剣と魔法のKanon

第5話 仕方ないだろ? 俺だって…





目が覚めると辺りにうっすらと明るく、微かだが霧が出ていた。

外気にさらしてある顔に冷たい空気が触れる…。

…朝か?

まだ、寝ぼけた意識の中で考える。

その考えを肯定するように鳥のさえずりが聞こえる。

朝だ…。

…。

……。

………。

…眠い。

はあ、昨日の疲れがまだ残っている。

もう少し寝よう…。

そう思い俺は居住まいを正そうとした…。

しかし…。

「痛い…」

体を動かすと体中から痛みを感じる。

…関節がきしむ…。

硬い地面で寝てたせいだ…。

ごろごろ左右に揺れてみる。

…やっぱり、痛い。

……毛布に包まっただけでは痛いぞ…。

ついでにいうと足が予想通り……。

いや、予想以上に痛い。

こんな状況ではゆっくりと眠れるはずもなく、そのままの姿勢でじっとしている。

行き倒れの死体みたいだ……。

う〜ん。我ながら情けない。

意識がはっきりして痛みはさらに激しくなる。

「いてててててて…」

腕や足を少しずつ上げて体を慣らそうとする…。

その度に太股や肩が悲鳴をあげる。

あてててて…。

…な、情けない…。

しばらく続けることでその痛みも次第に収まっていき…。

なんとか動ける程度まで回復した。

このままじっとしているのも暇だからひいひい言いながら立ち上がる。

起き上がり辺りをぐるっと見回してからふと気づく。

香里が…いない?

寝てるのかと思ったが俺の隣りはすでに畳まれた毛布があった。

…どこいったのだんだ?

ふあ〜…。

眠い…。

顔でも洗いたいな…。

…うん。とりあえず顔洗ってこよう…。

泉は…こっちだったよな…。

俺は枕元においておいた剣を掴む。

まだ少し寝ぼけた目をこすりながら歩き始めた。

しばらく、歩くと霧が濃くなってくる。

視界が少し悪いな…。

迷わないと良いけど。

そう思いつつ、荒れた道を歩き続ける。

やがて、視界の先が明るくなっていき…。

少しずつ泉が見えてきた…。

白い霧の中にうっすらと浮かぶ泉。

水は澄んだ色をしていて、清潔そうだ。

さらに近づくに連れて、俺は泉に先客がいることに気がついた。

泉の中に小さな人影があるのだ。

香里か…?

それとも、魔物?

ここからだと霧のせいで判断しにくいな…。

俺は腰に剣がぶら下っているのを確認する。

……よし。

俺はすぐ抜き放てるように柄に手をかけ、忍び足でそっと近づいてみる。

近づくに連れ、その人影が誰だか分かってきた。

……香里だ。

同時に水滴が落ちてくる微かな音も聞こえてくる。

昨日と同じように水浴びをしているのだと思った。

それに気づいたはずなのに俺はさらに足を進ませる。

同時に霧も晴れてくる。

そして、俺は…。

その光景に、目を奪われていた。







それは神秘的な光景だった。

香里が何も纏わない姿で水と光を浴びている。

透き通るような綺麗な肌。

しっとりと濡れたウェーブのかかった髪。

その髪からいくつのも水滴が流れ落ちる。

そのいくつかが透き通った羽に当たり、弾かれる。

弾かれた滴は美しい光に軌跡を残して泉へと戻って行く。

羽も水と光にあたり、キラキラと輝いている。

横からしか見ていないがその顔には軟らかな微笑みが浮かんでいる。

その姿はいつもの見慣れた香里ではないような錯覚を覚える。

まるで女神か、妖精のようだった。

……実際、妖精らしいのだが…。

体自体が小さくても均整が取れている体つき。

正面から見えないのが残念だ。

俺は自分の立場も忘れ、その光景を見入ってしまった。







突然、香里がその美しい肢体を隠すように両手を動かす。

「誰っ!?」

鋭い声にはっと我に返る。

香里が鋭い視線で辺りを見回している。

それがある一個所で止まる…。

…ヤバイ、気づかれた!?

慌ててその場から離れようとする。

しかし、急に走り出そうとしても足がついてきてくれない。

アイタタタタタタ…。

こらっ、死にたいのか?

筋肉痛に引きつる足を叱咤して走る。

走って、走って、走る!!

後ろからはゴゴゴ…という音が聞こえてくる。

……?

ゴゴゴ…?

その音に嫌な予感を覚えつつ俺は後ろを振り返る。

ん………?

なにかがこっちに向かって飛んでくる!?

って、あれ、昨日の光の玉!?

考えているうちに光の玉はどんどんその大きさを増していく…。

昨日の数倍の大きさはあるじゃないか〜!

光の玉はさらにそのスピードを上げている。

俺も追いつかれまいとスピードを上げる。

…といっても筋肉痛の足では限界がある。

ガッ。

途中の木の根に足を引っ掻ける。

…見事に転んだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!

後ろから聞こえてくる音は明らかに大きくなっている。

ヤバイ、追いつかれる。

そう思った矢先、

頭上を何かが通りぬける感覚…。

そして…。

どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

光の玉が俺のすぐ側で爆発する。

直撃は避けたものの、凄まじい爆風に巻き込まれる。

とっさに顔を腕で庇う。

小石が体中にぶつかってくる。

まともに当たったら死んでるぞ…おい。

…と不意に感じる浮遊感。

……?

「うおお――――」

いつしか俺は爆風に吹き飛ばされていた。

ガサガサガサ…。

木に激突…ということはなかったが、枝に引っ掻き回される。

いててててててっ!

そして、そのまま引っ掛かってしまった。

「痛ぅ………」

なんとか自由になろうと体を動かす。

その度に枝がざわざわと揺れる…。

危ねぇ…。

…こうなると下手に身動きとれないな…。

俺が一生懸命になってもがいていると…。

「そんなところでなにやってるの? 相沢君?」

香里の声がすぐ近くから聞こえてきた。

顔を上げると目の前には笑顔を浮べた香里がいた。

…言うまでもなく、引きつった笑顔だが…。

「やあ、香里。今日も良い天気だな」

とりあえず自由な片手をあげて朝の挨拶を交わす。

我ながら感心するくらいにさわやかな挨拶だ。

「そうね。とってもいい天気ね」

にこやか笑顔を浮べたまま香里が言葉を続ける。

その笑顔と裏腹に両手をポキポキならしている。

「覚悟はいい? 相沢君?」

満面の笑顔と可愛らしい声で香里が刑の執行を宣言した。

…いいわけないだろ…。



続く。








後書き

どうも凪 翔太です。
剣かの第5話、以外(?)に早い公開です。
今回はファンタジーではお約束(?)である水浴び→覗き→死刑をやってみました。(笑)
水浴びのシーンでどれだけ読者のかたがたにイメージが伝わったか怪しいところですが…まあ、頑張りました(爆)

それでは次回もほのぼのファンタジーをあなたに!(大袈裟)



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