犯罪幻想 江戸川乱歩(昭和31年)




犯罪幻想

「犯罪幻想」初版本と見返しの署名
 年少の頃から乱歩は私にとって偉大な幻想国の領主であり、つねに崇拝の対象でありました。ジュヴナイルから初期短編、通俗長編から随筆、評論のたぐいまで舐めるように読み尽くし、とりわけ長編 『孤島の鬼』 は熱中して繰り返し読みふけったものです。
 とびきり文章が上手くて、お話作りが巧みで、その上、子供には結構刺激的なエロチシズム満載とくれば、足らないものを探すのが難しいくらい。同時代の人気作家、甲賀三郎や、大下宇陀児が現在ほとんど忘れ去られた存在となっていることを思えば、時代を超えた乱歩の新しさには改めて注目に値するものがあると言えるでしょう。

 左は乱歩の自選短編11編を棟方志功の木版画で飾った豪華限定本。志功と乱歩ではその世界が違いすぎて相性が悪いような気もするのですが、それはさておき、好きな小説を一流の挿絵を眺めながら読むのは、また格別の味わいがあって楽しいものです。
 この本には棟方志功の手摺木版画が入った特製本というのが別にあり、現在ン十万円の高値。本1冊で売るよりも儲かるのか、版画だけバラして売られることもあるようで、なんだかなぁー、という感じ。どーせ私には買えませんけどね。
 なお、数年前に乱歩の生誕100年を記念して同じ版元(創元社)からこの本の復刻版が出版されています。五千円と、ちょっと高価ですが、安価な文庫等で読むのとはまた違った贅沢な読書をたまには味わってみるのも良いのではないでしょうか。
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