【東京講演記:慣れは禁物反省編!】
   (副題:我家のルールブック)


9/21いつものように、おっとり刀でやってまいりましたのは、都内は新宿にある‘日本青年館’、第7回「JALSA講習会・交流会」がおこなわれる、今回の講演会場です。

同行下さるお一人は、いでたちがハリウッドプロモーター風(悪徳?)、大柄な先輩N氏です。
千葉県随一の超高級ホテルのホテルマンとしてお勤めだけに、見てくれとは反比例した、ソフトで細やかな介護をしてくれます。
患者の皆さん、ボランティアさんをお探しになる時には、ホテルマンさんがお勧めかも!?

さて、準備中の会場にまいりますと、早速全体ミーティングの開始です。
在職中はイベントも担当していましたので、血沸き肉踊る瞬間ですが!

『あれ〜〜?』

私を乗せた車椅子がその横を素通りして行きます!
おっとそうでした、本日の介護者には、猪突猛進型の我が女房殿がおりました(実は、私の外出に彼女が同行することは、めったにありません。)。
なんせ彼女にかかりますと、自分の思った方向が、私の思った方向となりますもんで。
声が出ない私と致しましては、首を振って合図をだすわけですが、せいぜい「そうか、揺れて気持ちいいのか!」ぐらいにしか思ってくれません。

なんせ、我家のルールブックの彼女の口癖は、「患者の希望だけを聞かない。」なんです。
それでもまあ、私のパソコンの置いてあるところまでは連れて来てくれましたので、[暴走車椅子族ドライバー一種免許保有]ぐらいの評価はあげてもいいと思っております、ハイ。

その場で、パソコンの設定をしていますと、友達のY君が来てくれました。彼は、私のホームページの制作メンバー、Group ALS Silk Road.の一人です。
あとは、彼や協会のボランティアの方達におまかせして、私は一安心。
実は今回パソコンの文字を、スクリーンに映し出すプロジェクターをご用意頂けたものですから、使用経験のない私としては、いささか不安だったのです。
これで心配ありません。

あとは、意思伝達装置‘伝の心(パソコン)’のスピーカーの前に、マイクを置いて準備完了!

『うー完璧!』と思いきや、何と!セッティングのドサクサで、編集中の原稿がブットンで(消えて)おりました。
バックアップをしてあり、修正もなんとか間に合い、思わず安堵で『ふー!』。

これで本当に 完璧 です。

講習会開始時には、ほぼ満席でした。
100名ぐらいは参加なさっているのでしょうか、半数が医療関係者、あとの半数が患者ご家族でしょうか・・・?とにもかくにも、日本ALS協会(JALSA)本部による進行は小気味よく、千葉県支部の事務局長さんからのご紹介の後、瞬く間に私も参加する、今井先生の講演開始です。

去る9/8にも、同様の内容の講演会を、愛媛県でこなしてまいりましたので、私も落ち着きを持って自分の出番を待つことが出来ました。
でも実は、この慣れがいけませんでした。

講演も半ばに入り、いよいよ私の出番です。と、言っても私のすることは、‘伝の心’のスイッチを入れるだけです。いよいよスタート、とその瞬間です!パチッ『・・・?ナナナニー、音がしない〜!』そうです、喋りだした‘伝の心’の音量が、やたらに小さいのです。
ふとスピーカーに目をやると、何とあるはずのマイクがありません。(註:PCからのライン出力では無く、外部スピーカによる音声をマイクで拾ってます)
つまり、音が拡大(拡声)されていないのです。
私は内心絶叫マシーンのクライマックス状態すなわちパニック「助けて〜!」。

いやーこれには本当に冷や汗がでましたが、いつも介護をして下さるボランティアの介護師Oさんが、マイクをとっさにかざしてくれましたので、30秒ほどのやり直しだけで済みました。
Oさんに本当に感謝です。
これが、本日のご愛嬌ならず、反省の第一弾です。


そしてその第二弾は間もなくやってまいりました。
実はこの日、国際会議参加の資金集めのための、カンパ呼掛けを含む追加文を用意してありました。
事前に司会者さんには伝えてありましたが、二日前今井先生より、それについては講演の最後にするようにとの指示があり、あえて自分の出番では読上げませんでした。

これが私のミステイクでした。
実は司会者さんにそのことを伝え忘れていたのです。
勿論私の出番で読上げませんでしたので、司会者さんから読上げのタイミングの確認が入りました。
が、その追加文読上げの紹介を、司会者さん自身がするのか、先生がするのか、今となってはもう打合わせのしようがありません。
そしていよいよ終幕です。
私はスイッチに手をかざし、成り行きを見守るしかありません。
すると、予想通りどちらが紹介するかのお見合いの開始です(お二人ともご免なさい。反省!)。
この瞬間、元ラテ担(ラジオ・テレビ担当)の私は、放送事故という言葉を思い出していました(ナンデ・・・放送じゃなく講演なのに?)。

つまり、放送業界ではオンエア中に、七〜十秒間以上の空白すなわち無音ができた場合、放送事故として取り扱われるのです。
ですから、そんなことにならいように放送マンは、何かしらの音を入れるわけです(実際には私は、メーカー側でしたから、その恐怖は知りません。)。

でも、その時私も放送マンよろしく、無音時間回避のために、追加文読上げの秒読み態勢に入っていました。
頭の中でカウント開始、1.2.3.4と、その時でした。
気転をきかした司会者さんが、案内を開始!でももう私も止まりません!6.7.スイッチ・オーン!その瞬間‘伝の心’の音声が、司会者さんの声をさえぎって!・・・本当にご免なさい、折角のご配慮を・・・。

しかし、二度あることは、三度あるの典型です。
パネルディスカッションの休憩の合間に、発言の依頼を受けました。
私にとっては『待ってました!』の瞬間です。

なんせそのために、ショート原稿をいくつか用意してたもんで。
でも思ったような発言のタイミングが取れません。
それはそうですよね、何が話し合われるか判らないまま、用意した原稿です。
でもとうとう最後の最後で、絶好の発言タイミングを迎えました。
心の中で『はい』と挙手をしていよいよ発言です。
その時でした、いきなり‘伝の心’が発した言葉は「おりかく」、『何なんだ〜?』と原稿を見ると‘折角’とあります。
つまり‘せっかく’の誤読です。
『あ〜あ、フィナーレもこれね!』と思いつつ、私の出番は終わったのでした。

そしてプログラムの最後は、交流会です。
今回私の晴れ舞台(冗談ですヨ!)と、いつも全ての面にわたりアドバイスを下さる先輩SA氏や、最も強力な支援者のお一人で、鍼灸師のN先生も最後まで参列下さり、とてもハッピーな一日でした。

と思いきや、ふと隣に目をやると、大酒かっ食らった我が女房殿が、マイクを握りしめ「私の人生、亭主よりも大事なり!」と、挨拶を兼ね、患者さんS氏夫人と意気投合!気炎をあげてる真っ最中です。
いや、実に彼女らしい。
それにしても、本当に楽しい会でした。北は北海道、南は九州と全国からお集まりの皆さんの、かっ達なご意見も拝聴出来ましたし、帰り際には、本部の方々に激励を頂き、気分も高揚したままに、会場を後と致しました。

皆さん本当に、ありがとうございました。

と、その時でした。耳元で誰かが囁きます「頭にのんじゃねーぞ!ウィ!」と。
そうです、言わずと知れた我が女房殿です。
確かに私は、有頂天になるタイプです。

反省しましょう。
そして、車の振動で前後に揺れる、私の頭を見て彼女は言うのでした「よくわかったみたいだなカッカッカ!」と、・・・ただ揺れてるだけなのに。

『さすがは、我家のルールブック!』。

反省と感謝を込めて、終。


当日の様子は にてご覧頂けます。