アルカナム電脳遊戯研究所 一般コラム

料理ができないヒロイン、料理上手な主人公

料理ができるのは良いことである。 そして女性は、普段料理をしないとしても、 子育てなどで料理をする機会が多くなると社会的に見なされている。 だから当然、ヒロインは料理ができる方がよい。 主人公が、相当数のプレイヤーと同じように、ろくに料理をしない(できない) 場合はなおさらである。

しかし現状には、料理が全くできないヒロインは珍しくなく、果ては挑戦したあげくに毒物を作ってしまったり(毒料理)、台所を破壊してしまうようなヒロインも少なからずいる。 一方、主人公のためにそこそこおいしいお弁当を作ってくれるヒロインももちろんいるのだが、料理失敗(例えば毒料理)イベントに比べてお弁当イベントはあまり目立たないのが現状である。 この点について考察してみたい。

まず、料理ができる側のヒロインについて。 ヒロインにとっておいしいお弁当が作れることは、良い主婦になれることの証である。 主人公にとってはヒロインの作る料理がおいしいに越したことはないのだが、ならば上手であれば上手なほど良いかというと、そうはならない。 お金が取れるぐらい料理が上手いのなら、主人公の主婦に収まるよりもその腕を生かして料理人になる方が良い結末になってしまうからである。 だから、ヒロインの作るお弁当は、客観的にみた場合の出来として、まあまあおいしい、のレベルにとどまる。これではあまりインパクトがない[*1]。

さらに、料理ができる、というのをヒロインの魅力とするには、主人公は料理ができない方がよいのだが、このとき料理が不得意な他のヒロインを選んだらどうなるのか、という問題がある。 ヒロインも主人公も料理ができないとなると家庭の将来に不安が大きく、だからといってヒロイン全員が料理ができるというのはワンパターンである。 結局、ヒロインが料理人だというのでもない限り、ヒロインが料理ができるというのはあまり強く押し出されるべきものではないということである。

次に、料理ができない/毒料理ヒロインについて。 料理失敗イベントはコミカルなイベントとして日常シーンを彩り、雰囲気を和らげる効果がある。 だが、料理すると周囲に損害を及ぼすことはヒロインにとって明確な欠点である。 それでもなお欠点属性をあえて使う狙いとして、どじヒロインの解説で述べたように、年上ヒロインに与えて主人公とヒロインとの格差を埋める、年下ヒロインに与えて上下関係を強化する、といったような活用が考えられ、物語上価値がある。 とはいえ欠点属性はヒロインの魅力に悪影響があることは確かであり、欠点が致命的とならないようにする配慮が必要である。 ここでの回避法は、主人公が料理ができると設定することである。 特に、そこそこの料理が手際よく作れ、料理を負担と感じないことが望ましい。 主人公が料理担当となることで、主人公とヒロインのカップルにとって料理下手属性の悪影響をほとんどなくすことができる。

料理ができる主人公は、多くのプレイヤーがあまり料理ができないことから、同調型(本サイト分類による)では扱いづらいが、料理はプレイヤーにイメージしやすい能力なので、共感型に向いている。制作者側にとってもイメージしやすく、設計しやすい主人公である。 また、そこそこのレベルの料理を手際よく作れる主人公は、料理が得意でないヒロインにとっては主人公に好意を抱く大きな要因となるし、料理が得意なヒロインにとっても時には代わってもらえるという点で有益である。 このように、料理ができる主人公と料理能力に幅があるヒロイン達の組み合わせは、共感型主人公・複数ヒロインのスタイルの作品によく適合する。 近年は主人公に同調型は少なくなり、共感型が多くなっている。ジャンル動向に一致している。

まとめると、料理上手ヒロイン・料理下手な主人公の組み合わせは、同調型主人公・単一ヒロインのスタイルに最も適合しており、現在の美少女ゲームの作りには合っていない(ライトノベルには向いているかもしれない)。 一方、料理上手主人公・多様な料理の腕のヒロイン達(一部、毒料理ヒロイン等、笑ってしまうほど下手でもよい)は、共感型主人公・複数ヒロインの現在主流の美少女ゲームの作り方に合致する。今後も生み出され続けると予想される。

[*1] 料理が上手いヒロインで他に多いパターンとしては、料理を作らせても上手い、といった形でヒロインの万能さを示す一環として料理イベントを用意する場合がある。 ヒロインの本業での能力の高さを補強するイベントである。

<筆者後書き> 料理が上手い主人公の登場は、昨今の男子の主夫願望の現れである、という見方が存在するが、筆者はこれは実情に比してプレイヤー/制作者を悪くみた見方と考えている。 サポート役主人公の登場は、主人公とつきあう可能性のあるヒロイン達に多彩な魅力を求め、かつ物語に整合性を求めたところ、結果的にそうなったのである。 プレイヤーは主人公がサポート役であることを容認しているが、積極的にサポート役であることを求めているわけではない。


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last update: 2010/9/1