狂王外函
狂王扉
上:狂王(プレス・ビブリオマーヌ刊)
下:野中ユリのコラージュ

狂王 澁澤龍彦・野中ユリ

 私の所有する本の中でも最も高額な本。ほとんど清水の舞台から飛び降りたつもりで買いました。別に限定本の収蒐家というわけではないのですが、澁澤さんの本というだけでなく、野中ユリのエルンストばりのコラージュにぞっこん惚れ込んでしまったのが直接の購買動機かもしれません。

 内容は、『異端の肖像』に収められているエッセイを移したもので、例の「バヴァリアの狂王」、ルドヴィヒU世の生涯を描いたもの。ごく軽いタッチの人物スケッチと受け取られるかもしれませんが、最も澁澤さんらしい簡潔なスタイルで、その奇妙な人生を浮き彫りにしており、私の大好きな文章です。

 出版は愛書家の間ではその人有りと噂される、佐々木桔梗氏の個人経営出版社プレス・ビブリオマーヌ。限定175部の舶来純白仔山羊革装で、すべて耳付の越前産特漉き局紙を用い、1枚1枚に狂王のラテン語訳「レックス・デメンス」が透かしで入っているというほどの凝りよう。挿絵は印刷ですが、ほとんど手刷りに近い見事な仕上がりで、本文と同様の渋いグレーで摺られた精緻なコラージュは何度見ても見飽きることがありません。数年前に新装版が出ましたが、やはりオリジナルには到底及ばず、ホンモノの良さをしみじみ実感したものです。

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