報道各位様、

私はALS(筋萎縮性側策硬化症)患者の舩後(ふなご)と申します。

本日は、突然このようなメールを差上げまして、大変申し訳ありません。
実は、厚かましくも、お願いしたいことがございまして、お便り致しました。
是非最後までお読み頂けますよう、お願い致します。

私は、人生もこれからという矢先の42歳で、このALS(筋萎縮性側策硬化症)という病気に侵されました。
あの世界的理論物理学者、ホーキング教授と同じ病気です。

この病気は、10万人に約3〜4人という発症率の原因不明の難病で、現代医学をもってしても、決して治ることはありません。
ふいに発病後、じょじょに筋肉が萎え、全身が麻痺して、平均3年ぐらい後に呼吸が出来なくなる病気です。
この時点で患者は、呼吸器を装着するか、人生をまっとうするかの、どちらかを選択しています。
まさに究極の選択をせまられる病気と言えます。

喋れない、口から食べる事が出来ない、身動ぎも出来ない、という数々の障害とともに、呼吸器を着けて生き続ける勇気と、これが我寿命と死を受け入れる勇気。
これは年齢や環境や性格、人生に対する価値感で違ってくると思います。
従ってどちらが正しいと言う事ではありませんが、三分の二の方が死を選択するなか、私は残り三分の一のほう、生き続けることを選びました。

呼吸器を着け、新たなる命を得た私は今、清々しく生きています。
そして、患者として生きる為の目標を作りました。
それは、11月オーストラリアはメルボルンで開催される、ALS国際会議への参加です。
資金繰りの事もあり、目下のところ実現するかどうかは判りません。
障害のためビジネスシートを使わざるえません。
また介護者2名の随行を必要とし、その費用合計は200万円近くとなります。でも私は是非参加したいのです。そしてその理由が二つあり、以下に申し上げたく思います。

聞くところによりますと、欧米の患者の殆どは、病気が進行しても呼吸器を装着しないそうです。
それに対して日本では、先にもふれましたように、約三分の一の方が呼吸器を装着します。
この差の理由を私は知りません。
宗教なのか、単に人生観の違いなのか、勉強不足の今の私では何も申せませんが、もしその差が生れる背景に、メンタルケアが関わっているなら、患者の視点から日本のケア状況を伝える事は、同じ目線の高さで話し合える者同士として、欧米の患者に少なからず好影響を与えるものと予測してよいのではないでしょうか。
メンタルケアについては後ほど触れますが、私は出来ることなら一人でも多くの患者さんに、生き甲斐を持ち、生を選択して欲しいのです。

そして、それを伝える絶好の場所が、世界各国から患者も含めた医療関係者の集う、ALS国際会議ではないかと考え、是非会議に出席したいと考えています。
障害のためその場での活動は限られたものでしょう。
しかしながら、私にはPCを用いて文字によるコミュニケーション、が可能です。
PCを媒体として彼らとコミュニケーションを図り、生への選択を問い訴え、彼らとの差異は何か、を追求して行きたいと考えてます。
もちろん、結果は本ウェブページを通じて発信することになるでしょう。

コミュニケーションの手段は、日立がALS患者のために開発した「伝の心」です。
私はこの文章を、足の指で入力しています。
先日は、ホーキング教授にメールを送ってみました。勿論、ご返事は頂けませんでしたが、なにやらワクワクした期待感に満ちた一時を過ごしました。
以下はその内容を、ホームページに掲載したものです。

【患者発の国際化交流の活動第一歩】

 患者発の国際化交流の活動第一歩として、かのホーキング博士にメールを送ってみました。
英語のご堪能な方からみれば、「よく恥ずかしげもなく」というレベルの英作文ですが、「これでやれるところまでやろう」と考えております。
尚、今回、現時点でご本人からの返信は、頂けておりません。気長に取り組みたく思います。[記:舩後]
《送信文》
Dear Dr Hawking,

How do you do,sir?
I'm a patient of ALS of Japanese who name is Yasuhiko FUNAGO[Age:44.Sex:Male.].
I have been getting this awful illnes since July/1999 ,around for 3 years.
Now,I'm not able to use my hands and legs,therefore,my life is in a bed all day long.
And,I alreday lost the my voice by treatment of medical so that my way of communication is using `PC'which is made by HITACHI. I manage it how I use fingers of the right foot somehow.

The ohter day,I've read your web pages which is translated in Japanese.
At that time,I've gotten great deep impression by your story about which you conqered the obstacle of ALS. But,I'm sorry that I can't explain my impression enough in my low level English ability. And so,I will be very happy if you would notice and read my e-mail! Anyway,I would like to send e-mail again sir.

Could you fogive me that I suddenry sent such a e-mail and using bad English?

Thank you for reading my e-mail kindly in advance. Good by.

Yours truely.[英作文:舩後]


拝啓、ホーキング博士。

はじめまして。
私は、日本のALS患者で名前を舩後靖彦と申します[44歳、男]。私は、この恐ろしい
病気に1999年の7月以来かかっていて、約3年になります。現在、両手両足が使えないため
、終日ベッドで生活しています。そして医療的処置によりすでに声も失っており、意思伝
達手段として「日立」製のパソコンを使用しております。右足の指でなんとか操作してい
ます。

先日、日本語に訳されたあなたのホームページを拝見しました。その時あなたが、このA
LSという障害を乗り越えられてるお話に、大変深い感銘を憶えました。しかしながら、
私の低い英語能力では、その感銘を十分お伝え出来ないのが残念です。たとえそうであっ
ても、もしあなたが私のメールにお気付きになられ、ご一読頂けたなら大変な幸せです。
何にしろ、またメールを差し上げたく存じます。

どうぞ、このようなメールを突然お送りしたことと、良好とはいえない英語を使用しまし
たことをお許し下さい。

私のメールをご親切にお読み頂けることに、あらかじめお礼申し上げます。さようなら。


敬具。[訳:舩後]

《受信文》
**Automatic Reply**

Your email regarding "Dear Dr Hawking," has been received.

Professor Hawking very much regrets that due to the huge amount of mail he
receives, it may take some time for him to send a reply. Please be
patient, as all mail is read.


自動返答

あなたのメール「拝啓、ホーキング博士」を受け取りました。それに関してですが、ホー
キング教授は、ご返事致すべきメールを大量に受け取られております。その為、遺憾では
ございますが、全てのメールは一読されるものとして、いつか返事がある可能性もありま
すゆえ、忍耐強くお待ち下さいますようお願いします。[訳:舩後]

以上ご紹介しました。[全記:舩後]

−−−
すっかり本題からずれてしまいました。お許し下さい。

そして、出席したい理由はもう一つあります。それは出席することそのものです。
つまり、国際会議参加は、私にとっての生きる為の目標であると同時に、前述した一つ目の参加目的より、より身近にある人生の目的で意義を感じるものなのです。

振り返ってみると、最初の病院でALSの告知を受けた直後の私は、「絶望」に支配され死を望む気持ちしかありませんでした。
ベッドの上で目をつむり考えることは『寝たきりになって生きる意味がない』、『楽に死にたい』そんなことばかりでした。
やがてその当時の私は『この先誰と会っても意味がない』という感情に支配され、一時社会とのつながりを殆ど断ちました。

そして、引きこもりの人生を送りながらも、診療先を今の国立療養所千葉東病院と変え、長い時間はかかりましたが、主治医今井ドクターのメンタルケアを含む指導の元、この私が、徐々に変化をきたしました。
そしてつい最近になり、多くの新しい患者さんに接し判った事があります。

それは、例外なく告知を受けた直後の患者さんは、前述した、以前の私のような絶望の感情に囚われているということです。あるいは、現実逃避の感情に支配されているのです。

病気と正面から対峙すること。其れは並大抵のことではありません。たった一度の告知で、どこをどれほど理解できるのでしょう。
絶望の淵にあること、それは当り前なのです。
でも、そのままでは先にあるのは、死のみです。
だから生き抜くためには、適切なメンタルケアをとうして生き甲斐を持つ事が必要なのです。

ここで、より具体的に私の生き甲斐をお知らせるのに、下記に私が知人宛にこの6月に送ったメールをご紹介します。


「S先輩、ご尽力ありがとうございます。現在私は、ここ千葉東病院でライフワークに
している事があります。それは主治医の今井先生の診療を、ささやかながらお手伝いする
事です。決して大袈裟な事をする訳ではありません。外来にて主治医の元を訪れた、新し
いALS患者さんにオリエンテーションをする事です。ご存知のようにALSとは過酷な
病気です。告知を受けた患者さんの多くは、大変な衝撃を受け絶望します。そこで私が今
迄何の指導を受け、今どの様に目標を持ち生きているかを告げ、患者の視点からの今後の
ヒントを提供します。
これは新しい患者さんの為のみならず、主治医の今井先生が私自身に何かを担わせ
生き甲斐とせんが為の指導の一環であり、まさしく目下の私の生き甲斐です。

又、9月8日には愛媛県でおこなわれる先生の講演会において、私にもいくばくかのお時間を
頂けることになりました。
私の至近距離にある生き甲斐になっております。さらに、この先メルボルンで開催される
国際会議の感触を掴み、来年のイタリアの会議では何かしらの発表を試みたいと先に通ず
る生き甲斐として考えております。資金の問題もあり実現するかどうかは判りませんが、
先に目標があるという事は何かすがすがしい気分とさせます。とこれで、ここ東病院では
医療と患者のハーモニーをテーマに、患者は生かされるのではなく生き甲斐を持ち生き抜
くという為のケアが行われております。そういう一端においても、ここ東病院では従来の
ALS診療から抜きん出たプラスアルファーが存在する事を、今私が持つ生き甲斐と合わ
せてご報告致します。宜しくお願いします。」
このメールは、6月に書いたことは先にも申し上げましたが、あらためて私も講演者の端
くれとして参加致します、主治医の講演会をご紹介します。
@9/6、千葉東病院(千葉市)。
A9/8、愛媛県松山市。
B9/21、日本青年館 国際ホール(東京都新宿区霞岳町15番地)
C10/26、群馬県前橋市。
です。

さらに、9月に入り新たな目標を設けました。それは先のメールでも触れましたように、来年イタリアにて開催される国際会議での発表テーマです。
現時点では仮題ですが、「患者による、患者へのメンタルケアの効果」と致しました。
勿論これは、主治医の教唆によるもので、その診療ラインに沿って研究するものですが、ますます楽しみが増えました。

ところで、ここでお恥ずかしいのですが、基本的には私がいかに平凡、いやむしろ弱い人間であるかをご紹介すると同時に、今なぜ生き甲斐を模索し行動をおこそうとすることが出来るようになったかを、一番身近な証言者としての、妻のメールより抜粋してご紹介します。


妻のメール、私宛。
[しかしパパも成長したねえ。告知を受けたばかりの頃なんて、「誰にも知られたくない
」「弱みを見せたくない」「そっとしておいてくれ」って感じで、ピリピリしてたよね。
だけど今の病院に受診に行く度に先生に尻を叩かれて、あまッチョロイ考えを叩きのめさ
れて、ちょっとづつ前を向いて進めるようになった。ほんとに手のかかるやつだ!だけど
、世の中そんなにつよい人間ばかりじゃないよね。ALSなんていう、訳のわからない病
気をすぐに受け入れられる、つよいこころの人なんているわけないもの。だからパパが、
いくらパパの生き甲斐としての、新患さんへのメッセージを出しても、もしかしたら告知
を受けてまもない患者さんや家族には、かえって惨いものかもしれないね。だって、現実
なんて見たくないだろうし、他人の励ましなんて聞く余裕なんてないと思う。だけど現実
にパパは、強くなってきてるんだし、成長した。いろんな時期をへて。]

今でも私は、平凡で弱い人間である事には変わりはありませんが、妻がメールで述べた様に、今の先生のメンタルケアにより、ある程度の行動は不充分ながらもとれるようになりました。
だからこそ、国際会議に出席するという行動に出ようとする事は、資金さえ調達可能であれば、患者であろうと実現出来る事として、認識してもらえます。
そしてそれが、かつての私がそうであった様に、告知を受けたばかりで、今絶望の淵にある患者さんが、この先何か行動をおこして頂けるヒントになるのではないかと考えるからです。
そしてそのことに、意義を感じるからです。

これが国際会議に出席することを目標にし、それを人生の一番身近にある目的としている理由です。
其の事を、多くの患者さんに知ってもらうために、友人達の協力を得、ホームページを開きました。
そして参加費用を得るために、ネットオークションを開催しました。勿論私に、確たる収入源がないためです。

しかし、やはり現実は甘くはありませんでした。国際会議を目の前にして、参加費用がたりません。
そこで恥も外聞もかなぐり捨て、一涙の望みを託し、貴報道でおとりあげ頂き、ご支援賜り下されませんことをお願いしたく、お便り申し上げました。
勿論貴報道のご性格に、全くそぐわない、厚かましい内容のお願いとは存知ますが、二つ目の参加希望理由の背景にあります、全国約5,000人のALS患者に勇気を与えることとして、おとりあげ頂けますよう、ご検討下さいますことを、心よりお願い申し上げます。ありがとうございました。

ALS患者:舩後 靖彦


【資料】

■ホームページ http://www1.odn.ne.jp/~aae03880/index.html
■オークション http://auctions.yahoo.co.jp/jp/booth/als_silk_road
■振込口座
郵便振替、00180−5−181932「日本ALS協会千葉県支部」


(全記:舩後)



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