ローマ帝国史略


「ビザンツ文明の継承と変容」雑感

 ビザンツ史の第一人者である井上浩一の新作「ビザンツ文明の継承と変容」を読破。
 さすがビザンツと言えば大阪市大の井上先生と言われるだけあって、その辺の適当な概説書とはレベルが違う情報がてんこ盛りで、楽しく読めました。井上先生、マジ凄い人です。
 ビザンツ帝国において、宦官=天使という認識を当時のギリシア人が持っていたというのは、単に私の不勉強かもしれませんが、この本で初めて知ってびっくりしました。そうなのか、宦官というのは、中世のギリシアでは、萌えキャラみたいな存在だったのか。(←違う)

 ただ、何でしょう。この井上先生は団塊の世代に属する方のようですが、もろ左系の人なんですね。

>戦争を生み出したのが、人間であるなら、戦争をなくすのもやはり人間の力によるほかはない。その方向へ向けて人間の理性や能力を発揮すること、
>それがビザンツ文明が私たちに語る現代のヒューマニズムであろう。

 という、締めの言葉があまりにも唐突すぎて、これだけでこの「ビザンツ文明の継承と変容」は、私的にトンデモ本に認定されてしまいました。幾ら なんでも、それは無理やり過ぎる結論でしょう。ビザンツ史を研究すること=戦争がなくなるって、それはギャグで言ってるんですか?
 ちなみに井上先生の主張を分かりやすく要約すると、

 ビザンツ帝国は避けれる戦争はさけて外交や貢納によって防衛を行っていた
       ↓
 だからギリシア人は、戦争が嫌い=平和主義者である
       ↓
 今の日本も戦争に対する忌避感はビザンツ帝国に似てる・・・・・かな?
       ↓
 ビザンツ史で当時のギリシア人の考え方を学んだら平和社会が到来だ!!
       ↓
 目指せハッピーエンド

 という超絶に強引な論を展開されていました。
 今時の純朴な高校生あたりが、この本を読んで変に感化されないかと心配で心配で、夜も眠れない・・・・ということは、全然ないですね、はい(笑)。 。

 そういや、同じくローマ史研究の有名人だった弓削達先生も、井上先生すら軽く凌駕するもろに左な人でしたねー。
 この本を読んで、私と同世代か、あるいは下の世代の研究者によって書かれたローマ史(あるいはビザンツ史)の本というのは、過去の歴史研究者と は違った視点から叙述されることになるのだなという思いを強く持ちました。井上先生にしろ弓削先生にしろ、もはや昭和という時代の過去の研究者になるんで しょうね。

 

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