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目次

<冠詞に関する覚え書>
指示力なき指示詞としての定冠詞:間接規定

第5話 換称代名詞



= 覚え書(5) =

換称代名詞(同語の反復の回避)

 これまで、「間接的に規定される場合の定冠詞」と、それを巡る多少微妙な問題点を扱ってきましたが、今回は、ある名詞を代名詞で受けたり、同じ語を2度繰り返すのを避けるために用いられる "the 名詞" をまず扱います。(1)〜(3)は大学入試問題、(4)は Newsweek 誌、(5)は朝日新聞からの引用です。

(1)The first essential in elephant training is to assign to the animal a single trainer who will be entirely responsible for the job.(象の調教においてまず重要なことは、その仕事の全責任を負う一人の調教師に象の訓練をするように命じることである)
(2)Then the third night, when this story begins, the monkey again brought the master the necklace, and fell at his feet, dead. Shot. Very probably the monkey had been fatally wounded by a guard as he was escaping.
The man shuddered at the diamond, and was not surprised at the death of his friend.
The first two times it had been like some unusual accident to unexpectedly discover oneself in possession of part of the British crown jewels! But now ...
When he received the gems for the third time the whole thing was plunged into meaning. It no longer seemed like an accident. He had been given the necklace. Fate was at work. Now, the necklace was his.
He put it in his pocket.
It never occurred to him to doubt the reality of the curse which accompanied the diamond, and he accepted his fate with the stone. Quietly and secretly he buried the animal.(そして三日目の夜、この物語の始まるときだが、猿はまた主人にそのネックレスを持ってきて、男の足元に崩れ落ち死んでしまったのだった。銃で撃たれたのだ。恐らく猿は逃げているとき、警備係に撃たれて致命傷を負ったのだろう。
 男はダイヤモンドを見て身震いしたが、友人の死に驚いたのではなかった。
 最初の二回は、英国王室の宝石の一部分を予期せず手に入れたのは、まれに起こる偶然のようだった。だが、今回は …。
 三回目に宝石を手にしたとき、すべての出来事の意味が分かった。男は思った。もはや偶然とは言えない。彼はネックレスを与えられていたのだ。運命は動き出していた。今やネックレスは彼のものなのである。
 男はポケットにネックレスを入れた。
 ダイヤモンドにまつわる呪いが事実だということに、彼は疑いようもなかった。宝石とともに自分の運命をも受け入れたのだった。男は静かにこっそりと猿を埋めた。)
(3)Surat is one of the busiest commercial centers in India. Its factories and workshops produce cut diamonds, chemicals, and textiles. Beggars, who are so numerous in other Indian cities, are almost nowhere to be seen, making Surat, by many standards, a picture of India's prosperous future.
What is wrong with the picture, however, is obvious to any visitor to the city of 2 million in Gujarat State. Toilet wastes flow into the Tapi River. Factories release pollution; rats are so numerous that in late 1994 a deadly disease spread through Surat, causing 50 deaths and endangering the whole country.(スラトはインドにおける最も活気のある商業の中心地のひとつである。そこの工場や作業場ではカットされたダイヤモンドや化学製品や織物が作られている。インドのその他の都市では非常に多くの物乞いが見られるが、ここではほとんどどこにも見られないため、スラトは多くの基準から見てもインドの繁栄の未来を示す模範となった。
 しかしながら、そのグジャラート州の200万人都市を訪れる観光客の目には、その模範である都市の悪い点が明らかである。トイレの汚水がタピ川に流れこんでいる。工場は公害をまきちらしている。ネズミの数があまりに多いため、1994年の後半には致命的な伝染病がスラト中に広がり、50人の死者を出し、国全体を危機的状況に陥らせた。)
(4)No wonder Japanese women adore her. Kurihara, a svelte and youthful 54, is Japan's answer to Martha Stewart. Like the American lifestyle guru, she has a rapidly expanding publishing, retail and restaurant business, including her own glossey quarterly, Lovely Recipes.(日本の女性たちが彼女を敬愛するのは当然である。栗原さんは、ほっそりとした若々しい54歳であり、日本のマーサ・スチュワートである。このアメリカのライフスタイルの師と同じように、栗原さんも出版業、小売業、飲食業を急激に拡大させており、自らの高級季刊誌 "Lovely Recipes" も出版している。)
(5)When he made his World Cup debut for Japan in France '98, the former Nirasaki High School student was a 21-year-old member of the J.League club Bellmare Hiratsuka.(彼が'98年のフランス大会で日本代表としてワールドカップにデビューしたとき、この元韮崎高校の生徒は、Jリーグのベルマーレ平塚に所属する21歳であった。)

(1)では、前の "elephant" を受けて "the animal"、"elephant training" を受けて "the job" と表現されています。
(2)は、"the master" あるいは "he" を受けて "the man"、"the necklace" を受けて "the diamond"、さらにそれは "the gems", "the stone" と言い換えられています。さらに、"the whole thing" はその前で述べられていること全体を一言にまとめて言い換えています。最後の "the animal" は最初の方にある "the monkey" を言い換えています。
(3)の "the city of 2 million in Guiarat State" は "Surat" のことであり、"the whole country" はインドのことです。
(4)では、"Martha Stewart" が "the American lifestyle guru" に言い換えられています。
(5)はもちろん、中田英寿選手の話ですが、"the former Nirasaki High School student" という、日本語ではちょっと考えられないような言い換えをしています。

 このような例は幾らでも挙げることができますが、これは、英語では(ドイツ語やフランス語でも)「名詞に限らず同じ語句をすぐに繰り返して使うと間の抜けた表現に聞こえるので、何か特殊な理由がない限り、二度目には必ず用語を変えなければ気がすまない」、というヨーロッパ語全体に通じる語感に基づいています。一方、日本語ではそのような語感は非常に弱いですから、英語を読むときはもちろんのこと、英語で書いたり、話したりするときも、同じ語句の繰り返しを避けるための "the 名詞" という用法を深く意識しておく必要があります。関口存男氏はこの "the 名詞" を「換称代名詞」と呼んでいます。以前、「冠詞に関する覚え書 (2)」で挙げた(8)の文で用いられている定冠詞も、実は、換称代名詞です。
We're going to have a Pen Pal Club. The idea was suggested by our teacher.(ペンパル・クラブを作る予定です。その案は先生が出しました)『英文法解説』(金子書房)

one's および指示代名詞の例

 以上は "the" の例ですが、「誰の〜」であるかを述べたい場合や、はっきりと指し示したい場合には、"one's" や "this" を使うことができます。上記(2)の
The man shuddered at the diamond, and was not surprised at the death of his friend.
という文の最後にある "his friend" は "the monkey" のことですが、「誰の友だち」であるかを明示しています。"this" の例も挙げておきます。

(6)How does the rest of the world view Japan, and why? In the nineteenth century, the powerful countries of the West thought that Japan was only half civilized. This idea was encouraged by samurai acts of violence towards foreigners and news of customs such as harakiri.(世界の他の国々は、日本にどのような見解を持っているのだろうか。そして、何故そのような見解を持つのであろうか。19世紀、西洋の力のある国々は、日本は半分しか文明化されていない国と考えていた。この考えは、外国人に対する侍の暴力的な行動や切腹のような習慣によって、一層助長された。)
(7)The final problem is the lack of reasonable housing in Metro City. This is a fascinating city that offers an exciting lifestyle for young, ambitious business and professional people. Also, immigrants are attracted to this city because it offers many unskilled job opportunities.(最後の問題は、メトロポリタンシテイにおける手頃な住宅の不足である。この都市は、若くて野望のある実業家や専門職の人々のために、刺激的なライフスタイルを提供する魅力的な都市である。また、この都市は専門的訓練を要しない仕事を得る機会が多くあるので、移民たちも惹きつけられる。)

 なお、"one's" について、注意しなければならないことがあります。それは、"one's" という語には、暗黙のうちに定冠詞が含まれているということです(「彼の」ではなく「私の」というように「誰の」であるかを明示し、強調する場合はその限りではない)。誤った "one's" の例が、マークピーターセン著『続日本人の英語』(岩波新書)に示されていますから、引用します。

私:What did you do on Sunday?(日曜日、何をしましたか?)
学生:I went to a movie.(映画に行きました)
私:Who(m) did you go with?(誰と行ったのですか?)
学生:I went with my friend.(私の友だちと一緒だったんです)

この会話の "my friend" は「その私の友だち、例の私の友だち」という意味であり、話し手が「どの友だち」のことを述べているのか、聞き手が分かっている場合にしか使えません。聞き手が「どの友だち」のことか分からない場合に、"my friend" を使うと、話し手には「友だち」が一人しかいないという印象を与えてしまいます。この会話では、"a friend" あるいは "one of my friends" を使う必要があります。なお、"my friends" は「私の全ての友だち」のことですが、この場合は、聞き手が「その友だち全て」を知っている必要はありません。「私の全ての友だち」は、いろいろな組み合わせがあるわけではなく、「決まった、特定の友だちの集まり」であるために、"one's" を使います。

当該の状況による間接規定

 さて、ここからは話を少し変えて、状況から「どの〜」を指しているのかが分かる場合について述べたいと思います。 まず、『A Comprehensive Grammar of the English Language』(Longman)からの引用です。

(8)The roses are very beautiful.(バラがとても美しい)
(9)Have you visited the castle.(城を訪れたことがありますか)
(10)I missed both the lectures this morning.(今朝の講義は両方とも出られなかった)
(11)Have you fed the cat?(ネコにえさをやった?)

(8)は、例えば、話し手と聞き手が庭にいて、そこに咲いている「バラ」のことを述べていると考えられます。(9)は、ある場所にいたり、ある場所の話をしており、その場所にある特定の「城」のことを述べていると考えられます。(10)も、聞き手と話し手の両方に特定できる「講義」について述べています。(11)も、聞き手にも話し手にも、「どのネコ」のことを話しているか、分かっているはずです。

 つまり、話し手と聞き手が、"the" が使われることで、話をしている状況それ自体から「どの〜」のことを述べているのかが分かる、ということになります。これは別に、必ずしも話し手と聞き手の両方に「その〜」が見えていなくても構いません。

(12)Don't go in there, chum. The dog will bite you.(そこに入っちゃだめだよ。犬が噛みつくよ)『新英文法選書 第6巻 名詞句の限定表現』(大修館書店)
(13)(盲目の Harry に向かって) Harry, mind the table!(ハリー、テーブルに注意して!)(同上)
(14)(注意書き)Beware of the dog.(犬に注意)(同上)
(15)(隣の部屋で寝ている赤ちゃんについて) We should be quiet. The baby is asleep.(静かにしましょう。赤ちゃんが眠っています)『ロイヤル英文法』(旺文社)

 その他の例を幾つか挙げておきます。

(16)I feel cold. Please shut the window.(寒いね。窓を閉めて下さい)『英文法解説』(金子書房)
(17)Will the change in taxation affect you personally?((今度の)税の改正はあなた自身の税金に影響がありますか)(同上)
(18)Pass me the salt and the pepper.(塩とこしょうを取って下さい)『ロイヤル英文法』(旺文社)
(19)The new election law has passed the committee.((今話題の)新しい選挙法は委員会を通過した)『英語の冠詞がわかる本』(研究社)

いずれも「どの窓」、「どの改正」、「どの塩、どのこしょう」、「どの選挙法」か特定されています。

one's の代用の定冠詞

 次は、普通、"one's" が使われる場面で "the" が用いられている例です。この "the" は、ここで扱っている、状況から分かる "the" だと考えられます。かなりくだけた感じのする表現であると思います。『A Comprehensive Grammar of the English Language』(Longman)からの引用です。

(20)How's the wife?(奥さんは元気?)
(21)Wait till I tell the wife about it!(かみさんに言うまで待ってくれ)
(22)How are the children (or kids)?(子供たちは元気かい?)
(23)How's the old man?(親父さんは元気かい)

(20)と(21)は "your wife"、(22)は "your children"、(23)は "your grandfather" あるいは "your father" の意味だと考えられます。

小説・物語の冒頭

 また、特殊な使い方として、小説や物語の冒頭部分に the が用いられることがあります。物語の中に読者を一気に引き入れる働きがあり、読み進んでいくうちに「どの〜」かが分かっていくことになります。2つほど例を挙げておきましょう。有名な『雪国』(川端康成著)のサイデンステッカー氏の翻訳から。それとサリンジャーの小説の冒頭部分です。

(24)The train came out of the long tunnel into the snow country.(国境の長いトンネルを抜けると雪国であった)
(25)There were ninety-seven New York advertising men in the hotel and, the way they were monopolizing the long-distance lines, the girl in 507 had to wait from noon till almost two-thirty to get her call through.(そのホテルには97人のニューヨークの公告マンが滞在しており、長距離電話を独占していたので、507号室のその女性は正午からほとんど2時半まで電話をつないでもらうのを待たねばならなかった)(J.D.Salinger:A Perfect Day for Bananafish)

"the train, the long tunnel, the hotel, the girl" は、初出であるにもかかわらず、"the" を用いた例であり、通常の用い方とは異なります。

前文の内容による間接規定と当該の状況による間接規定との中間現象

 また、次のように前文で示されたものを指しているのか、話されている状況から分かるものを指しているのか、両方の可能性がある場合があります。

(26)(ロンドンのセント・ポール大聖堂を訪れたときの発話)I hear you were at York Minster last week. Did you visit the tower?(あなたは先週ヨーク大聖堂にいたと聞いていますが、尖塔を訪れましたか)『名詞句の限定表現』(大修館書店)

このような場合は、通例、前文で示されたものと関連があると考えられます。つまり、"the tower" は「ヨーク大聖堂」の「尖塔」のことになります。

通念の定冠詞への接近

 さて、ここら辺りから、ちょっと微妙なケースに移っていきましょう。

(27)I am going to the church.(教会へ行くつもりだ)『名詞句の限定表現』(大修館書店)
(28)You had better go to see the doctor.(医者に診てもらった方が良いよ)(同上)
(29)I'm going to leave the car at the garage on my way to the office.(会社に行く途中で車を修理工場に預けに行くつもりです)『英文法解説』(金子書房)
(30)I have been to the post office.(郵便局に行って来たところだ)『ロイヤル英文法』(旺文社)

これらは、とりあえず、話し手と聞き手の両方にとって、「どの教会」、「どの医者」、「どの車」、「どの修理工場」、「どの事務所」、「どの郵便局」のことを述べているのかが分かっていると考えるのが最も自然でしょう。しかし、同じような表現が、以下に挙げるような文脈で用いられたとき、「どの教会、どの医者、どの事務所、どの郵便局」であるかを一つに特定することはできません。

(31)There is usually a midnight mass on Easter. Sometimes, for the sake of convenience, there is a mass early in the morning, too. Easter marks the end of the period of Lent, and the fast is broken on this day. Before breaking the fast, Christians go to the church for the Holy Communion. After this, they greet each other, wishing each other "Happy Easter".(通常、復活祭では真夜中にミサがある。時には、便宜のために、早朝にミサが行われることもある。復活祭は、受難節の期間が終わったことを意味し、この日に断食が終了する。断食を終える前に、キリスト教徒は聖餐式のために教会へ行く。この後、挨拶を交わし、お互いに「幸せなイースターを」と願う)『http://www.tourismofgoa.com/culture/easter.html』
(32)What if someone has too much stress? − First, they should see the doctor. Then, there will be treatments like tranquilizers and psychotherapy which have been developed to treat stress.(ストレスを抱えすぎている人がいたらどうしましょうか。− まず、医者に診てもらうべきです。そうすれば、ストレスを治療するために開発された鎮静剤や心理療法などの治療があるでしょう)『http://www.jiskha.com/health/mental_health/stress.html』
(33)Every day people go to the office, factory or farm to work to earn their living. But there is an element of risk that one may meet with an accident before reaching the place of work. In addition, there is a risk of failure in all businesses, which entails a risk of loss of income for the employer as well as employees.(毎日、人々は生計を立てるために会社や工場や農場へ仕事をしに行きます。しかし、職場に着く前に事故に遭う危険性が多少なりともあります。さらに、どのようなビジネスでも失敗する危険性があります。そうなれば、従業員だけでなく雇用者も収入がなくなるかもしれません)
(34)If you want further details, you should refer to the post office.(もっと詳しい説明をお求めの方は郵便局に問い合わせてください)『新編英和活用大辞典』(大修館書店)

それぞれ複数の人々を対象として述べていますから、その人々が行く「教会、医師、事務所」、問い合わせる「郵便局」は一箇所ではなく複数存在するはずです。にもかかわらず、(31)から(34)では単数形が使われています。このような使い方を『A Comprehensive Grammar of the English Language』(Longman)では、"sporadic reference" とか "sporadic use" と説明していますが、要するに、「どの教会、どの医師」を考えない、単なる「教会」、単なる「医師」を指していると考えて良いと思います。つまり、「通念(遍在通念)の定冠詞」と考えられます。また、状況によっては、具体的な「ある教会」や「ある医師」を指しているとも、一般的に「教会」や「医師」のことを述べているとも考えられることがあります。例えば、上記(28)の "You had better go to see the doctor." は、「いつも診てもらっている医師」なのか、どの医師、この医師を考えない「医師」なのか、実はよく分かりません。

 「通念の定冠詞」に関しては、いずれまとめて述べる予定ですが、同様の例としては次のようなものがあります。まず、マスコミ、交通手段、通信手段を表す語です。

(35)He hasn't been in the news for some time.(ここしばらく彼のことは話題になっていない)『新編英和活用大辞典』(研究社)
(36)All ships were instructed to pay close attention to hurricane warnings on the radio.(すべての船舶はラジオのハリケーン警報によく注意するように指導を受けた)(同上)
(37)He is proud of his ability to read the newspaper in English.(英字新聞を読む力を自慢している)(同上)
(38)My assignment to Washington was announced in the press.(私がワシントンに派遣されることが新聞に報道された)(同上)
(39)He agreed to be interviewed by the press.(報道関係者のインタビューを受けることに同意した)(同上)
(40)I ride the bus to work.(私はバス通勤だ)(同上)
(41)It is an hour's journey in (or on) the train and bus.(そこは列車とバスで 1 時間だ)(同上)
(42)Your letter and mine must have crossed in the post.(あなたの手紙と私の手紙は郵送中に行き違ったに違いない)(同上)
(43)We communicate with each other on the telephone.(互いに電話で連絡しあっている)(同上)

 さらに、ときどき、あるいはよく出かける場所も同様です。いつも行く特定の劇場や店であるか、通念として劇場や店を指しているのかは、よく分かりません。

(44)My sister goes to the theatre every month.(私の姉は毎月芝居を見に行く)『A Comprehensive Grammar of the English Language』(Longman)
(45)I'm going to the butcher's (shop) to get some meat.(肉を買いに肉屋さんに行くところです)『英文法解説』(金子書房)
(46)Jack is at the dentist's (office).(ジャックは歯医者に行っています)
(47)I go to the barber twice a month.(月に2回床屋へ行きます)

その他、the hairdresser's(美容院)、the baker's(パン屋)、the chemist's(薬局)、the florist's(花屋)などがあります。

 「通念の定冠詞」は、非常にやっかいであり、例えば、英語、ドイツ語、フランス語を比較したとき、この「通念の定冠詞」は、各言語によって用い方に相当な差があります。フランス語は英語に比べると、この「通念の定冠詞」をはるかによく用いますし、ドイツ語も英語と比較すれば、かなりよく用います。各言語によって、通念化しやすさのレベルが異なり、また、1つの言語内でも単語や概念によって通念化しやすさのレベルが違うと考えられます。これには、その単語や概念が「日常的な生活の中にどれほど浸透しているか」(「何それ?」という反応が生じやすいか、生じにくいか)、「差別化・個別化が起こりやすいか、起こりにくいか」(「どの〜か、どんな〜か」という疑問が生じやすいか、生じにくいか)、述べられている内容が「一般的真理や普遍的真理に近いのか、それとも特定の具体的な状況を描写しているのか」、その単語や概念が「可算名詞としての性質が強いのか、不可算名詞としての性質が強いのか」といった問題が絡んで来ると考えられます。

 「通念の定冠詞」については、形容詞(句、節)と冠詞の関係、同格と冠詞の関係などを扱った後に述べる予定です。

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