アルカナム電脳遊戯研究所 個別解説

あかときっ!:ゲームとシナリオの協力


「あかときっ! -夢こそまされ恋の魔砲-」(C) エスクード  発売日: 2010/12/23 機種: WindowsXP以降 レーティング: 18歳未満禁止  脱がしっ娘魔砲バトルADV


本作品は様々な要素を含んでいるため、一言で説明するのは難しい。 難解なジャンル名「脱がしっ娘魔砲バトルADV」が象徴的である。 このジャンル名を解説すると、「脱がしっ娘」が脱衣ゲーム要素があることを示し、「魔砲バトル」が戦闘ゲーム要素があることを示し、「ADV」がシナリオ作品要素があることを示している。 しかしこれらの要素は一般的にみて互いに相性がよいとは言えず、これらの要素を全て含むと言われてどんな作品かをイメージすることは困難である。

だが、本作品においては、テーマは「魅力的な魔砲(=魔法)使いヒロインを描く」という点で一貫している。 シナリオ側ではヒロインの人間的な厚みを増すことに注力し、戦闘パートではヒロインにめいっぱい活躍させる。 このいずれもがヒロインの魅力に不可欠となっている。 そのため、シナリオと戦闘ゲームの両方あって本作品である。 シナリオ作品ともゲーム作品とも言えない理由がここにある。

さらに、シナリオと戦闘ゲームそれぞれについて、作品が大きくなるように最大限配慮されている。 特に戦闘ゲームでは、詳しくは下で述べるが、ヒロインの魅力を損なわないように、また多彩な楽しみ方ができるように設計されている。 脱衣要素についても、戦闘パートでの長期戦の疲弊を表す形で組み込まれ、戦闘ゲームでの楽しみ方を広げる一環として使われている。 シナリオ側でも、個々のヒロインルートを最終ルートで否定しない、エンディング時の世界が物語途中で築き上げてきた魅力をそのまま保持している、など、作品世界を広げる上での基本的な事項が確実に押さえられている。

物語重視にゲームを加えたり、あるいはその逆の場合にあまり良い効果が得られないことが多いことはすでにわかっている。 前者ではゲームパートによって物語が寸断されるからであり、後者では物語イベントによる予期せぬ状況変化がゲームパートでのプレイヤーの計算を狂わせるからである。 本作品では、物語と戦闘ゲームに主従関係がなく、作品の目的であるヒロイン描写に向けてお互いが協力することで良い作品に仕上げた。 美少女ゲームが何のためにあるかを考えればこれが理想的であるが、高品質のシナリオと戦闘システム、巧みなバランス調整があったからできた芸当でもある。 他のブランドではなかなかこうはいかないだろう。 レベルの高い開発陣に今後も期待したい。






本作品では特に戦闘パートの設計において随所に工夫が光っている。 ここで一部を解説したい。

数は力

弱いヒロインがパーティーの足を引っ張るような戦闘システムだと、そのヒロインの魅力に致命的な悪影響を与える。 弱いキャラクターでも参加すればするだけ有利になるシステムでなければならない。

全体攻撃は必殺技に限る

全体攻撃はプレイヤーに快感を与え、また作業化した掃討戦を早く終えるために必要である。 しかし、全体攻撃は「数は力」の原則に反し、防御の弱いキャラクターがパーティーの足を引っ張る要因となる。 全体攻撃の存在は最低限にすべきである。

回復はヒールオール

単体ヒールがなく、回復技は全てパーティー全員を対象とする。 これにより、多人数でダメージを分散して受けた方が有利になっている。 「数は力」原則に即した設計である。

戦闘離脱ペナルティーが小さい

戦闘離脱にペナルティーがあるのは仕方がないが、よくあるような離脱キャラクターの経験点剥奪のようなシステムは、弱いキャラクターの成長が遅れてより弱くなってしまうため不適切である。 また、誰かが戦闘離脱すると即ゲームオーバーのようなシステムは、ゲームオーバーを引き起こしやすい弱いキャラクターの魅力に多大な悪影響を与えるため論外である。 戦闘離脱ペナルティーは小さい方が望ましい。

負けてもよい強敵の存在

クリアデータ引き継ぎによりゲームの難易度が低下して楽になるのは基本である。 しかしゲームに張り合いがなくなる。 そこで、一部初回プレイでは勝てない敵を用意しておき、倒すのは引き継ぎ後にとっておいてある。 これはゲームの楽しみを広げることにつながる。 さらに、負ける戦闘の存在により物語の展開に幅を持たせることができる。

クリア後の経験点引き継ぎ

本作品では、経験点のうち未使用分のみが引き継がれ、成長配分済みの経験点やスキップした戦闘での経験点は引き継がれないシステムである。 成長のさせ方をいろいろ試すことができ、また成長を制限する縛りプレイへのインセンティブがある。楽しみ方が広がる良いシステムである。


以上のように、戦闘パートはヒロインの魅力を損なわないように、また多彩な楽しみ方ができるようによく配慮されている。


「アルカナム電脳遊戯研究所」トップへ共通トップへ

last update: 2011/1/20