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<英語 その他>

第8話 but について


◎ but について

 but にはいろいろな意味があります。最も普通の用法は、接続詞の「しかし」という意味ですが、「〜以外」という意味もあります。実は、語源から言えば「〜以外」の方が元の意味です。but は本来「外部に」を表していました。そこから、「内部に含まれず、外にある」ということで、「〜を除いて、〜以外」という「除外」の意味が生じたと考えられます。

 大学入試用の参考書や問題集には必ず載っている熟語に "cannot but 原形不定詞" というのがありますが、これは「〜すること以外できない」から「〜せざるを得ない」という意味になるわけです。しかし、この表現は古風な表現で、普通は、"have no choice but to 不定詞" か "cannot help 〜ing" などを使います。前者は、「〜すること以外選択肢がない」から「〜せざるを得ない」の意味に、後者は、"help" が「避ける」の意味で、「〜することを避けることができない」から「〜せざるを得ない」という意味になっています。この but は少し古風な感じがしますが、 that 節とも用いられます。

(1) I know nothing but that he is a Russian.(私は彼がロシア人であること以外何も知らない)(新グローバル英和辞典)

また、次のような表現もあります。

(2) She did nothing but complain.(彼女は不平を言うこと以外何もしなかった)(新編英和活用大辞典)
(3) What can we do but sit and wait?(座って待っている以外いったい何ができるのか)(ロングマン現代英英辞典)

 この (1) と (2) はそれぞれ、「私は彼がロシア人であることしか知らない」、「彼女は不平を言うばかりだった」と訳すこともでき、こういったところから、"nothing but" は「〜だけ、〜しか…ない」という "only" の意味に近くなります。また、"anything but(まったく〜ない)" という熟語があります。

(4) He is anything but a gentleman.(彼が紳士だなんてとんでもない)(ジーニアス英和辞典)

これは、「彼は紳士以外のどんなものでもある」というところから、「彼はどんなものでもあるが、決して紳士ではない」という意味に変化したわけです。さらに "all but 〜" という熟語があります。「〜以外すべて」という意味と、そこから生じた「ほとんど〜、〜も同然」という意味があります。

(5) All but she (or her) answered the question.(彼女のほかはみんなその問題に答えた)(ジーニアス英和辞典)
(6) He is all but dead.(彼は死んだも同然だ)(同上)

 ところで、(1) の文はまた「私は何も知らない。ただ彼がロシア人であることは知っている」、(2) の文は「彼女は何もしなかった。ただ不平だけは言った」と考えれば、"but" だけでも "only" の意味に近くなることが分かります。ここから、"but" の「〜だけ、〜にすぎない、単に〜」といった意味が生じたと考えられます。この but は文語体ですが、次のように用いられます。

(7) He is but a child.(彼はほんの子供だ)(ランダムハウス英和大辞典)
(8) There is but one God.(唯一の神があるだけである)(同上)

 さらに次の文をご覧下さい。文語的な表現です。
(9) I would buy the car but I am poor.(貧乏でなければその車を買うのだが)(ジーニアス英和辞典)

この "but" は「〜ということがなければ」という意味なのですが、「〜ということを除いて」から「〜ということを除外したら」、さらに「〜ということがなければ」と意味が発展したと考えられます。否定の意味を含み始めるわけです。次の文はことわざです。

(10) It never rains but it pours.(降ればどしゃ降り;二度あることは三度ある)

"it pours" が「どしゃ降りである」という意味ですが、この文は、「どしゃ降りになることなしでは、雨が降ることは決してない」から「降れば必ずどしゃ降りになる」という意味になります。

 (9) と (10) の "but 〜" は副詞節ですが、次の文は名詞節です。いずれも古風な英語です。

(11) We are not sure but she is right.(彼女はきっと正しいだろう)(ジーニアス英和辞典)
(12) There's no doubt but (that) he's guilty.(彼が有罪であるのは疑いの余地がない)(ロングマン現代英英辞典)

(11) の文は「彼女が正しくないと確信していない」から、「きっと正しいだろう」という意味になっています。この "but" は、言い換えれば "that … not" ということになります。一方、(12) の文は、本来、「彼が有罪であること以外の疑いはない」であったものが、「彼が有罪であることは確かだ」という意味に移っています。「彼が有罪であること以外」は、「疑いがない」ではなく、「疑い」という名詞を修飾しています。この "but" は (11) とは異なり、現代英語では "that" に言い換えられます。この違いは、"doubt" それ自体に否定的な意味合いが含まれているため、"that … not" の "not" の意味が "doubt" に吸収されてなくなってしまったためでしょう。

 では次です。(13) も (14) も古風な表現です。

(13) There was never a new theory but someone objected to it.(新学説が出れば必ず誰かがそれに反対した)(ランダムハウス英和大辞典)

この文は「誰かが(それに)反対しなかった新しい理論は決してなかった」が直訳ですが、この "but 〜" は "a new theory" を修飾する形容詞節だと考えられます。"but 節" の中にある代名詞がなくなると、"but" は関係代名詞となります。

(14) There is no rule but has some exceptions.(例外のない規則はない)(ランダムハウス英和大辞典)

 そして、最後に「しかし、〜が」の "but" が生まれます。

(15) Everyone lost faith in the plan but her. (彼女以外の誰もがその計画に自信を失った)(ランダムハウス英和大辞典)
(16) Everyone lost faith in the plan but she. (同上)(同上)
(17) Everyone lost faith in the plan but she did not lose faith.(誰もがその計画に自信を失ったが、彼女は失わなかった)(同上)

(15) の "but" は前置詞ですが、(16) と (17) は接続詞と解釈できます。この心理的経緯は分かりやすいと思います。例えば、(2) は「彼女は何もしなかったが、不平は言った」、(9) は「その車を買えれば買うのだろうが、私は貧乏だ」、(11) は「私たちは確信していないが、彼女は正しい」と訳しても、結局のところだいたい同じことです。

 最後に "only" が "but" に近い意味として使われている例を挙げておきましょう。

(18) He'd like to go, only he has another engagement.(彼は行きたいのだが、別の約束がある)(ジーニアス英和辞典)





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