第三の警官

第三の警官 フラン・オブライエン(1967)

 知る人ぞ知る、と言った幻想文学の隠れた傑作。自分が死んだ事に気づかない男の円環的な物語で、そのノンセンスな雰囲気からしばしばルイス・キャロルと比較されています。「自転車と自転車乗りの間の原子交換から生まれる」と言う奇々怪々な「自転車人間」が登場したかと思えば、無限や入れ子について繰り返し語られる衒学趣味。かなり異様なストーリーでありながら妙にあっけらかんと明るく、それがかえってグロテスクな雰囲気を際立てているような気もします。

 作者はジェイムス・ジョイスを生んだアイルランド出身の前衛作家。二十世紀小説の前衛的手法とアイルランド的精神風土に特有な中世的色彩との奇妙な絡み合いから産まれた独自の奇想小説として、一部の文学愛好家の間で支持されています。ありきたりなお話がキライな方、無限の果てがどうなっているか、今でも子供のように興味を持ちつづけている方にぜひオススメしたい1冊。

BOOKS
return to menu