二笑亭綺譚(昭森社版) 二笑亭綺譚(昭和14年)
 今を去ること60年の昔、深川門前仲町の一角に狂人が造ったという奇々怪々な屋敷が実在した。この『二笑亭綺譚』は、精神医学者式場隆三郎がその『二笑亭』を自らルポした貴重なドキュメントです。
 昇れない梯子、使えない部屋、節穴にガラスを嵌めた覗き穴等々、常人では到底思いつかないような趣向の数々は実に興味津々で、言わば赤瀬川源平の「超芸術トマソン」の元祖。収録された40枚に及ぶモノクロ写真から二笑亭の在りし日の姿を偲ぶことができるのですが、これが結構インパクトが強く、この写真を見るだけでもかなり面白いはず。式場隆三郎の描写も丁寧かつ的確、その場で案内されているような臨場感にあふれ、この稀有なレポートをより価値あるものにしています。
 写真上は昭森社版の再版で、かなり昔に買ったもの。下は平成元年に出た新装版で、二笑亭の立体模型の写真や赤瀬川源平の小説が増補された決定版。最近、文庫にも収録されたようなので、この機会にぜひご一読を。

 日常的実用性から激しく逸脱した夢想の産物として、また、ポスト・モダンを読み解くキーワードとしても極めて興味深い1冊。
二笑亭綺譚(昭森社版)

左上:昭森社版(昭和14年)
 上:二笑亭正面
左下:求龍堂版(平成元年)

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