アルカナム電脳遊戯研究所 一般コラム

ツンデレの時代

「ツンデレブーム」と呼ばれることもあるようで、「ツンデレ」の属性が最近注目されている。この最近の傾向を考察してみたい。

「ツンデレ」の属性は、シナリオ開始当初主人公に対し敵対的な態度をとり(「ツンツン」)、シナリオが進行して主人公と関係改善されると逆に極度にラブラブ甘々な態度をとる(「デレデレ」)キャラクタータイプである。

この属性の最も特徴的かつ重要な点は、キャラクターの変化を伴うことである。 通常の属性と比較してみよう。通常の属性のヒロインは、シナリオ序盤に属性に基づくイベントを用意してプレイヤーに属性をアピールする。 そしてプレイヤーにそのヒロインを気に入れさせ、プレイヤーに攻略させる。 ルート終了で無事ヒロインが主人公のものになり、プレイヤーが満足すればめでたしである。だから当然、ヒロインの属性は登場時のまま最後まで保たれていなければならない。つまり、通常の属性は、 ヒロインの変化を嫌う。これは、物語を組み立てる上で大きな縛りである。

これに対し、「ツンデレ」の属性は、属性そのものに変化が組み込まれている。 何事もなしにキャラクターが変化するわけはないから、この属性は物語の裏付けが絶対に必要である。また、当初の「ツン」状態(主人公に過度に敵対する状態)が異常なので、その理由を示す必要があり、これにもきちんとした物語の裏付けが必要となる。

このように、「ツンデレ」は、物語が重要になる属性である。実際、 ヒロインの属性を多用して作品を組み立てるキャラクター主導作品では「ツンデレ」属性が使われることはこれまで少なく、物語重視作品で物語上の補助的な役割を果たすメインではないヒロインに使われることが多かった。

そして今「ツンデレ」が注目されていることの意味である。属性として「ツンデレ」が注目されていることは、属性を重視する(これは、 物語主導よりもキャラクター主導の作品を好む)プレイヤーおよび制作者が「ツンデレ」に目を向けたということである。 そして、きちんとした物語を必要とする「ツンデレ」属性を扱う作品では、 キャラクター重視のプレイヤーおよび制作者も物語に目を向けなければならない。

これまで、キャラクター主導の作品では各シーンの演出が最重要視され、 全体としての物語は軽視されていた(「美少女ゲームに物語(シナリオ)は不要?」との説もあった)。 しかし、別項でkakashi氏が述べている(「夜明け前より瑠璃色な」の解説)ように、物語軽視でヒロインの属性をベースに作品を作るとすぐにワンパターン化が進行し、新作作りが困難になる。 今「ツンデレ」が注目されるのは、キャラクター主導であっても物語を活用する必要が生じてきた現れの一つとみることができる。

最後に、「ツンデレブーム」の今後について考えてみたい。 そもそも「ツンデレ」がどれだけ人気なのか、という点が微妙である。 実際、かつての物語重視作品でちらほら登場していたツンデレヒロインは、 メインを張っていたわけではなく、そんなに他のヒロインに比べ人気が出ていたわけでもなかった。その後今までに、日本社会でツンデレが人気になるに値する何かが起きたわけでもない。 今「ツンデレ」が着目されるのは、上で述べたようなあくまで美少女ゲームの中でのジャンル変動で考えるのが最もしっくりきて、 過渡期ならではの現象とみるべきである。


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last update: 2006/8/7