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目次

<熟語の中の前置詞を巡って>

第15話 前置詞 over について





 前回、「強い感情の原因」を表す over を扱いましたが、今回は、over のその他の大事な用法をまとめておきましょう。まず、「(特に長期間の)争い・議論の原因」を表す over です。

quarrel over (or about) O = O のことで口論する
argue over (or about) O = O のことで議論する
fight over (or about) O = O のことで格闘する、争う
a war over (or about, for) O = O を巡っての争い、戦い
a debate over (or about, on) O = O に関する討論、議論
a controversy over (or about) O = O に関する論争、議論
a fuss over (or about) O = O のことでの大騒ぎ
a conflict over O = O を巡る衝突、不一致

これらの表現から分かるように、この over は about に近いのですが、about よりも意味が強く、長期間、あるいは深く関わっているという感じがします。この over は、次のように「熟考」を表す場合にも用いられます。

meditate over (or about, on) O = O について深く考える、瞑想する
ponder over (or about, on) O = O について熟考する
mull over O = O について熟考する

over が副詞として用いられる表現もあります。

think O over / over O = O について熟考する
mull O over / over O = O について熟考する
talk O over / over O = O について十分に話し合う

 以上の over は、ある対象に強く関わっている場合ですが、もう少し意味が弱くなると、「従事」を表す over になります。「従事」の over は、「仕事や読書をしながら眠り込む」、「飲食しながら話をする」という場合によく用いられます。

go to sleep over one's work = 仕事中に眠る
fall asleep over one's (or a) book = 本を読みながら眠り込む
talk over (a cup of) coffee (or tea) = コーヒー(紅茶)を飲みながら話をする
discuss O over dinner (or breakfast, lunch) = 夕食(朝食、昼食)を食べながら O について議論する
chat over dessert (or cake) = デザート(ケーキ)を食べながらおしゃべりをする
watch TV over (a bottle of) beer = ビールを飲みながらテレビを見る

これらの over は、机やテーブルに座って勉強や食事をしているときのように、本やノート、あるいは飲食物の上に覆い被さっているというイメージがあるために、over が用いられるに至っています。

 では次に、基本的な over の意味である「上に、上方に」から、「支配、優越、優位」の対象を表すようになった例を挙げておきましょう。

rule over O = O を支配する
reign over O = O を統治する、支配する
preside over O = O を統括する、管理する、O の議長を務める
control over O = O に対する支配
command over O = O に対する指揮権、統率
a victory over (or against) O = O に対する勝利、克服
be victorious over O = O に勝つ
a triumph over O = O に対する勝利
prevail over (or against) O = O にうち勝つ
superiority over (or to) O = O に対する優越
S have (or take) priority over O = S は O に優先する
give A preference over B = B より A を優先する
gain (or get) an advantage over O = O をしのぐ、O より勝る
choose A over B = B に優先して A を選ぶ
value A over (or above) B = B より A を高く評価する
favor A over (or above) B = B より A をひいきする、好む

 最後に、over とは直接関係がありませんが、よく似た above と beyond を含む熟語的な表現を挙げておきます。

above (or beyond) reproach = 非の打ち所がない
above (or beyond) suspicion = 疑わしいところがない
above all praise = beyond (all) praise = いくら賞賛してもし足りない

以下の表現では、above は普通使いません。

beyond description (or words) = 筆舌に尽くしがたい、言い表せない
beyond (my) understanding (or (my) comprehension, me) = 私に理解できない、私の理解を超えている
beyond my expectation(s) = 私の予想を超えて
beyond endurance = 我慢できない、耐えられない
beyond belief = 信じられない
beyond compare (or comparison) = 比較にならないほど
beyond all hopes = 望みが全くない
beyond recovery = 回復の見込みがない
beyond recall = 思い出せない;取り返しがつかない

また、「立派な人だ、悪い人ではない」ということを述べる次のような表現では、beyond ではなく above を使います。

He is above bribery.(彼は賄賂を受け取ったりしない)
She is above telling a lie.(彼女はうそをつくような人ではない)


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