沖の小娘


沖の小娘(青銅社)


ノアの方舟

ノアの方舟(青銅社)



日曜日の青年

日曜日の青年(思潮社)


火山を運ぶ男

火山を運ぶ男(月刊ペン社)


ひとさらい

ひとさらい(薔薇十字社)

沖の小娘 シュペルヴィエル(青銅社)

ホラ男 「いや〜、「ジェイムズ全集」以来の登場ですね。もう存在を忘れられたかと思ってましたけど。んで、今回はシュペルヴィエルですか^^」
ALI 「ふむ。もし世界で最も偉大な幻想小説の書き手を10人選ぶとすると、私の場合、ポーやカフカ、ホフマンと並んでまず筆頭に入ってくる作家。詩人として有名ですが短編も素晴らしく、中でもこの「沖の小娘」(1930)は生涯忘れられない作品ですな」
ホラ男 「大西洋遥か沖合いの海のただ中に不意に小島が湧きあがるように出現する。島には様々な店や家々が建っているけれど、そこにはただ一人の女の子が無心に遊んでいるだけで他には誰一人住んでいない。食料はいくら食べても勝手に戸棚の中に出現するという不思議な世界で、女の子は自分が誰なのか、そこがどこなのかも知らず、そもそも生きているのか死んでいるのかさえも分からない存在。
んで、村に一本しかない大通りを行ったり来りしたり、誰もいないお店の人に話しかけてみたり、蝋燭を灯したりして日々を送っている。近くに汽船が通りかかると少女は深い眠りにおち、島もろとも海の底に沈んでしまうため、この島の存在は誰一人知る者もない・・・。

が、ある日のこと、どうした風の吹き回しか、近くに貨物船が通りかかる。女の子は必死で船影を追いかけるが船は気づかず行ってしまう・・・また一人寂しく取り残される少女・・・。

その頃、島を離れて行く客船の船べりに一人の水夫が肘をついて物思いに耽っている。さる航海の留守の間に喪った一人娘のことを寂しく思い出しながら・・・いいすね〜^^」
ALI 「思念の実体化というテーマはSFではお馴染みですが、70年も前にすでにこんな素晴らしい短編を書いているところがスゴイ。なにしろ詩人なので、そのイメージの美しさったらないですな。いわゆるコント・ファンタスティックの傑作です」
ホラ男 「コントというと、どーも「コント55号」を思いだしちまいますが」
ALI 「元々そんな安っぽい意味はないんですが、しょーもないお笑いを何でもコントという習慣がついたのには困ったもんですな。ま、欽ちゃんは嫌いじゃないんですが^^」
ホラ男 「年譜によると1884年生まれで死んだのは1960年。生まれは南米ウルグアイのモンテビデオで、両親はフランス人となってますが」
ALI 「南米と言うと、ボルヘスやコルタサル、カルロス・フェンテスなんかを思い出す人も多いでしょうな。世代的にはさほど変わらないけど、彼らもシュペルヴィエルを読んで感化されたに違いない。ロートレアモンやラフォルグと並ぶ南米作家の大先輩です」
ホラ男 「作品中では牛が喋ったり、死んだ夫が犬になってあの世から戻って来たりと自由奔放ですね」
ALI 「変身譚は何度も出てきますな。戦後の長編「日曜日の青年」(1955)では、主人公は蝿やのら猫に変身した挙句、愛する女性の肉体にもぐりこんでしまう」
ホラ男 「なんか、ちょっとエッチですねぇ(笑)」
ALI 「いやいや、誤解してはいかんです。これは肉体と魂のアンビバレンツな関係に関する形而上学的考察であって、決してそのよーな意図はないのであーる。戦前の長編「火山を運ぶ男」(1923)なんかじゃ、人工的に造った本物の「火山」をミニチュアにして鞄に詰めこんでしまう。この自由奔放にして魅力的な大と小の弁証法の美しさを見ちゃったろばいない!」
ホラ男 「はいはい、また訳の分からん演説がはじまっちまったい^^;
しかし、あんまり想像力が膨らみ過ぎるとついて行けなくなるとゆーか、どーでも良くなりませんか?」
ALI 「いやいや、シュペルヴィエルの場合は、このような奔放な幻想を繰り広げても、決してお子様向けの童話にならないとこがポイントですな。どれも1本スジの通った硬質で詩的な幻想性が特徴といえましょう。これはウルグアイの大草原で自然と親しんだ子供時代や、たびたび南米各地を旅行して実地で見聞を広めた体験が反映してるのかもしれませんな」
ホラ男 「翻訳は堀口大学が有名ですね。やっぱり他とは違うんですかね?」
ALI 「典雅にして華麗、優雅にして上品とゆーか。とっても奥ゆかしい感じがする名訳ですよん。元版の第一書房版(昭和14年)はそこそこの古書価がついてますが、青銅社版のこの新装版(昭和52年)はネットの古本屋なんかでもたまにみかけるし、古書価も安いので速攻で探して読んでみてはどうすか。あと、嶋岡訳の早川文庫版(「沖の少女」昭和50年:絶版) 三野訳の社会思想社版もあるので、読むだけならこっちのが手軽かな」
ホラ男 「堀口訳は文庫になってないんですか。せっかくの名訳なのに残念ですね。んで、そこに抱えてる白っぽい本は何です?」
ALI 「これは初期の長編「ひとさらい」(1926)の翻訳本ですな。人気の薔薇十字社本のひとつの上、澁澤訳なために古書価は1万円以上するでしょうな。ハンス・アルプの函絵が実にすばらしい。がはははは」
ホラ男 「やっぱり、オチはそこへ行きますか・・・(−−;」
ALI 「世の中ゼニじゃ〜、ふひふひふひ〜^^」
2000.4.22


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