アルカナム電脳遊戯研究所 個別解説

しすたぁエンジェル:魂こもったコメディ作品の名作


「しすたぁエンジェル」 (C) Terralunar/月面基地前  発売日: 2002/3/1 機種: Windows98以降 レーティング: 18歳未満禁止 アーカイブノベル


コメディ作品の傑作である。

一般に、媒体を問わず、コメディ作品やギャグ調作品は、名作・傑作と呼ばれることは少ない。これにはいくつか理由がある。パロディ的要素を含み普遍的な価値が低い、ネタがわかる対象プレイヤーが限られる、物語の締めを盛り上げるのが難しい、等々。

もちろん、コメディ作品はプレイして楽しいものであって、その需要は大きい。 しかし、名作と呼べるものが作りにくく実際少ないのも間違いなく、 その時限りの消費物として扱われることが多い。これは作る側にも影響し、気合いの入った作品作りはされにくくなる。そして、ますます小粒な作品が増えることになる。

そういう前提がありながら、この作品は全力でコメディを作り込んできた。 タイトルメニュー画面での予告編ムービー3連戦に始まり、次々と繰り出される場面の数々はプレイヤーを圧倒する。ベテラン声優の実力を最大限引き出した声による演出も大変効果的である。終わりの締めもしっかりしている。 とにかく、プレイして楽しい作品である。

プレイして楽しいのだから、作品の目的から考えれば成功である。 絵が売れ筋ではないことと新規参入ブランド第1作ということであまり有名にはならなかったが、プレイした人の評価は上々だった。 コメディ作品としては珍しく、名作と言ってよい作品である。

この作品が名作となりえたのは、ひとえに創り手の並々ならぬ熱意がそそぎ込まれていたからである。しかし、この作品は創り手を激しく消耗させた。 同じ制作スタッフによる次の作品(「らくえん」)の制作は迷走し、何とか完成し発売になったが、もうその次は出そうにない。 この2本の作品で、創り手は燃え尽きてしまったようである。

創り手が燃え尽きるほどの熱を入れた作品制作は、ブランドの継続性の見通しがないので、ある程度地位を固めた創り手およびブランドは普通行わない。 よって、この作品のような力作コメディは既存ブランドから出ることは期待できない。期待できるのは新規参入ブランドの第1, 2作あたりだが、 新規参入時はいくら熱意があってネタが良くても、様々な点で不慣れなのでちゃんとした作品に仕上げるのは困難である。作品の仕上げに失敗した場合、 投入した熱意が無駄になってしまう。

プレイヤーの立場からすれば、この作品のようなプレイして楽しい力作がどんどん現れて欲しいものである。しかしそれは創り手の浪費につながり、ありえない。だから、この作品のようにプレイして楽しい魂こもった力作は貴重である。 それに巡り会えたプレイヤーは巡り会えた幸運に感謝し、 消費した創り手の才能に敬意を表して、作品を楽しむべきである。


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last update: 2005/11/5