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目次

<熟語の中の前置詞を巡って>

第2話 to 不定詞と from doing の関係について





 前回、to 不定詞が未来志向性を持ち、動名詞が未来志向性を持たないことを述べました。今回は、それを少し発展させたいと思います。

 I want to finish the job by ten.(10時までに仕事を仕上げたい)という文の場合、未来志向性が感じられるわけですが、これと同じように、I want you to finish the job by ten.(10 時までに仕事を仕上げてもらいたい)という文でも、「仕上げる」のは「これから」のことであり、やはり、未来志向であることが分かります。この "V O to do" という形で使う動詞は、非常にたくさんあります。以下に主なものを挙げます。

force ≒ compel ≒ oblige O to do(O に〜することを余儀なくさせる、O に無理やり〜させる)
tell ≒ command ≒ order O to do(O に〜するように命じる)
get ≒ cause O to do(O に〜させる)
direct ≒ instruct O to do(O に〜するように指図する)
require O to do(O に〜するように要求する)
request ≒ ask ≒ beg O to do(O に〜するように頼む)
advise ≒ recommend O to do(O に〜するように忠告する、勧める)
persuade ≒ convince ≒ urge O to do(O に〜するように説得する)
encourage O to do(O に〜するように励ます)
want ≒ desire ≒ would like O to do(O に〜してほしい)
allow ≒ permit O to do(O に〜することを許す)

以上の動詞を見ると、「命令、要求、依頼、願望、許可」などを表す語が多いことが分かります。簡単に言うと、「〜させる」という場合に使う動詞です。つまり、"V O to do" という形の重要な使い方の一つは、「(Sは)O が〜する方向に V する」という意味を表すことです。前回述べたように、to 不定詞の to は、本来、前置詞であり、「〜へ」という方向性を示しますから、"V O to do" の場合にもその原義が生きていると言えます。

 では、to の反意語は何かを考えましょう。「〜へ」の反対は、もちろん「〜から」です。従って、to の反意語は from です。"V O to do" に対応するのは、"V O from doing" となります。そこで、この形で使う動詞を挙げてみましょう。

prevent ≒ stop ≒ keep ≒ discourage ≒ deter ≒ hinder ≒ obstruct ≒ restrain ≒ dissuade O from doing (O が〜するのを妨げる、O に〜させない、O に〜するのを思いとどまらせる)
prohibit ≒ ban ≒ forbid O from doing(O が〜するのを禁止する)

これらの動詞は、「何かが実現するのを妨げる、何かを実現させない」ことを意味しています。一方、"V O to do" の形で使う動詞が、「何かを実現させる」ことを表していることは、上記の動詞から明らかです。to と from は、本来の前置詞の意味でも反意語ですが、ここまで見てきたように、"V O to do" と "V O from doing" という形でも対照的な用い方をするわけです。

 ここに挙げた熟語的な表現を覚える際には、ネイティブスピーカーが、"V O to do" に「O に〜させる」、"O from doing" に「O に〜させない」という意味合いを感じ取っているのだということをしっかりと意識する必要があります。

 ここで、話をもう少しだけ広げておきます。今回、"V O to do" ⇔ "V O from doing" の対照性を見たわけですが、前回は、"V to do" ⇔ "V doing" という対照性を指摘しました。では、それぞれの右側の項に 含まれた "from doing" と "doing" の関係はどうなっているのでしょうか。どちらも "to do" と対照をなすのですから、おそらく共通点があるはずです。前回、動名詞を目的語に取る動詞の代表的なものに、"stop, give up, quit(〜をやめる)" などがあることを述べました。そこで、これと同様の意味を表し、"from doing" を用いる表現を探してみましょう。それには、次のようなものがあります。

keep ≒ refrain ≒ abstain ≒ cease from doing(〜するのをやめる)

これらの表現もまとめて覚えておくのがよいでしょう。ちなみに、"prevent O from doing" と "stop O from doing" は、fromを省略して、それぞれ "prevent O doing"、"stop O doing" としてもほぼ同じ意味であり、ここからも、"from doing" と "doing" の類似性が見て取れます。

 最後に、例外について述べておかなければなりません。

 まず、願望や要求を表す動詞で、"V O to do" の形で使えない重要な単語が4つあります。それは、hope ≒ long ≒ yearn と demand です。これらは、
" hope (or long,yearn) for O to do(O が〜するのを希望する)"、
"demand (of O) that S (should) 原形動詞(S が〜するように(O に)要求する)"、
"demand to do(〜するように要求する)"
という形で使います。

 次に、禁止を表す動詞で、forbid は例外的に "O to do" と使うことができ、"forbid O to do, forbid O doing(O が〜することを禁止する)" という形で用いられます。これは、もともと、"bid O to 不定詞(O に〜するように命じる)" という表現があり、これに「禁止」を表す for がくっついて forbid になっています。従って、もとの to 不定詞と使う形があったために、禁止を表す場合に to 不定詞と使っても違和感がなく、例外的に to 不定詞と使うことができると考えられます。

 さらに、cease は、"cease to do, cease from doing, cease doing(〜しなくなる、〜するのをやめる)" という3つの形で使えます(実際には、cease to do が普通で、cease from doing はほとんど用いられません)。これらの例外については、また機会があれば説明したいと思います。


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