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目次

<冠詞に関する覚え書>
指示力なき指示詞としての定冠詞:直接規定

第9話 A 前置詞 B
(of とその他の前置詞との相違)




= 覚え書(9) =

 前回まで、"of" を中心に述べてきましたが、今回は "of" とその他の前置詞の違いを中心に述べます。

「A of B」

 まず、"of 〜" に修飾された名詞が、限定され、特定されたと見なされたときは、定冠詞を用います。例えば、(1)の例は、単に「何の重要性」であるかを意識して、「この発見の重要性」と述べているだけであり、さらに「この発見の重要性」に「いろいろな重要性」を意識するまでには至っていません。そのために定冠詞が用いられています。

(1)He was the first by far to understand the importance of this discovery.(彼はこの発見の重要性をひときわ早く理解した人だった)『新編英和活用大辞典』
(2)You can imagine the smell of that fish market.(あの魚市場のにおいを想像することができるでしょう)『英誤を診る』(進学研究社)
(3)No-one in the shop knows the selling price of it.(その店の誰もそれの売値を知らない)『同上』
(4)It gave me a most delightful sensation to make my way step by step feeling the resistance of the water.(歩くたびに水の抵抗を感じながら進んでいくのは、何とも言えず心地よかった)『同上』
(5)A map ought to take on the character of a work of art.(地図は、当然ながら芸術作品の性格を持つはずである)『同上』

of と of 以外の前置詞との比較

 では、次の例を見て下さい。

(6)The people of California have a high standard of living.(カリフォルニアの人々の生活水準は高い)『英誤を診る』(進学研究社)
(7)People in California have a high standard of living.(同上)『同上』

(6)を "People of California" とはしません。"of California" によって "people" が特定され、"The people" になります。一方、(7)を "The people in California" とすると、"in California" ではなく、文脈から分かる特定の人々を指すと考えられ、「カリフォルニアのその人々」という意味に解釈されるのが普通です。同様の例を挙げます。

(8)It is often said that young people today don't read as much as they used to. But if we consider that books by popular writers sell well, we cannot assume that the young people of today don't like reading. They are just eager to do interesting things.(最近の若者は以前ほど本を読まないと言われる。しかし人気作家の作品がよく売れていることを考えると、若者が読書嫌いになったとは即断できない。若者はただ自分たちの興味をひくものにだけ熱中するのだ)『クニヒロの入試の英作36景 第4集』(南雲堂)
(9)The textbooks of high school are …(学校の教科書は…)『英誤を診る』(進学研究社)
(10)(The)textbooks in high school …(同上)
(11)I want to get the permission of the principal to take my child to Europe for a month.(私は、自分の子供を一ヶ月間ヨーロッパへ連れていくための校長の許可がほしい)『英語の中の複数と冠詞』(ジャパンタイムズ)
(12)I want to get permission from the principal to take my child to Europe for a month.(同上)
(13)We need the cooperation of Smith to achieve our goal.(目的を達成するためには、我々はスミスの協力が必要である)『同上』
(14)We need cooperation from Smith to achieve our goal.(同上)
(15)The taste of food is a mysterious thing.(料理の味というものは、不思議なものだ)『クニヒロの入試の英作36景 第4集』(南雲堂)
(16)Taste in food is a funny thing.(同上)
(17)On the analogy of the computer, this condition could be described as overload.(コンピューターとの類似によってこの状態はオーバーロードと表現することができる)『新編英和活用大辞典』
(18)English refers to colors as "loud" or "soft" by analogy with sound.(英語では音との類似によって色を loud とか soft と呼ぶ)『同上』
(19)with the view of helping(援助する目的で)『英辞郎』
(20)with a view to helping(同上)

以上のように、"of" は、"in, from, with" などと比べると、前の名詞を限定し、特定する力が強く、前の名詞に "the" を付けることが多いと言えます。"of" 以外の前置詞の場合は、"the" を名詞に付けると、文脈から特定される「その〜」ということになります。例えば、次の2例の違いに注意して下さい。

(21)Mary wanted the doll with blue eyes.(メアリは青い目の人形を欲しがった)『英文法解説』(金子書房)
(22)Mary wanted a doll with blue eyes.(同上)『同上』

(21)の場合、幾つかの人形が選択肢としてあり、その中に「青い目」をした人形が1つしかなく、従って、"with blue eyes" で限定することで、「どの人形」であるか特定されるために "the" が用いられています。それに対し、(22)は、青い目をした人形が複数あり、その中の1つを指しているに過ぎず、「どの人形」であるか特定されていないので、"a" が用いられています。

定冠詞を要求しない of(分類・形容の of)

 一方、"of" の場合に注意しなければならないことは、"of" が使われれば必ず "the" を用いる、といった形式的な考えをしないことです。"of 〜" で修飾されても、前の名詞が特定されたとみなされないときは、"the" にはなりません。

(25)He bought a book of poems.(彼は詩集を買った)『英誤を診る』(進学研究社)
(26)He bought the book of poems.(彼はその詩集を買った)『同上』

(25)の場合、「詩の本、詩集」はたくさんありますから、その1冊を買った、ということです。(26)のように "the" が用いられるのは、文脈上「どの詩集」なのかが分かる場合であり、「(既に述べられた)その詩集」です。

  "of 〜" が前の名詞を特定せず、単に形容・分類を表す典型的な用法は、「〜の性質・特徴を持つ」ということを述べる場合です。また、「〜に関する、〜についての」という意味の場合も同様です。その他、起源や原材料や構成要素を表す場合なども含まれます。幾つかの例を挙げます。

a matter of importance(重要な事柄)
a matter of concern(重要な事柄)
a matter of consequence(重要な事柄)
a matter of great interest(重要な事柄)
data of little value(ほとんど価値のないデータ)
an argument of no weight(取るに足らない議論)
things of use(役に立つ物 )
a man of courage(勇気のある人)a man of genius(天才)
a woman of ability(有能な女性)a man of tact(手腕のある人)
a man of property(財産家)a shop of long standing(老舗)
a girl of ten years(10歳の少女)a matter of choice(選択の問題)
a friend of old days(昔からの友人)a family of four(4人家族)

これらの "of 〜" は形容詞で表現できるものも多く、例えば、"a matter of importance" = " an important matter"、"a man of courage" = "a courageous man"、"a girl of ten years" = "a ten-year-old girl" です。これらの言い換えができることから分かりますが、これらは「どの〜」ではなく、「どんな〜」を述べており、"important" を使えば必ず定冠詞を用いる、といったことが言えないのと同じように、"of importance" を用いてもそれによって定冠詞が付くということはありません。

特殊なケース

 また、多少特殊なケースですが、月名に "of 〜" が付いた場合は通例無冠詞です。

(27)It was, if I remember right, in August of 1916 that I moved from Mita to Aoyama, judging from the fact that Soseki died in December of the same year.(私が三田から青山へ越して行ったのはその12月に漱石が亡くなった年のことだから、大正5年のたしか8月のことだった)『英作文参考書の誤りを正す』

なお、季節や曜日の場合は、定冠詞を使います。曜日の場合は "of 〜" で修飾される場合は、必ずといってよいほど序数詞が付きますから、なおさら定冠詞である必要があります。

(28)I went to America in the spring of 1986.(私は1986年の春にアメリカに行った)『ロイヤル英文法』
(29)The meeting is regularly held on the 1st Tuesday of the month.(この会合は毎月第 1 火曜日に定期的に開かれます)『新編英和活用大辞典』

 次回は、of の非常に微妙なケースを扱う予定です。

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