac.uk/org/tacit/tac/tac37/zenagain.htm』

なお、次のような文の speaking of は "speak of O = O について述べる" という普通の分詞構文です。この場合には、定冠詞付きの名詞も普通に用いられます。

(58)Speaking of the need for humanitarian efforts in our world, John F. Kennedy once said, "For of those to whom much is given, much is required."(John F. Kennedy は、私たちの世界に人道的な努力が必要であることを語り、さらに「多くを与えられる者には多くが要求される」とかつて述べた)
『http://www.ltgov.state.tx.us/Speeches/』

以上、of を中心に見てきましたが、可算名詞が単数無冠詞で使われるほど掲称性が強い表現は、最初に挙げた(T)の kind of のタイプだけだということになります。

of 以外の掲称的語局

 さて、ここからは of 以外で掲称的語局を作りやすい表現を見ていきましょう。まず、as を含んだ熟語で、"(as) … as S V 〜 = … though S V 〜 = …であるけれども" という表現です。as や though の前の "…" には、一般的に形容詞や副詞が入ることが多いのですが、やや古風な表現では名詞がその位置に来ることがあり、その際、可算名詞であっても無冠詞となります。掲称力が強く冠詞が落ちてしまいます。

(59)Egoist as he was, he was loved by his parents.(彼はわがままだったが、彼は両親に愛された)『ジーニアス英和辞典』
(60)Coward though (or as) he was, he took on the task.(臆病者ではあったが、彼はその任を引き受けた)『ロイヤル英文法』

 無冠詞が用いられやすい重要な語局に補語があります。補語とは「A = B」という関係が成立している場合の「= B」に相当する部分のことで、例えば、「A」が主語であれば "S = B"、「A」が目的語であれば "O = B" であり、それぞれいわゆる主格補語(下記(61))、目的格補語(下記(62))と呼ばれるものです。他に、前置詞の as B((A =) B として)や "A, B"(A つまり B、A である B)という同格の表現などに現れます。補語の位置で無冠詞として用いられるのは、主に単独の人が占める役職や地位を表す名詞です。単独であることが明らかであれば、定冠詞を落としても、複数のうちの一人であるという誤解が生じにくいからです。補語の冠詞が落ちやすいことについては、「冠詞に関する覚え書 (28)」で述べていますが、同じ例文をもう一度挙げておきます。「単独」の人が占める役職や地位を表すということは、他に同じものはなく、特定されるということですから、the が用いられることもあります。また、前置詞の as の場合は掲称する力が強いので、定冠詞だけでなく、一般的に落ちにくい不定冠詞が省略されることもあります(下記(66))。

(61)He was director of the Institute of International Affairs.(彼は国際問題研究所の所長だった)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(62)They elected George captain of the club. (彼らはジョージをそのクラブのキャプテンに選んだ)『同上』
(63)As (the) chairman of the committee, I declare the meeting closed.(委員長として、会議の閉会を宣言します)『英文法解説』(金子書房)
(64)Who will act as principal?(だれが校長代理をするのか)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(65)Darwin, (the) author of "The Origin of Species" was born in 1809.(『種の起源』の著者であるダーウィンは1809年に生まれた)『英文法解説』(金子書房)
(66)She acted as (an) interpreter at the international conference.(彼女は国際会議で通訳(の1人)を務めました)『英文法解説』(金子書房)

 定冠詞や不定冠詞を用いた場合と無冠詞の場合との違いは、文体上の違いです。無冠詞の方が、簡潔できびきびとしており、直接的な鋭さがあり、時に事務的で無味乾燥な感触を伴うことがあります。一方、定冠詞の場合は時に悠長で典雅であり、のんびりしており、柔らかい感じを伴います。不定冠詞は、個別性や質の含みが感じられ、「何、どれ、どの」というよりも、「どんな、どのような、どんな風な」を述べようとしていると言えます。ただし、このような差は非常に微妙であることが多く、ネィティブスピーカーですら、明確に意識していない場合もあり、おそらくうまく説明できないことが多いでしょう(これは、冠詞の用法が揺れているケース全てに言えることです)。

 今回は、ここまでとします。次回も無冠詞を扱う予定です。

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