慄然の書



ハガキ

慄然の書 (継書房刊 昭和50年)

 H.P.ラヴクラフト、ロバート・E・ハワード等々、名だたる大家を創出した伝説のパルプ雑誌ウイアード・テールズ本邦初の傑作集。オーガスト・ダーレスシーベリ・クイン等の著名作家を尻目に、アンソニー・M・ラッド、フラビア・リチャードソン、トンプソン・リッチ等の無名作家・作品中心のセレクションは怪しさ爆発で、気色悪いカバー・イラストと相俟って、いかにもパルプ雑誌的雰囲気に満ちたアンソロジーに仕上がっている。

 荒俣宏氏の解説によると、発売にあたっては収録作をばらばらに葉書に書きこみ、無作為に送って反応を調べるという、一種のマーケティング・リサーチを行ったとか。この片々たる、しかもマニアックな軽装本1冊のためにどうしてそこまでやったのかは不思議だが、何の説明も与えられず不気味な怪奇小説の一節を記された葉書を受け取った人達こそいい災難で、中には一種のパニックに陥り、ふるえる声で警察に通報した人もいたという。ちなみに、版元は「継書房 高等教育研究会」というところなのだから、さらに謎は深まるのである(?)

 収録作では、アンソニー・M・ラッド「寄生手」がパルプ調のチープな雰囲気が満喫できる1作。「人面疽ネタ」のバリエーションで、タイトルから想像する通りのストーリーが、想像した通りに運ぶのだが、これがまた楽しかったりしてしまうから、妙なものだ。
 また、シーベリ・クイン「ゴルフ・リンクの恐怖」は、全100編にも及ぶ「幽霊狩人グランダン博士」シリーズの記念すべき第1作。カントリー・クラブでの奇怪な殺人事件を描いたミステリー調の短編だが、サスガに多作家だけあって冒頭から読者の心をグッと掴む手馴れた話法は他の作家とは一線を画している。ホラーの苦手な人でも気軽に入って行けそうで、入門編として格好だろう。

 ウイアード・テールズ関連の作品群は、後に国書刊行会や青心社からまとまって上梓されることになる。また、これらの小説の魅力の一部といってもいい挿し絵の世界についても、代表的画家の一人、バージル・フィンレイの画集が青心社から出版されている。それらの端緒となったこの本は、その意味では外見のセコさに反して極めて重要。最近は古書店で見かけることさえ稀になってきたが、怪奇ファンなら、ぜひぜひコレクションしておきたい1冊だろう。

←突然一般家庭に送りつけられたというハガキ。こんなんいきなり届いたら、そら気持ち悪いでしょーな。(^^A

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