一言で言えば、秀作である。このゲームの内容に興味を持った人で、これをプレイして駄作と感じることは少ないだろう。ただし、興味がない人に勧めてみたところで、楽しんでくれる保証は全くない。
このゲームの本質は「夢物語」である。現実の同人誌即売会は、このゲームで語られるほど希望に満ちているわけではない。1ヶ月に1回数十ページの新刊を出し続けるのは不可能。どんなに優れた内容であっても、創作健全本で2000部を売ることなどできない。入稿の締め切りが即売会の2日前であるわけがない。その人の本を持っているだけの関係で、有名作家に電話一本でゲスト原稿依頼をして簡単に引き受けてくれるわけがない。
しかし、現実と異なる以上の点すべては、同人作家にとって「こうだったらいいな」という夢である。このゲームではその夢が存分に叶えられる。毎月新刊を出し、即日完売。莫大な利益。瞬く間に大手サークル、壁際サークルにのし上がれる。出す本のジャンルは(健全本という条件はあるものの)よりどりみどりで、とても売れそうにないジャンルでも最終的には2000部を売ることができる。即売会には醜い部分もあるが、その程度は向上意欲をかきたてるのに必要なレベルである。そして、即売会にマンガの魅力と希望が満ちあふれている!
現実と異なるこれらの点を前提として認めてしまえば、このゲームで語られる物語は無理のない、まっとうな話である。しかも暖かい、よい話である。そのため、このゲームで語られる物語を気に入るかどうかは、虚構の前提を虚構と理解した上で受け入れるかどうかにかかってくる。ところが、同人誌の世界を知らない人にとっては、以上のいずれも自分に無関係であり興味も知識もない。そのため、どこが現実に即していてどこが虚構なのか判断することができず、物語全体が嘘臭くなってしまう。結局、このゲームのコンセプトは「同人作家の夢が叶う話」であり、同人作家か同人作家を知っていて理解がある者という限られた層しか楽しむのが難しいのだ。
ただ、繰り返すことになるが、このコンセプトに立ってみると、「こみっくパーティー」は極めて優れたゲームである。筆者は「同人作家の夢が叶う話」というコンセプトに共感を覚える人にこのゲームをお奨めし、「よくできた夢物語」という評価をこのソフトに贈りたい。
項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
シナリオ | ☆☆☆☆☆ | 良い。ただし前提あり。本文参照。 |
CG | ☆☆☆☆ | 基本的に不満はない。 |
キャラクター | ☆☆☆☆☆ | お約束シリーズと名脇役がそろっている。 |
サウンド | ☆☆☆☆ | 問題ない出来。 |
ゲームシステム | ☆☆☆ | 育成の面のゲーム性が低い。 |
プログラム | ☆☆ | バグが多い。 |
ゲーム分量 | ☆☆☆☆☆ | これだけあれば十分。 |