アルカナム電脳遊戯研究所 一般コラム

欠点声: プレイヤーへの嫌がらせ属性、そしてその効用とは

現在、ヒロインの魅力を演出する上で、声は不可欠の要素となっている。 物語上重要な脇役(特に男)に声を配さないことはあっても、攻略対象ヒロインがフルボイスになっていない作品はもはや皆無である。 声優のキャスティングはプレイヤーにとって大きな関心事となっている。

歴史的にみても、アダルトシーンに出演できる声優が限られていた昔には、家庭用ゲーム機向け美少女ゲームが一般アニメの人気声優の声が付くということで、エロありのPCゲームに対する大きなアドバンテージを持っていた。 その後、PCゲームでもヒロインフルボイスが可能になると、声の効用はすぐにプレイヤーに認められ、ヒロインフルボイスの普及と声優のレベルの向上が急激に進んでいった[*1]。ヒロイン“萌え”文化の成立に声優の果たした役割は大きい。

このように、声はヒロインの魅力を引き立たせるべきものである。 ところが、「極度に会話が遅い」「(声が小さく)非常に聞き取りにくい」のように、わざわざヒロインの声に欠点属性をあてがった例が存在する。 容姿の方ではヒロインをわざわざ不細工に描くことなどありえないのに、なぜ声ではありえる(た)のだろうか。

声は、ヒロインを表現する上で特別な要素である。ヒロインの声そのものが直接プレイヤーの耳に飛び込むからである。 これに対し、性格や能力は、主人公の感想や主人公に与えた影響、あるいは地の文で表現される。 容姿は、アニメ絵というデフォルメを受けてからプレイヤーに届けられる。 いずれもプレイヤーにとって間接的である。

そのため、声に現れる欠点は、能力面などにおける欠点に比べてプレイヤーに与える印象がきわめて大きい。 これまで本サイトで紹介した欠点属性の「どじ」や「料理下手」は、被害を受けるのは主人公であってプレイヤーではない。 しかし、声が聞き取れなくて困るのは、主人公に加えプレイヤーもなのである。

ところが、主人公とプレイヤーが同時に困るという現象は、思わぬ効果がある。 それは、主人公とプレイヤーの同調性が増す、ということである。 実のところ、以前のコラムで紹介した、主人公とプレイヤーを同調させる方法はあまり多くなく、効果も弱い。 しかも、最も強力な手段であった主人公の名前変更機能はフルボイス時代にはまず使えなくなっている。

声を使って主人公とプレイヤーに同種感情を引き起こさせて同調を高める、ということなら、敵役に不快な台詞を言わせる、といった形でよく行われている手法ではある[*2]。 しかし、主人公とプレイヤーは同調するものと決まっているわけではない現在、主人公が同調型であることを示すのにボス敵を登場させてからでは遅すぎる。 また序盤の日常から敵役が出て不快なことを言っていては作品の雰囲気が悪くなる。 今は少ない同調型主人公を登場させる際、声に軽い欠点を持つ女性キャラクターを所々で登場させ、プレイヤーに主人公のコミュニケーションの苦労を味合わせて同調性を高める、という手法は有効なのかもしれない。

まとめると、声における欠点の特徴は、唯一プレイヤーに直接影響を与える属性である点である。 その副次的影響として、主人公とプレイヤーの同調性を高める効果があり、今は少なくなった同調型主人公を運用する上で助けになる可能性がある。 ただし、ヒロインとした場合魅力への影響が甚だしいため主役には向かず、また主人公が同調型でない場合にはなおさら出してはいけない欠点属性である。

[*1] これによりエロのない家庭用ゲーム機作品はPC向け作品に対する優位性を失い、衰退に向かうこととなる。
[*2] 逆に、主人公とプレイヤーを同調させたくない場合には、敵役は格好良い方がよい。


関連属性についての解説

口が利けない(筆談ヒロイン)

ヒロインが全く話せない場合、声による演出がなくなり、ヒロインの意志はスケッチブック等に書いた言葉としてモニタ上に表示される文字により表現される。 しかし、美少女ゲームは、登場人物の声がなかったらないでメッセージウインドウの文字だけで十分に登場人物の意志が伝わるようになっている。 そのため、ヒロインとの筆談において主人公が感じる意思疎通の困難をプレイヤーは共有しない。 よって、筆談ヒロインは、本記事本体での聞き取りづらい声のヒロインと異なり、同調型主人公には合わないと考えられる。

毒舌ヒロイン

声そのものに欠点があるわけではないが、主人公をきつい言葉でののしるヒロインの登場例は多い。 毒舌の程度や引き金となった主人公の行動が様々なので一概に言いづらいが、とりあえずきつい言葉がプレイヤーの耳に入るので、プレイヤーはその言葉に何かを思い、作品内世界に意識を引きつけられる。 ここまでは確かである。

すでにプレイヤーが主人公と同調していれば、主人公に放たれた言葉はプレイヤーに放たれた言葉でもある。 主人公が抱く感情とプレイヤーの抱く感情が同じになるようコントロールすることは容易だろう。 この場合、同調性はさらに増すことになる。

しかし、プレイヤーと主人公が同調していなかった場合、ヒロインの放った言葉はあくまで主人公に対するものであり、プレイヤーに対するものではない。 当事者の主人公が抱く感情と、当事者ではないプレイヤーの抱く感情は当然異なる。

結局、毒舌ヒロインは、声そのものに欠点があるヒロインと同様同調型主人公に有効な属性であるが、同調を新たに発生させる効果はなく、同調型以外の主人公でも使えないことはないという違いがある。 同調型主人公として利用するなら、主人公が同調型であることを先に示しておく必要がある。


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last update: 2010/9/21