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<英語 その他>

第6話 if について



◎ if について

 今回は、though と if の関係に注目しながら、if に「〜ならば」と「〜かどうか」という一見かけ離れた意味があるのは何故かを考えてみたいと思います。

 まず、though の「〜だけれども」の用例から。

(1) She wanted to buy the dress, though she had no money.(彼女はお金もないのに、そのドレスを買いたがった)(新グローバル英和辞典)
(2) Though it's hard work, I enjoy it.(それは大変な仕事だが、楽しい)(ロングマン現代英英辞典)

この2つの文では、「彼女はお金がない」、「それは大変な仕事である」という事実を単なる事実として述べており、それに逆接関係を表す though が付加されています。

 さらに、これに「譲歩・認容」の意味を出したい場合、つまり「〜だとしても、〜であっても、〜にもかかわらず」と言いたい場合は、even を付け加えます。though と even though の違いは微妙ですが、though の方は、従属節よりも主節の内容にやや重みがあるのに対し、even though の方は、従属節の重みが増し、主節との対立が大きくなる、という違いです。つまり、(1) の文は、「お金がない」ことよりも「ドレスを買いたがっている」ことに重みがあるのに対して、though を even though にした場合は、「お金がない」ことと「(それにもかかわらず)ドレスを買いたがっている」ということが相反していること、対立していることが強調されるわけです。even though の例を挙げる前に、though と even though の中間現象を挙げておきましょう。

(3) Let's try, (even) though we may fail.(失敗する恐れはあるとしても、やってみよう)(新グローバル英和辞典)
(4) I will have my revenge on him, (even) though he be a monarch.(たとえ帝王であろうとも復讐する)(ランダムハウス英和大辞典)

(4) の be は仮定法で、古風な表現です。

 では次に、even though の例です。

(5) Even though it was raining, we had to go out.(雨が降っているにもかかわらず、出かけなければならなかった)(ロングマン現代英和辞典)
(6) Aspirin is a remarkably safe drug, even though it has mild side effects.(軽い副作用はあるとしても、アスピリンは非常に安全な薬だ)(新編英和活用大辞典)
(7) Even though he is (or should be, be) the Premier, he shall hear us.(たとえ彼が首相でも、私たちの言い分を彼に聞いてもらう)(ジーニアス英和辞典)

(7) の should be と be(仮定法)を使った表現も、やはり古風な表現で、さらに shall も古風な感じのする意志未来の用法(ここでは話し手の意志を表す)です。

 「譲歩・認容」の表現は、大きく分けると、二種類あると考えられます。一つは、事実を事実として渋々承認したり、事実として一応ひとまず容認する場合(事実の認容)、もう一つは、事実かどうかは別にして、仮の話として容認する場合(仮定の認容)です。even though は、本来「事実の認容」を表しますが、「事実」として素直に認めたくないという気持が働くことによって、「仮定の認容」に近づき、(4) と (7) の文のように仮定法が現れることがあるわけです。仮定法というのは、元来、「事実として100%認めているわけではない」、「事実として断定したり、判断するのを差し控えている」ということを表す表現形式です(これは、英語の「仮定法」というよりもむしろ、ドイツ語やフランス語の「接続法」に明確に現れています)。「事実として100%認めているわけではない」ということを表すのは、仮定法だけではありません。(3) の文に用いられている助動詞の may もそうです。「〜かもしれない」という意味ですから。この may はいろいろな譲歩表現に現れます。

(8) Times may change but human nature stays the same.(時は変わろうとも人の本性は変わらない)(ランダムハウス英和大辞典)
(9) Try as he may, he will not succeed.(どう頑張ってみたところで彼は成功しないだろう)(同上)
(10) Come what may, you can count on me.(何が起ころうと私を当てにしてもらっていいよ)(新編英和活用大辞典)
(11) Whatever may happen, don't be discouraged.(何が起ころうとも失望してはいけない)(新グローバル英和辞典)

これらの文で用いられている「譲歩・認容」を表す may は、(8) を除いて文語体であり、古風な表現になりつつあります。それは何故か。may や仮定法を使わなくても、「事柄の非断定・判断の差し控え」、「譲歩・認容」を表現する簡単で明解な方法がほかにあるからです。つまり、仮定的な譲歩・認容には、though を使わず、if(あるいは no matter what など)を使えばいいわけです。

 ということで、ここから「仮定の認容」に移ります。まず、even if から。

(12) Even if it rains tomorrow, I will go there.(たとえ明日雨が降っても私はそこへ行きます)(新グローバル英和辞典)
(13) I was determined to carry it out, even if I had to die for it.(たとえ命を落とさなければならなかったとしても、それを実行する決心だった)(新編英和活用大辞典)
(14) Even if we could afford it, we wouldn't go abroad for our holidays.(たとえ余裕があっても、休暇を過ごすために外国へ行くことはないだろう)(ロングマン現代英英辞典)

(14) は仮定法が用いられていますが、これは (4) や (7) の古風な仮定法ではなく、普通の仮定法です。現在の事実に反する仮定を表しています。すなわち、実際は「余裕がないので、外国など行けない」ということです。

 even though と though の間に中間現象があるように、当然、even if と if の間にも中間現象があります。( 和文英訳(54)の解説も参照)

(15) We'll finish it if it takes us all day.(一日中かかってもそれを仕上げてしまうつもりだ)(ジーニアス英和辞典)
(16) If she's poor, at least she's honest.(彼女は貧しいとしても、少なくとも正直だ)(ロングマン現代英英辞典)
(17) If she was displeased, she never showed it.(彼女は不愉快に思ったにしても、決してそれを顔に出さなかった)(新グローバル英和辞典)

「〜だとしても」を意味する if は、譲歩であることが明らかな文脈や強調的な表現が必要であり、文の発音の仕方・抑揚も「〜ならば」の if とは少し異なりますから、使い方に注意する必要があります。(12) の文は、「雨が降っても降らなくてもそこへ行く」ということですが、even を取り除いて、"If it rains tomorrow, I will go there."という文にすると、「明日雨が降ったらそこへ行く(が、おそらく降らなければそこへ行かない)」ということで、この if は普通の「仮定・条件」を表すことになります。

 さらに if を使った文例をご覧下さい。

(18) Do you mind if I leave this minute?(すぐおいとましても構いませんか)(新グローバル英和辞典)
(19) Would you mind if I closed the window?(窓を閉めてもよろしいでしょうか)(同上)
(20) Don't you care if she loses the election?(君は彼女が落選しても平気なのか)(新編英和活用大辞典)
(21) He won't care if you use his car.(あなたが彼の車を使用しても彼は何とも思わないでしょう)(ジーニアス英和辞典)
(22) I don't care if your car breaks down or not.(君の車が故障しようがしまいがぼくの知ったことではない)(同上)
(23) It matters little if I miss my train.(いつもの列車に乗り遅れても大したことはない)(新グローバル英和辞典)
(24) It matters little if he succeeds or not.(彼が成功しようとしまいと問題ではない)(ジーニアス英和辞典)

これらの文に用いられている if は even if にある意味で接近していますが、同時にまた、「〜かどうか」を表す if に接近しています。まず、「〜しても」、「〜しようとしまいと」という訳語からも分かるように、「譲歩」を表しています。次に、if を「〜かどうか」の意味で訳せるかどうかを考えてみましょう。(18) と (19) の mind は「いやだと思う」ことであり、(18) を文字通り訳せば、「私がこの瞬間に去ったならば、あなたはいやだと思うでしょうか」となります。この文を「私がこの瞬間に去るかかどうかをいやだと思いますか」と訳すのはちょっと無理があるようですが、「去るかどうかを気にしますか」と解釈すれば、かろうじて通じます。(19) も同様です。「〜かどうか」と解釈すると、多少不自然になるのは、mind if 〜 が「〜してもよろしいですか」という許可を求める慣用的な表現であるためです。では、(20) から (23) の care はどうでしょう。care if 〜 の場合は、「〜に反対する、〜をいやだと思う、〜を気にする」という意味が mind if 〜 よりもはっきり出るため、(20) を「彼女が落選したとしても、いやだと思わないのか」と訳しても、「彼女が落選するかどうか気にしないのか」と解釈しても、述べていることは大して変わらなくなります。(21) も「車を使用したとしても気にしない」であり、また「車を使用するかどうか気にしない」でもあります。(22) も「車が故障しても故障しなくても気にしない」であり、「車が故障するか故障しないかどうか気にしない」でもあります。さらに (23) と (24) ですが、それぞれ、「乗り遅れたとしても、それはほとんど問題ではない」(it は if 節の内容を指すと考える)と「乗り遅れるかどうかはほとんど問題ではない」(it は仮主語と考える)、「成功しても、成功しなくても、それは大した問題ではない」(it は if 節の内容)と「成功するかしないかは大した問題ではない」(it は仮主語)となります。

 以上のような表現から、if に「〜ならば」という「仮定・条件」の意味から「〜かどうか」という「疑問」の意味が生じたと考えられます。これは、「仮定・条件」と「疑問」が、共に「事柄の非断定・判断の差し控え」を基礎にしているからにほかなりません。言い換えれば、「肯定 ⇔ 判断の差し控え ⇔ 否定」という思考の流れがあるわけですが、例えば、真偽の判断を差し控えた状態から、その真偽を問う気持が生まれれば、それが「疑問」であり、また、真偽はよく分からないが、もし真であるとしたら、どういう結論・結果が生じるかという発想に進んでいけば、それが「仮定・条件」となるわけです。そして、ここで述べてきた though から if の流れは、「逆接(〜だが)」 ⇒ 「事実の譲歩・認容(〜にもかかわらず)」 ⇒ 「仮定の譲歩・認容(たとえ〜だとしても)」 ⇒ 「仮定・条件(〜ならば)」 ⇒ 「疑問(〜かどうか)」ということになります。

 それでは最後に、「〜ならば」とも「〜かどうか」とも解釈できるが、それによって内容が変わってしまう if の例を挙げておきましょう。

Let me know if she is coming.(彼女が来るならば知らせて下さい;彼女が来るかどうか知らせて下さい)(ジーニアス英和辞典)
Tell me if you can come.(来られるなら言って下さい;来られるかどうか言って下さい)(ランダムハウス英和大辞典)


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