「上告受理申し立て理由書(骨子)」(2001年7月6日)
上告受理申立事件番号 大阪高等裁判所 平成13年(ネ受)第210号
申立人 国、熊本県
相手方 Aほか67名
上告受理申立て理由書
平成13年7月6日
最高裁判所 御中

上告受理申立理由の骨子(法令解釈の誤り)

(1)   昭和34年12月末時点において、経済企画庁長官及び内閣は、水質二法に基づき、チッソ水俣工場のアセトアルデヒド排水について規制権限を行使すべき義務があったとした原判決には、
  水質二法においては、汚濁原因物質を排出する工場等に対する規制権限が、経済企画庁長官、内閣、主務大臣に分属しており、チッソ水俣工場に対する直接的な排水規制は、工場排水規制法12条に基づく主務大臣尾改善命令等として行われるにもかかわらず、経済企画庁長官及び内閣の職務上の法的義務違反について何ら認定判断していない点において、国賠法一条1項の違法性の解釈適用を誤った違法がある。
  昭和34年11月末当時、水俣湾及びその附近水域を汚濁している原因物質は特定されておらず、それがチッソ水俣工場から排出されていることも科学的に解明されておらず、汚濁原因物質の許容限度を決定することもできず、汚濁原因物質の分析定量方法も確立されていなかったという状況にあったにもかかわらず、水質保全法5条1項、2項及び工場排水規制法2条2項に基づく規制権限を行使し得る要件が充足していたとし、かつ、同年12月末には規制権限を行使することが可能であったとした点において、水質保全法1条、3条2項、5条2項・3項の解釈適用を誤った違法がある。
  また、指定水域の指定、水質基準の設定、特定施設の指定は、性質上、高度の専門技術的判断を必要とし、かつ、高度の政策的裁量にゆだねられているものであって、経済企画庁長官及び内閣がこれらの権限行使に極めて広範な裁量権を有していることからすれば、経済企画庁長官及び内閣が、このような権限を行使すべき職務上の法的義務を負うことは原則としてあり得ないところ、これらの行為の法的性質、当時の社会的状況等、諸般の事情を適正に考慮することなく、経済企画庁長官および内閣がこれらの権限を行使しなかったことが裁量権の逸脱であるとした点において、国賠法1条1項の違法性の解釈適用を誤った違法がある。
  そして、これらの点は、いずれも法令の解釈に関する重要な事項を含むものである。   
 
(2)   昭和34年12月末時点において、隈本県知事は、調整規則32条2項に基づき、チッソ水俣工場のアセトアルデヒド排水に椎敵性権限を行使すべき義務があったとした原判決には、
  調整規則32条は、専ら水質資源の保護培養を図ることを目的とし、個々の国民の生命、健康といった利益の保護は目的としていないにもかかわらず、同規則32条の権限行使が、個々の本件患者らに対する関係で具体的な職務上の法的義務になるとした点において、同条ないし国賠法1条1項の解釈を誤った違法がある。
  また、昭和34年11月末当時、「水産動植物の繁殖保護に有害なもの」が何であるかは特定されておらず、それがチッソ水俣工場から排出されていることも科学的に解明されておらず、有害物質の許容限界を決定することもできず、有機水銀化合物の分析定量方法も確立されていなかった上、被規制者において除害設備を設置することも不可能であったにもかかわらず、調整規則32条に基づく規制権限を行使し得る要件が充足していたとし、かつ、同年12月末には規制権限を行使することが可能であったとした点において、調整規則32条2項の解釈適用を誤った違法がある。
  さらに、調整規則32条2項に基づく除害設備の設置・変更命令は、熊本県知事の高次の公益的・専門的判断の下に行なわれる裁量的行為であるところ、チッソ水俣工場がサイクレーターの設置など、自主的な除害設備の設置を検討していたこと等の事情を適正に考慮することなく、熊本県知事が規制権限を行使しなかったことが裁量権の逸脱であるとした点において、国賠法1条1項の違法性の解釈適用を誤った違法がある。
  そして、これらの点は、いずれも法令の解釈に関する重要な事項を含むものである。
 
(3)   申立人国及び県が規制権限を行使すべきであったとされた昭和34年12月末から20年        
以上経過した後に、本件訴えを提起した相手方らの一部について、除斥期間経過による請求権の消滅を認めなかった原判決には、
  除斥期間の起算点を、加害行為時ではなく損害の一部発生時とした点において、国賠法4条により準用される民法724条後段の解釈適用を誤った違法がある。
  また、除斥期間にかかる請求権を保存するためには、裁判上の行使である必要はなく、裁判外の行使で足りるとした点において、民法724条後段の解釈適用を誤った違法がある。
  そして、これらの点は、いずれも法令の解釈に関する重要な事項を含むものである。
 
(4)   本件患者らがメチル水銀中毒症に罹患しているか否かについて、医学的専門家による判断結果である認定審査会の判断を排斥し、独自の判断順境を定立して本件患者らの内51名についてメチル水銀中毒症を認定原判決には、
  メチル水銀中毒症の症候が、いずれも特異性がなく、それのみではメチル水銀中毒症であると判断できないことを看過して、症候の一部について、それがあればメチル水銀中毒症であると判断した点において、民訴法247条に反した違法(経験則違反)がある。
  また、高度の専門的知識に基づいて他の類似疾患との鑑別が必要であることを看過して、高度の信頼性を有する医学専門的な判断結果である認定審査会の判断を排斥し、自ら判断を行なった点において、民訴法247条に反した違法(経験則違反)がある。
  そして、これらの点は、いずれも法令の解釈に関する重要な事項を含むものである。
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