アルカナム電脳遊戯研究所 個別解説

ルナそら:作られたヒロイン、作ったヒロイン


「ルナそら」 (C) light  発売日: 2006/8/4 機種: Windows98SE以降 レーティング: 18歳未満禁止 ラブラブエロエロADV


極論すれば、美少女ゲームのヒロイン達に与えられている人格は作り物である。 たいていはプレイヤーの欲求に合わせて、時には物語の展開の都合に合わせて、 ゲーム制作者が作りあげた虚構である。

通常の作品は、プレイヤーはプレイしている間[*1]ヒロインが虚構であることを忘れた方が楽しめる。 だから、プレイヤーはヒロインを受け入れようと心を広く持とうとするし、制作者側も(特に美少女ゲーム初心者向きの作品では)ヒロインがあまりにも嘘っぽくならないように気をつかう(方がよい)。

しかしこの「ルナそら」は、ヒロインが作り物であることを作品のテーマに据えて作品の全面に出した作品である。 タイトルになっているメインのヒロイン二人(「ルナ」と「そら」)がロボットで、その人格は別ヒロインによってプログラムされ作られたものである。 つまり、ゲーム内世界の中でさえ、ヒロインの人格が作り物なのである。 そして、ロボットヒロインがどう作られたか、ロボット制作者ヒロインがどうロボットヒロインを作ったか(この二つは同じ)が作品内で語られる大きな話題である。そのため、プレイヤーはヒロインが作り物であることを嫌でも意識せざるを得ない。ただ、 ゲーム世界内の主人公は、ロボット達を作り物であることは頭で理解しつつも、あまり意識しないようにふるまっている。まるで、通常の美少女ゲームをプレイしているプレイヤーが、ヒロインは作り物であることを頭で理解しつつも、 あまり意識しないでいるように。

さてここで、「ロボットヒロイン」と「ロボット制作者ヒロイン」と「主人公」の関係が、通常の美少女ゲームでの「ヒロイン」と「ゲーム制作者」と「プレイヤー」の関係と一致していることに気づくだろう。 「ルナそら」では、主人公がロボット達を人と同様に扱うことでロボット達はロボット制作者ヒロインの設定を超えて人らしく育つ。 通常のゲームにおいてでも、 プレイヤーがヒロインに単なる作り物以上の思い入れを持てば、ヒロインは制作者の設定以上の豊かな人格を持つようになる。同じである。

つまり、「ルナそら」はメタ・ゲーム(ゲームをネタにしたゲーム)である。
これまで、美少女ゲーム制作をネタにしたゲームは存在していたが、 それらは通常ゲーム制作者だけに焦点が絞られていて、 ゲーム制作者とゲーム内ヒロインとプレイヤーの関係を描いたものはなかった。 本作品は見た目単なるキャラクター主導エロ重視の作品に見えるが、 実は案外奥の深い、変わった作品である。


[*1] もちろん、まともな大人としては、プレイヤーは少なくともゲームをプレイしていない時はヒロイン達が虚構にすぎないことぐらい認識していなければならない。




登場人物解説


ルナ
ロボットヒロイン1号。サラが性格プログラムを設計した、新妻ロボット。 こうすれば最も男共が喜ぶに違いない、とサラが考えた能力と人格が与えられている。
ルナとそらはロボットだが、他の作品で登場するロボットヒロインと違い、 メカの要素はほぼ完全に排除されている。 ルナとそらがロボットなのは、二体が作り物であることを明確に示すだけのためにある。 メカの要素は好き嫌いが出やすい属性なので、本作品には無用である。
そら
ロボットヒロイン2号。アスが性格プログラムを設計した、新妻(?)ロボット。 子供の人格が与えられている。学習能力が高く、教育によりどう育つかは変わる。 アスは攻略対象ヒロインではないため、 アスがそらを設計した心理はあまり描写されていない。
藤間 結羽
幼なじみ。作り物ヒロインと作ったヒロインを中心とした本作品において、 一般人の幼なじみが本命であることはありえない。彼女は主人公の見張りであり、 主人公がまっとうな行動をとるよう誘導するのが役目である。
サラ
ルナを設計したヒロイン。「ヒロインを設計したヒロイン」であり、 メタ・ゲーム的には美少女ゲーム制作者に相当する。ただ、あくまでサラはヒロインであって、決してlightの制作スタッフの代理ではない。 lightの制作スタッフが美少女ゲーム制作者をヒロインにしたときにもっともふさわしいと考えた人格がサラに与えられている、と見るべきである。
ルナの行動を描写することは、 ルナに与えられた行動原理プログラムや能力を描写することである。 これはすなわちサラがどうルナを設計したかを描写することであり、 結局ルナを描写することはサラを描写することに等しい。 そのため、サラは本人とルナの2人分のルートで描写されており、最も深く描かれたヒロインである。
アス
そらを設計した人物であるが、攻略対象ヒロインではない。アスとサラは双子で、 アスはヒロインであるサラの一部の要素を切り分けて作られたキャラクターである。 このようになっている理由は、ロボット制作者を一人のヒロインにしてしまうと彼女の世界内の地位と描写量が大きすぎて作品のバランスが崩れ、また2体にそれぞれ一人ずつのヒロインをおくとこれまた制作者ヒロイン側の描写が多すぎてバランスが崩れてしまうからである。 端的に言うならば、サラが一人だと強すぎるので、 二人に分割して片方を攻略対象ではなくすことでサラを弱めたのである。ネタばれでここには書けない設定も含め、この双子の設計は見事である。
瀬戸 慎太郎
主人公。そこそこの良識がある善良な一般人で、プレイヤーに近い。 ただ、彼がプレイヤーに近い理由はそうした方がプレイヤーに同調/共感してもらうのに 有利だから、というわけではなく、 彼がメタ・ゲームでのプレイヤー役だからである。 本作品をメタ・ゲームとして楽しむには、プレイヤーは彼を客観視しなければならない。実際、ルナとそらのモニター終了後の破壊について、 主人公にはそれを信じこませておきながら、プレイヤーには最初からそれが嘘だとわかるようにしている。

「アルカナム電脳遊戯研究所」トップへ共通トップへ

Update: 2006/11/13; revised: 2006/11/15(#1)

#1: テキストの微調整、および本文第3段落最後の文の追加