弁明書(2004年3月26日)
弁 明 書
水俣対第2222号
平成16年3月26日
公害健康被害補償不服審査会
会長 大西 孝夫 様
処分庁 熊本県知事 潮谷 義子

審査請求人 面木 学
 
上記の者から提起された水俣病認定申請棄却処分に対する審査請求について、次のとおり弁明する。
1. 弁明の趣旨
「本件審査請求を棄却する。」との裁決を求める。
   
2. 弁明の理由
(1) 水俣病認定申請棄却処分(以下「原処分」という。)の経緯
審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成13年11月22日付けで公害健康被害の補償に関する法第4条第2項に基づく認定申請を行い、当職は、同年11月26日付けで受理した。そこで、以下の通り、疫学調査、検診及び検査を実施した。
疫学調査   平成14.7.23    
神経内科・神経精神科   平成14.9.4    
眼科   平成14.8.7   平成14.8.8
耳鼻咽喉科   平成14.8.8    
生化学・血清学的検査   平成14.9.4    
X線検査(頸椎、腰椎)   平成14. 9.4    
        
以上の疫学調査、検診及び検査により得られた資料を基に平成15年1月16日付けで熊本県公害健康被害認定審査会(以下『審査会』という。)に諮問した。審査会は、同年1月24日に開催された審査会で審査した結果、同年2月25日付けで棄却相当の答申を行い、当職はその答申を受けて、同年3月3日付けで原処分を行ったものである。

(2) 医学的判断
ア 請求人の暴露歴について
疫学調査によれば、居住歴、魚介類の摂食状況等から有機水銀に対する暴露歴を有するものと考えられる。
イ 請求人の症候について
請求人によると、発症時期は不詳であるが、上肢(肩から先)、下肢(腰から下)が痺れるようになった(左>右)、右上肢は時々症状が出る程度であるが、左上肢はいつも症状があり、全体がカチカチになったり親指と人差し指の間を摘んでも感じないくらいに痺れている、また下肢は痺れのため左足を擦って歩く、つまずいて転倒し易い、いつの頃からか首が痛む、寝起きが特にひどい、いつの頃からか頭痛、耳鳴り、聴力(左>右)がある、味覚が鈍くなった、物忘れがひどくなった、めまいがするようになった、急に立ち上がると眼前暗黒感がある、疲れやすくなった、口の周りがモゾモゾする、ひどいときは赤くはれたり、感覚が鈍くなるためによだれが出ていることがあった、平成14年、各症状とも悪化している、特にくるぶしを中心に両足が痺れたり痛くなったりする、とのことである。
一方、認定申請時の診断書には、「水俣病のうたがい」とあり、「鹿児島県出水市にて出生。水俣市袋にてその後34年間居住し、この間に有機水銀に汚染された魚介類を摂取した。昭和45年頃から手足の痺れが始まり、現在も四肢末端優位の知覚障害と運動失調、感音性難聴、視野狭窄を認める。水俣病に罹患していると考えられ今後も精査と治療を要する。」との記載がある。
そこで、請求人について検診および検査を実施したところ、次の所見が得られた。
精神医学的には、特記すべき所見はなかった。
神経内科学的には、顔面を除く左半身の触・痛覚鈍麻、右足背部の痛覚鈍麻がみられた。四肢の協調運動の検緩徐であるが確実に実施可能、ジアドコキネーシスでは障害はみられず、指鼻試験では緩徐であるが確実に実施可能、膝踵試験では緩徐であるが確実に実施可能、脛叩き試験は右は障害はみられず左は緩徐であるが確実に実施可能であった。起立・歩行の検査では、両足起立に障害はみられず、片足起立は右足では2〜3秒可能であったが左足では不可であった。普通歩行では軽度の左足引きずりがみられた。つぎ足歩行は不可であった。
神経眼科的には、視野については、平成14年8月7日のゴールドマン視野計による検査では、右眼は軽度の狭窄及びごく軽度の沈下がみられ、左眼はごく軽度の狭窄及び軽度の沈下がみられた。平成14年9月18日のゴールドマン視野計による検査では、両眼ともごく軽度の狭窄及びごく軽度の沈下がみられたが、平成14年9月19日のゴールドマン視野計による検査では、両眼とも狭窄はみられず、ごく軽度の沈下がみられたのみであった。以上、総合的にみて水俣病にみられる求心性視野狭窄はないと判断された。眼球運動については、昭和55年1月23日及び平成14年8月8日の検査で、滑動性追従運動、衝動性運動、前庭動眼反射いずれも正常範囲であった。
神経耳鼻科学的には、聴覚疲労現象は陰性で、語音聴力は正常範囲であった。視運動性眼振検査では水平方向、垂直方向とも正常範囲のパターンが得られた。

以上、総合するに、四肢末梢優位の感覚障害、小脳性運動失調、水俣病にみられる求心性視野狭窄、中枢性眼球運動障害、中枢性聴力障害、平衡機能障害はいずれも認められず、審査会は、暴露歴、検診所見等から総合的に検討し、請求人の症状が水俣病によるものとは認められないと判断したものである。

(3) 結論
以上のとおり、原処分には違法性又は不当なところはなく、本件審査請求には理由が認められないので、棄却されるべきである。
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