アルカナム電脳遊戯研究所 個別解説

Mind Reaper:戦闘ゲームは物語の役に立った・・・か?


「Mind Reaper」 (C) JANIS  発売日: 2003/5/16 機種: Windows98以降 レーティング: 18歳未満禁止 ADV/SLG


物語主導の作品で、ゲーム部分を途中に入れるのは有効ではない、という説は固まっている。「ゲーム部分」の中身はミニゲームでもアドベンチャーゲームでも同じで、ゲーム要素が途中に入るとプレイヤーの頭がゲームを解くことに切り替わり、 話の流れが寸断されてしまう、というのがこの理由である。このことは本作品が出るずっと前、2001年頃までにほぼ明らかになっていた。

もちろん、ゲーム主導の作品に物語を多少持ち込んでユニットへの思い入れを深める、 という作りは昔から今に至るまであって、有効である。また、キャラクター主導の作品に戦闘ゲームを持ち込んで、キャラクターをゲーム内で活躍させることによりキャラクターの魅力を高める、という手法も確立している。しかし、物語主導の作品でゲーム性を入れて成功した例はほとんどない[*1,2]。

[*1] 数少ない成功例に、「こみっくパーティー」 (Leaf)がある。この作品の同人誌作成のゲーム部分は、「主人公が膨大な時間を割いて真面目に同人誌を作っている」ということを、プレイヤーに示すためのものである。 ただ、ゲーム要素がより強くなった次回作「まじかる☆アンティーク」では、 物語部分とゲーム部分が独立した存在となってしまい、協同効果は発揮されなかった。
[*2] もう一つの成功例に、「とらいあんぐるハート2」(JANIS)がある。 この作品の序盤は本当にアドベンチャーゲームであり、寮の管理人としてヒロイン達皆を相手にきちんと仕事をしないとゲームオーバーになる。このゲーム部分を通して主人公が立派な管理人であることが示される。ただし、ゲーム本体となる個別ヒロインと仲良くなる部分にはゲーム性は削除されている。なお、 「とらいあんぐるハート3」では、「2」と異なり特に示すべき事柄がないにもかかわらず序盤に「2」と同様のゲーム性を導入しようとして、有効に機能しなかった。

さて、「Mind Reaper」は、戦闘ゲームの要素が大きいながら、物語主導の作品である。 これまでの常識からすれば、キャラクター主導ならともかく、物語主導ではゲーム部分の要素が大きいとうまくいかないはずなのだが、興味深いことに結構うまくいっている。一体何をやったのだろうか。

それは、この作品の特殊なテーマ設定に由来する。この作品のテーマは、「ヒロインの裏切り」である。これまで仲を深めてきたヒロインが主人公に刃を向ける、この場面を印象的に描くために戦闘ゲームが使われている。 すなわち、これまで大事なユニットとして使い育ててきたヒロインが、育てたレベルそのままで敵に回る。ここでプレイヤーに生まれる感情はテキストだけでは到底表現しきれない[*3]。

[*3] 他にも、 物語の最初にヒロインが無力な主人公を助けてくれる場面や、主人公達が全力で逃走する場面などにも戦闘ゲームモードが演出として使われている。 ただ、これらの演出の効果は戦闘ゲームモードへの切り替わりによって物語が寸断される悪影響に相殺されてしまっており、大きな効果があったというほどではない。

この作品は、戦闘ゲームにおけるプレイヤーのユニットへの思い入れを利用して効果的に裏切りを演出した特異な作品である。物語重視の立場から見れば、とても興味深い作品である。

だが、現実には、この作品はほとんど注目・評価されなかった。 これにはいくつか理由がある。まず第一に、ヒロインをレベルそのままで敵ユニットとして登場させる都合でゲーム設計に制約があり、その結果戦闘ゲームが面白くなくなっている点が挙げられる。もともとこの作品のゲーム部分は演出なので、ゲーム的に難しくするのはプレイヤーが物語から離れて逆効果になる。 よってゲーム的な面白さはまず生まれない。ならば、キャラクター主導作品であったような爽快感を出す方向性はどうかというと、ヒロインが敵対する可能性があるためにヒロインをあまり強くできない。例えば、レベルアップシステムについてみると、 この作品ではレベルアップでLP(=HP)と防御力が上昇するが、攻撃力と行動速度と回復力は上昇しない。これは、レベルアップさせすぎたヒロインが敵対したときにどうにもならなくなる事態を避けるための配慮である。しかし、このシステムの結果、 レベルをいくら上げても、敵をなぎ払って爽快感を得ることはできなくなってしまった。

もう一つの問題は、対象プレイヤーである。この作品は戦闘ゲームが大きな要素を占めながら、物語主導である。もうすでに物語主導にゲーム性が要らない時代に突入していた当時、物語重視のプレイヤーは戦闘ゲームが入るという時点でほとんどこの作品に目を向けない。 そして、ゲーム部分を重視するプレイヤーは物語部分の出来はあまり気にせず、 純粋にゲーム部分を評価することが多い。そして、この作品はゲーム部分が物語の演出にすぎないために、ゲーム部分だけを評価すれば当然出来が悪い。結果、低評価となる。

この作品は物語重視プレイヤーから見れば興味深い面がありながら、全く評価されずに終わった。「物語重視にゲーム要素は要らない」ことの発見は、 物語主導作品の大きな進化だったのだが、ゲーム要素を演出として利用する手法を出来の正否問わず否定してしまう側面もあった。残念なことである。


ヒロインおよびルートの解説




深海 真薙(ふかみ まち)
設定的にも、物語上も、ゲーム的にも、筆頭ヒロインである。しかし、 ユニットとして見ると、ヒロインの中で一番弱く、使えない。 それでもなお、主人公(プレイヤー)は彼女を頼らざるを得ない。 何しろ筆頭ヒロインなのだから。
七風 まどか
主人公の姉として登場する。この作品を代表するヒロイン。嘘つきヒロインにして裏切りヒロイン。他のゲームを見渡しても、彼女ほど話す内容が嘘八百なヒロインはそういない。このゲームをプレイするプレイヤーなら、 是非まず最初に彼女のルートをプレイして、彼女に騙される主人公を堪能すべきである。ユニットとしては戦闘能力よりは回復役。ただ、 戦闘ゲームにおいて回復ユニットの重要性は言うまでもないことで、その裏切りはプレイヤーに与える印象が大きい。
森下 樹里
年下の軽いタイプのキャラクター。LP(HP)が高く長距離攻撃を持つため戦闘で活躍することと、 憎めない性格でプレイヤーに印象が良い。彼女のルートで彼女が離反する場面は本作品の見せ場の一つ。
小日向 涼乃(こひなた すずの)
“ツンデレ”タイプ。 攻撃力が高く戦闘で活躍するためプレイヤーの受けが良い。物語が悲惨なためあまりデレの部分が語られないが、全体としては優遇されたキャラクター。
霧島 香奈
ぬいぐるみ使い。 彼女は登場時から大体の素性がわかっているため、プレイヤーにとって彼女は裏切るのが当たり前である。そのためか、逆に彼女は離反・敵対がルートに含まれていない。その分物語が悲惨になっている。 ユニットの能力としては優秀。だが登場が遅いために活躍の場面が少ない。

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last update: 2005/9/25