永木論文「水俣病患者の末梢神経」
―これまでの研究成果について― に寄せて
阪南中央病院  村田三郎



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 永木論文、「水俣病患者の末梢神経」―これまでの研究成果について―を大変興味深く、そして非常な共感をもって、読ませて頂いた。まさに、溜飲を下げたという感がある。
 「水俣病患者に認められる感覚障害の責任病変部位が中枢神経系にあるのか、末梢神経にあるのか」は、関西訴訟において大きな争点になってきた。原告側が、感覚領野である後中心回の障害に起因するとする「中枢説」を主張して来たのに対して、被告側の井形昭弘証人や永松証人は、時には末梢性、また時には中枢性と主張して、末梢性と中枢性の両方が関与するという、証言をした。しかし、被告側の主張は、基本的には、従来言われてきたように「末梢説」に固執し、四肢末端に感覚障害がある多くの患者を切り捨てて来た。
 この、被告側の「あやふやで、無責任で、かつ実際の患者の訴えや現実の臨床的事実から目を逸らした」主張は、永木氏やLe Quesneらの過去の多くの末梢神経における電気生理学的研究の成果や死亡した有機水銀中毒患者の剖検・病理学的研究を元にした、原告側の反論・批判によって論破された。当然のことながら高裁「控訴審」判決においてさえも、見事に退けられた。 しかるに、井形昭弘氏は、なおも「軽症の水俣病患者では、末梢神経が正常でもおかしくはない」というようなコメントを公然と行っている。
 永木氏は、このような井形氏の「反省の色のない、無責任な」態度に、研究者の良心から、我慢しきれなくなったのではないだろうか。永木論文はいう。「井形氏の、軽症の水俣病患者では、末梢神経が正常でもおかしくはないというコメントを、著者は重症者では末梢神経に異常がある筈だ、という意味に理解した」と。この文章が、永木氏の本当の気持ちだと思われる。医学・科学は、「...であるはずだ」ではなく、患者の訴えそのものであり、科学的な研究、知見でなければならない。
 永木氏は、徳臣氏の言う「重症水俣病患者」の神経症状、電気生理学的検査結果では、末梢神経に異常は出ていないことを確認している。さらに、慢性発症の水俣病患者と年齢をマッチさせた対照群の間での「比較研究」でも、活動電位振幅に有意な差がでていない事を明らかにした。そして、足の末梢に感覚鈍麻と脱失がある糖尿病患者と重症の徳臣症例との比較では、糖尿病例では末梢神経の活動電位が極端に低くなっていた(1.0―2.0μV)が、徳臣症例では16.0μVであった。
 永木氏は、これらの研究結果や多くの知見を元に、この度の論文で、「水俣病患者の感覚障害は、発症形式または重傷度にかかわらず、イラクにおけるメチル水銀中毒症と同じく、その責任病変部位は、末梢神経ではなく、中枢神経系に存在する」と結論づけた。
 この永木氏の「勇気」(敢えて勇気と言わせて頂く)そして、学術論文の上で、このように井形氏を批判できる、その科学的知見に対する確固たる信念と科学者としての良心に対して、敬意を表したい。
 さらに、この論文発表が、二点識別感覚障害などの中枢性複合感覚障害の意義をめぐる論争の決着と診断・認定条件の見直しに繋がることを期待している。
   
水俣病上告取下げ全国ネットワーク

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