アルカナム電脳遊戯研究所 個別解説

2008年・アルカナム電脳遊戯研究所推薦作品


2006,2007年に引き続き、2008年発売作品の中で本サイトが推薦する作品を紹介したい。


1.「コンチェルトノート」

「コンチェルトノート」 (C) あっぷりけ  発売日: 2008/10/23 機種: Windows2000以降 レーティング: 18歳未満禁止 成長と絆を描く学園純愛ADV


ブランドあっぷりけの第2作で、第1作(「見上げた空に落ちていく」)に続けての紹介となる。

前作の特徴として主人公やヒロインを見守る年長者の視線があると紹介したが、今回もそれはあてはまる。しかも今回はより直接的に、主人公を側から見守る存在(タマ)が登場している。 プレイヤーはタマに近い立場で主人公達を見守ってもよく、主人公(達)の立場に立ってタマを可愛がってもよい。

ここでの制作上のポイントは、プレイヤーの代理になりうるタマを攻略対象としないこと、そして攻略不可であることをプレイヤーに納得させることである。 今回のタマは公式HP内での発売前情報で攻略不可であることを明言しており、また作品内の立場、 能力的にも(身長15cmの実体なし、憑依能力なし、 幻影作成能力なし)攻略不可であることは揺るぎようはない。 今回の年長者視点の導入は前作に比べ洗練され、完成度が高くなっている。

今作の本題は、知力・運動能力・社会能力・地位に優れたスーパーヒロイン・神凪莉都、およびその愉快な仲間達(主人公含む)の活躍を鑑賞することである。 彼女のようにあらゆる面で高いスペックを有するヒロインは他作品でもたまに登場するが、ヒロイン間バランスの問題やヒロインと主人公の釣り合いの問題からなかなか筆頭ヒロインとして前面には出てこなかった。 しかし、このようなスーパーヒロインは作品内世界での存在感こそが魅力であり、その魅力を最大限引き出すには筆頭ヒロインにして作品全編で活躍させた方がよいはずである。

今作はスーパーヒロインを筆頭ヒロインとして扱うにあたり生じるバランス等の問題に丁寧に対処し、 完成度の高い作品に仕上げている。すなわち、物語重視でルート順番指定を導入してヒロイン間の格差を作品内に取り込む、 第三者視点要素の導入によりプレイヤーと主人公を切り離してプレイヤーの知らない主人公の過去が同調の妨げになる問題を回避する(そもそも同調の必要をなくす)、 ヒロインの作品中の変化を極力抑え引き出した魅力を無駄にしない(ヒロインが本人ルートで変化すると、変化前が否定されたことになってしまう)、 といった風である。これらの手法はよく知られている内容ではあるが、 確実に実践されている。

さらに、本作品で搭載されたフローチャートシステムにより、 まるで本のように既読部分の好きな場所からいつでも物語を読み始めることが可能となった。 2007年の「明日の君と逢うために」に続き、 この作品もまたジャンルの進歩を感じさせてくれる。難点は一点、 前作に引き続き誤字脱字が多い点である。これは丁寧にチェックをしさえすれば確実に防げるはずなので、今後改善を期待する。


2.「るいは智を呼ぶ」

「るいは智を呼ぶ」 (C) 暁WORKS  発売日: 2008/6/26 機種: Windows2000以降 レーティング: 18歳未満禁止  新美少女エンタメ


女装ものである。そして究極形態に近い。

女装ものの意義は、魅力的なヒロインを描くことを至上命題とする美少女ゲームにおいて、 作品内で最も登場回数の多いキャラクターである主人公をヒロイン化させて魅力的に描いた方が制作資源の有効利用であるという点につきる。

いくら主人公をヒロイン的にするとはいえ、18禁作品である以上、 主人公には男性性が必要である。そのため女装ものは主人公のヒロイン性と男性性をどのバランスで取り入れるかが注目点である。 しかし、作品の本体であるヒロイン性と、作品を成立させるために必要であるにすぎない男性性ではどちらが重要かは明白である。

本作品は、極限まで主人公の男性性を下げ、ヒロイン性を高めた究極の作品である。(各ルートにおいて、ルートに乗ったヒロインにのみ主人公が男性であることが明かされ、他のヒロインを含む世の全ての人にとって主人公は女性である)

結果として、本作品は主人公が広くプレイヤーに支持され、 女装ものとして大成功を収めたといってよい。作品を構成するシナリオ・文章技術・CG技術等の各要素のレベルが高く、非常に優れた作品である。

さてここまできた場合、美少女ゲームにとって主人公が男性である必要はあるのだろうか、というのが筆者の疑問である。 ジャンルの将来にかかわる重大な問いであり、別項特別コラムで触れる ことにする。


3.「ワンダリング・リペア!」

「ワンダリング・リペア!」(C) エスクード  発売日: 2008/1/25 機種: Windows2000以降 レーティング: 18歳未満禁止  思い出組み立てAVG


この作品はかなり豪快な設定と、「時計修繕システム」なるイベント探索のゲームパートを持つひねった作品である。ただ、作品の本題はメインヒロインであるアミリアスを鑑賞するところにある。しかしこのアミリアス、美少女ゲームヒロインとしてはかなり弱い部類に入り、 普通の作りの作品に入った場合、他のヒロインに食われて印象がかなり弱くなってしまうタイプのキャラクターである。

そういうアミリアスをメインとして押したて、しかも物語の進行を寸断するゲームパートがあるということで、相当危ない企画であるように見える。

だが実際の出来としては、ヒロインのアミリアスの魅力を引き出すことに成功し、十分楽しめる作品に仕上がっている。

これを可能にしたのが以下の2点。まず、身体年齢違いの3形態を同一人格でありながら別キャラクターとして運用し、 他のヒロインの3倍の制作資源を投入してアミリアスを描いたことが1点。もう1点は、 ゲームパートを利用して莫大な量の会話イベントを作品中に導入した点である。(その3倍のルートと大量の会話を一人で担当した声優のまきいずみさん、本当にご苦労様でした)

戦闘能力があまり高くなく、日常の世界に生きるのが似合うヒロインにとって、ヒロインの魅力を引き出すのは日常会話イベントである。しかし、多すぎる日常イベントは物語の進行を遅らせ作品の出来に悪影響を与えるため、 通常のノベルタイプの作りでは作品中に入れられる量に限りがある。 この問題に対し、本作品では日常イベント部分をアドベンチャーゲーム化し、大量の選択肢を導入してその全てにアミリアスとの会話イベントを配置した。さらに、ゲームパートの難易度を低くするとともにゲームの進行状況をプレイヤーがわかるようなシステムとし、 プレイヤーが安心して不正解選択肢を選びそこでの会話も楽しめるようにした。

この制作資源の集中投下により、アミリアスはなかなかよい感じのキャラクターに育ち、作品が成立した。 本作品は、 手間のかかるゲーム重視作品を制作してきたブランドだからできた良作である。


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last update: 2009/1/3