アルカナム電脳遊戯研究所 一般コラム

お姫様はブームとなりうるか?

ここ最近、主要なヒロインとしてプリンセスが配されたソフトが増加の傾向にあるようだ。妹ブームが終わったとされる今、お姫様は新たなブーム属性となりうるだろうか。

プリンセスは、PCゲームが生まれる前から他の媒体で存在した伝統ある属性である。 しかし、PC美少女ゲームでは、何年か前には「『プリンセス』の名の付くゲームに当たりなし」と言われることもあったほど、 良作に恵まれなかった。果たして、良作に恵まれなかったのは属性本来の性質に由来することなのか、それともたまたまなのか?

さて、それではまずプリンセス(お姫様)の属性に含まれる性質を列挙する。なお、 これらの性質は“普通の”プリンセスヒロインについてのものであり、意図的に普通から外した設計も当然ありうる。

  1. 容姿:顔・体型[*1]ともに美人である。それが当然のことと周囲から認識される。 服装は機能性より容姿を生かす方に重点が置かれる。
  2. 性格:典型的な性格がいくつか存在する。共通点として挙げられるのは、上品である点。 一般人民と異なる社会階層におり、その社会階層の中では高いモラルを持つが、一般人民が持つ常識とずれていることが多々ある。
  3. 能力:剣術・魔術・政治権力などで一般人を大きく超える能力を不自然なく持つことができる。しかし、能力の行使には立場上の強い制約があることが多く、 一般に使い勝手が悪い。
  4. 世界内立場:臣民に対する、逃れられない責任がある。
  5. ゲーム内立場:筆頭ヒロインとしての登場が多い。
  6. 登場条件:異世界が登場する必要がある。異世界そのものが舞台となるか、世界間移動が存在する。

[*1] 体型について:登場するプリンセスが一人の場合は、身長がやや高めで胸も大きめに通常設定される。複数登場する場合は、ヒロイン間の差別化の観点からその他の体型が設定されるプリンセスも登場する。

これらを見てみると、(1)〜(3)まで、美少女ゲームに実に向いたヒロイン属性であることがわかる。どんなに“いい女(の子)”に設定しても世界観的に許容される。 見栄えのよい衣装を好きに着せられる。 プレイヤーとの常識との違いを使って日常イベントを容易に創り出すことができる。 能力も他のキャラクターや世界観に合わせ、無力同然からかなり強烈な超常能力まで自在に設定できる。

しかし、(4)は、扱いやすいとはいえない特徴である。プリンセスは職業であり、 プリンセスの属性の魅力はその職務を立派に果たしてこそ発揮される。 そのため、物語の最終段階で臣民に対する責務を放り出す展開(例:駆け落ち)が許されない[*2]。また、物語の初期段階ですでに立派なプリンセスである場合には、 物語の最初と最後でそのキャラクターに変化がないことになる。これは、 物語が大きく広がりにくいことにつながる。さらに、プリンセスの立場を保ったまま主人公とくっつくためには、主人公が王子であるなど、 それに見合った地位でなければならない。しかし、そのような主人公はプレイヤーとの差が大きすぎ、プレイヤーが同調または共感する主人公の設計は困難である。 (6)の特徴である異世界の登場も、主人公とプレイヤーとの距離が広がる元凶となりやすい。(5)で述べたように筆頭ヒロインとしての登場が多いのは、 プリンセスヒロインの存在が主人公と世界を強く規定するため、そのヒロインを物語の主軸に置く必要があるためと考えられる。

[*2] 職業属性の一つである「先生」属性も同様の傾向がある。先生ヒロインは、 教えるのが下手では魅力は発揮されない。また、物語の最終段階で先生を辞めてしまって は先生ヒロインが先生ヒロインである理由がない。そのため、先生ヒロインに対する物語のエピローグは、主人公が先生となって帰ってくるのが標準パターンである。

結論として、プリンセスヒロインは、キャラクターデザインの段階ではやりやすいが、 プレイヤーを熱中させ感動させる物語を構築するのが困難である。 要するに、安易なつくりになりやすい、ということである。 「『プリンセス』の名の付くゲームに当たりなし」と言われることがあったのはおそらくこのためではないか、と考えられる。 よって、プリンセスヒロインがブーム化するのはジャンルとしてあまり望ましくない。メーカーには、よく注意して扱ってほしい題材である。

特定パターンに関する解説

囚われのお姫様を助け出す

RPGで定番中の定番のストーリーパターンである。しかし美少女ゲームでは(ADVではなくゲームである場合も含めて)、あまり成功しないストーリーパターンである。理由は簡単で、囚われ状態のお姫様は、 主人公に同行する救出側ヒロインに比べて登場回数が少なく、プレイヤーが魅力を感じにくくなるためである。さらに、戦闘が物語中に多く含まれるため、戦闘で役に立つヒロインが強くプレイヤーにアピールされる。 反面、囚われ状態で無力なヒロインの魅力が低下する。魅力あるヒロインを危険にさらして魅力の低いヒロインを救出するのでは物語がうまくいかないのは当然である。救出側を全員男性にする、もしくは主人公一人で頑張る、というのが安直な解決策だが、 美少女ゲームでそれをやると妙な作品になりやすい。 囚われヒロインを別ヒロインルート等で十分活躍させ、 プレイヤーに対する魅力を稼がせておく必要があるだろう。


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last update: 2005/8/29