ローマ帝国史略


映画的表現と歴史的事実〜グラディエーターを観て〜

 ローマ史を勉強してた(へぼですが)人間として、ローマ帝国を題材とした映画は観ないといけないってことで、グラディエーターを観てきました。

 グラディエーターマルクス・アウレリウス帝に次期皇帝の指名を受けたマキシマス(架空の人物)と、マルクス・アウレリウス帝の息子で野心にあふれたコンモドゥスの二人の人間を中心とした、復讐劇です。

 映画は基本的にフィクションですから、歴史と違う点があるのは当然と思います。グラディエーターの中では、マルクス・アウレリウス帝は息子コンモドゥス(次の皇帝)に殺害されてたり、コンモドゥス帝が映画のクライマックスでコロッセオ内で剣闘試合に負けて死ぬ、っていうのは映画的手法として仕方がないかな、とは思います。(一応史実では、マルクス・アウレリウス帝は病死、コンモドゥス帝はクーデターで暗殺されている。また映画ではコンモドゥス帝は即位後1年ほどで死んでいるが実際の治世は10年以上ある。ちなみに、マルクス・アウレリウスは生前からコンモドゥスを帝位(アウグストゥス)に就けていたんで、コンモドゥスはマルクス・アウレリウスは殺す必要は全然なかったりします。)

 ただ、どうしても納得出来ないのは、コンモドゥスの死により、ローマ帝国に平和が訪れてハッピーエンドっていうエンディングです。
 これを見れば分かりますが、コンモドゥス帝の死後わずか1年の間に3人の皇帝(ベルディナクスディディイウス・ユリアヌスセプティミウス・セヴェルス)が即位しています。さらに実際にはセプティミウス・セヴェルスと内乱を繰り広げたニゲルアルビヌスの2人の皇帝が存在しています。
 コンモドゥス帝の死がもたらしたのは、決してローマの安定とか平和などではなく、「パックスロマーナ(ローマの平和)の終焉」「軍人皇帝時代の幕開け」というのが、一般的な解釈なのです。ただ、あまりにもローマ帝国の歴史がマイナーなんで、好き勝手に映画内で改竄されているのです。

 これが、どれだけ出鱈目なことか分かりやすく説明します。例えばフランス革命を舞台にした映画で、革命を起こして、そのままハッピーエンドっていう映画なんて絶対ないでしょう。多くの人が革命の犠牲になってる、っていうようなことを匂わしたりするはずです。ラ・セーヌの星とか、ベルサイユのバラなんかがいい例だと思います。

 監督のリドリー・スコット(この人が脚本の内容を決定したかは知りませんが)は映画の中だったら、ローマの歴史なんか、好き勝手に改竄してもいいって考えてるんでしょうか?確かにマイナー過ぎて、突っ込む人なんか殆どいないと思いますが、ちょっとやりすぎです。普通は、史実を認めた上で、フィクションを構築するもんです。フィクションに合わない部分の史実はなかったことにするという姿勢は、ちょっと・・・。

 他にも、共和制への移行をマルクス・アウレリウスマクシムスも望んでいるってのも、いくら何でもメチャクチャです。織田信長が共産革命を目指してたっていうのと、同じレベルの無茶があります。共和制より、帝政の方が効率的だから帝政に移行したのであり、それがその段階で200年も続いているという事実を無視するのにも程があります。

 まあ、イチャモンばっかりつけててもしょうがないんで、とりあえずこれぐらいにしておきます。

 

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