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感覚障害
平成14年9月の神経内科的検査では顔面を除く左半身の触覚・痛覚低下、右足背部触覚低下、四肢振動覚下肢優位に低下、深部感覚は低下とされており、反射は上肢に低下傾向、下肢は正常となっている(甲1)。
前回の平成7年7月の検診では顔面を除く全身の触覚・痛覚低下、四肢振動覚低下、深部感覚は左低下、反射は上肢に低下傾向、下肢は亢進となっている(甲2)。
このように審査会の検診では感覚障害が顔面を除く全身に存在することがうかがわれる。平成14年の場合、左右差を比べた場合、左側がより強いため、相対的に右側が判りにくかったと思われる。
このことは、阪南中央病院が平成9年に行なった定量知覚検査において右手掌や右親指に明らかな異常が認められることからも裏付けられる(甲3)。
また阪南中央病院の昭和62年の検診でも、四肢末端+右半身型の痛覚、触覚異常と振動覚の低下が認められている(甲4)。
阪南中央病院のCT検査では大脳に異常はなく、平成7年の審査会のMRI検査でも正常とされており、上記のような請求人の感覚障害を説明できるのはメチル水銀中毒しか考えられない。
ことに通説である大脳皮質性の感覚障害が水俣病の特徴であると考えると全身に症状がみられたり、所見に変動がみられたりするのは当然のことである。 |
2 |
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運動失調
平成14年9月の検査では上肢につき姿勢振戦を両側に認め、指鼻試験は両側緩徐であった。下肢は膝腫試験の速さが軽度低下、片足起立は左足不可能、直線上起立閉眼不可、開眼では不安定ながら可能、爪先歩行、踵歩行、直線歩行、つぎ足歩行は不可能(甲1)。
平成7年の検診では直線上起立開眼、閉眼ともごく軽く動揺する。左爪先歩行、左踵歩行が腰痛のため不可となっている(甲2)。
昭和62年の阪南中央病院の検査では指鼻試験閉眼で軽度異常、ディアドコキネシスも軽度異常、片足起立障害がみられる(甲4)。
以上から請求人には軽度の運動失調が認められる。 |
3 |
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視野狭窄
平成14年8月のゴールドマン視野計による検査結果は
右 外側68度、内側47度
左 外側68度、内側58度である(甲5)。
平成7年10月の検査結果は
右 外側78度、内側57度
左 外側73度 内側55度である(甲6)。
平成9年9月の水平方向のみの検査では
右 外側80度、内側64度
左 外側79度、内側57度である(甲7)。
阪南中央病院の昭和62年の検査では
右 外側57度、内側45度
左 外側57度、内側47度である(甲4)。
水俣病の視野に関する研究−10年間の追跡調査−(岡嶋ほか昭47.6.3)によると視野狭窄の判定基準としてA線(耳側89°、下耳側82°、下方62°、下鼻側54°、鼻側53°、上鼻側53°、上方48°、上耳側64°の各点を結ぶ線)、B線(耳側80°、下耳側74°、下方56°、下鼻側49°、鼻側48°、上鼻側48°、上方43°、上耳側58°の各点を結ぶ線)、C線(耳側53°、下耳側49°、下方37°、下鼻側33°、鼻側32°、上鼻側32°、上方28°、上耳側39°の各点を結ぶ線)を前提に視野周縁を結ぶ線がA線外にある場合を狭窄(−)、A、B両線に囲まれる領域にある場合を狭窄(±)、B、C両線に囲まれる領域にある場合を狭窄(+)としている。
この判定基準によると、 |
平成14年8月は |
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右 + |
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左 ± |
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平成7年10月は |
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右 + |
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左 ± |
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昭和62年は |
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右 + |
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左 + |
となる。 |
これを総合的に見ると狭窄ありないしは軽度の狭窄ありと判断すべきである。
また、対坐法で正常値が得られたとしても、対坐法は原理的に正確な視野測定とは言えないから、信頼性のある検査法とはいえないので参考にするべきではない。 |
4 |
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以上の水俣病に特徴的な3症状の存在にてらしても、請求人が水俣病であることは明らかである。
すみやかに請求人を水俣病と認定するよう求める。 |