亀井 義行
プロフィール 右投左打 82年7月28日生 外野手・一塁手・三塁手
上宮太子高→中央大→巨人・05年ドラフト4巡
獲得タイトル 09年・ゴールデングラブ賞。
09年終了時
通算成績
打数 安打 二塁 三塁 本塁 打率 打点 盗塁 三振
968 254 61 34 .262 116 21 177
大学時代は「東都のイチロー」の呼ばれた、走攻守揃った逸材。かつては投手として、甲子園に出場している経歴もイチロー似だ。もっと上位指名されてもおかしくない選手だったのだが、以前から巨人がしっかり囲い込んでおいたのだ。

1年目から早くもオープン戦に出場し、イースタンでも三塁打と補殺がトップと、攻守にわたって活躍。すると7月9日、兄貴分である高橋由伸の故障をきっかけに一軍昇格し、即スタメンで初出場。そして、第三打席で初安打。

「この亀井って言うのは……良いですよ。使っていけばいいじゃないですか」

第四打席の前、辛口解説で知られる大下剛史氏が賞賛していた。



06年、いよいよ亀井が潜在能力を開花させるか、WBC壮行試合の中国戦では、3安打3打点の活躍。そして原監督は期待を込め、なんと開幕スタメンの大抜擢。
「8番でスタメンを組むけれども、将来的には3番4番を打つんだと言う気概でやれ」
開幕戦前、原監督が亀井へ送った言葉。

さあ一回裏、二死満塁で迎えた初打席。投手は三浦大輔。亀井はあっさり2球見送って2ストライクと簡単に追い込まれるが、ここから驚異の粘りを見せる。ボールが2つ続いた後は、なんと5球連続ファウル。この時の9球目、インハイに外した釣り球、139キロのストレートも亀井はカット。

「あれをファウルにするってのは、やはり良い物を持ってますよ」

そう評す解説の山本浩二氏。「普通はあそこ空振りだよね」と、星野仙一氏も感心。

亀井の粘りはまだ止まらず、さらに2球連続ファウル。さすがに我慢の限界か、三浦はこの勝負、ストレートとスライダーしか投げていなかったが、ついに12球目、初めて101キロのスローカーブを投げる。意表を突いて決めにいった球だったが、これはあえなく外に外れてしまいボール。しかし、初めて投げる緩い球で、亀井の視線を切れさせる事はできた。次の勝負球も、三浦が有利だ。
さあフルカウント、果たして決着なるか、三浦はインローギリギリへ142キロのストレート。しかし、これもファウルカットする亀井!

「ピッチャーとしては最高のボールよ」
「良いコース来てます。これよく当てましたよ」

その粘りと打撃技術に驚嘆する、星野氏と山本氏。もはや投げる球がなくなった三浦、14球目は低めの縦スライダー、これをついに芯で捉える亀井。亀井の得意技、低めのライナー返し!

2点タイムリーヒットとなり、長き勝負は亀井に凱歌。そして第三打席では、インローを上手く腕を畳んでセンター前へタイムリーヒット。さらにベースカバーに入ってないのを見抜くや、俊足を飛ばして二塁を陥れる好走塁。第5打席にも犠牲フライも放って、計4打点。スタメン抜擢に応える大活躍であった。

しかしこれ以後、まったく波に乗れなかった。

打率は1割台に急降下し、一方でこの時期、ポジション争いをしていた矢野が、二塁打連発の大活躍。するとその存在はかすんでしまい、怪我もしてしまって一軍登録抹消。5月18日には復帰するものの、迷いがあるのか打撃の始動が遅れたり、好球を待っているうちに追い込まれたりと、何もできないまま終わる打席を連発。さらには得意の守備でもミスが出たり、期待を裏切ったシーズンとなった。



07年は、矢野に加えて、谷とホリンズも加入し出番は激減。東都のイチローも、イースタンのイチローとなってしまったが、それでも6月20日、突然、スタメン5番に抜擢されたりしていたので、原監督の期待たるや相当なものです。

さて07年オフ、原監督は亀井の奮起を促す狙いで、秋季キャンプのメンバーからあえて外した。そのまま腐ってしまう危険もはらんだ荒療治であり、原監督最後の賭けであった。

その賭けは果たして的中か、08年のオープン戦にて原監督は、「走攻守において安定した力を発揮したのは亀井だと思います」「レギュラーに一番近い選手」と亀井を絶賛。当然のように、08年も3年連続となる開幕一軍となった。

しかし、いざペナントが始まると、代打起用されてもノーヒット続き。本番では力を発揮できない、いつもどおりの亀井であった。だが、原監督は亀井の覚醒を強引に迫った。開幕六戦目、亀井を2番センターで今季初スタメン起用。そして、この強引策が実を結んだ。
7回裏二死、1-5の場面で高橋由がスリーランを放つと、続く亀井が、今季初安打が同点ホームラン!この時、亀井が両拳を握り締めて喜んでいたのが印象的です。
さらに次の小笠原も本塁打と、三者連続本塁打で逆転。巨人は今季初勝利となり、これを契機に亀井も吹っ切れたか、以後もスタメン起用されると攻守に活躍。

「今年は初球から振る、と決めていた」

やはり過去のプレイに反省したか、この年からプレイに積極性が出てきたのだ。



5月3日のヤクルト戦では、ノーヒットノーランピッチングを続ける村中に対し、9回一死の場面から13球粘り、14球目、ど真ん中ストレートの失投を逃さず、フェンス直撃のツーベース!これを足がかりに巨人は一挙5点を奪って勝利。

5月下旬に怪我で離脱してしまう運のなさは亀井らしかったが、首脳陣の信頼は揺るがず、復帰後も谷との併用ながらレギュラー格。クライマックス・シリーズでも活躍し、セ・リーグ制覇に貢献した。

亀井の躍進はまだ止まらない。なんとシーズンオフには、実績不足ながらもまさかのWBC日本代表に選出。選考理由は、外野のバックアップ要員……つまり、東都のイチローが、日本代表の堀田一郎となったわけです。
そしてイチロー本人は、WBCにて原監督にこう述べた。
「亀井って良い選手ですね」

09年からは背番号9番に昇格し、ほぼレギュラー確定。しかし、たった1年、規定打席未満の活躍をしただけでこの優遇ぶりは、何度も結果を出した矢野の立場がない。

そしてこの年は、4月25日に岩瀬から代打逆転サヨナラスリーラン。8月1日にはランニングホームラン。8月4日の広島戦では、二盗からエラーを誘い、そのままホームインしてしまう好走塁に、9回に同点ツーラン、そして11回にサヨナラツーランの独壇場活躍。8日にもサヨナラホームランを放ち、すっかり頼れる打者となった。

続く日本シリーズ第2戦にも、ダルビッシュから逆方向へ2ランホームラン。
「成長したな。ダルビッシュが逆方向へホームランを打たれる打者は滅多にいない」
敵将、梨田監督もそう舌を巻く、驚異の一打だった。
そして第5戦でも、9回裏に同点ホームランを叩き込み、阿部がヒーローインタヴューにて、「亀井は後輩で良かったな」の賛辞。優秀選手賞を獲得した。

難しい球にも体勢が崩れず、滑らかに回るスウィング、確実に芯で捉えるミートセンスは確かに天性の物。俊足を飛ばしての三塁打もあれば、セーフティバントの内野安打、そして一発もあり、多彩な攻撃を展開する。そして、以前までは低めをライナーで返していたのが、09年からはホームランになっており、更なる成長も見えている。広い守備範囲と強肩も、チームトップクラスだ。

とても巨人とは思えない3年の我慢がようやく報われた感がある。裏を返せば、それだけ期待されていたのでしょうな……。まだ調子に波はあるものの、このまま行けば、吉村、高橋由の流れを汲む、天才型左打者が完成する。柔と剛とセンスを併せ持ち、広角に長打が打て、投手出身の外野手なのはそっくり。原監督の最高傑作になるかもしれない。

亀井の打撃を見ていると、斉藤宜之が順調に育っていれば、こう言う打者になったのかな、と思わずにいられません。


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